肝胆道系機能検査まとめ➀ 肝細胞の障害・壊死をみるもの:AST/ALT、LDH
肝胆道系の検査数値って種類多すぎじゃないですか?
それぞれの意味も分からず,とりあえず,なんとなくセット採血していませんか?
今回は,過去にまとめた肝胆道系機能検査の解釈まとめ➀です.
医者2年目~3年目の時にまとめた内容ですが,9年目の今でも参考にしています.この解釈は簡単に変わるものではないですからね.
ボリュームがあるので数回に分けます.今回は第一回.
➀肝細胞の障害・壊死をみるもの:AST/ALT、LDH
『AST,ALT』:正常値いずれも2~30以下
‣いずれも細胞内逸脱酵素で,肝疾患ではほぼ平行して動く
‣肝機能とは直接関係ない(肝臓の"機能"は反映しない)
i) ALTはASTより肝特異性が高い(肝細胞内に多い)
⇔ASTは主にミトコンドリア内に存在:肝臓以外の細胞でも逸脱
‣ALTは軽度肝障害でも簡単に逸脱
⇔AST上昇は中等度以上の肝障害
ii) ALTはASTより半減期が長い
‣ALTの半減期:約2日 ⇔ASTの半減期:約半日
‣慢性肝炎や脂肪肝:ALT>ASTになるのが普通
例:AST正常でALTのみ上昇
⇒まず肝疾患を考える:脂肪肝(NASH/NAFLD) or 非活動期の慢性肝炎
■逆にAST>ALTとなるのは?
‣急性肝炎の初期:細胞内の絶対量が多いASTが優位
⇒回復期:半減期の長いALTが優位に変化
‣肝硬変・肝細胞癌(正常肝細胞の減少)
‣アルコール性肝障害 ☜ミトコンドリア障害が強い+ALTの合成阻害
‣肝臓以外の酵素逸脱
:骨格筋、心筋、赤血球など脱
⇒AST圧倒的優位になりやすい
☆肝以外(or 2次的肝障害)でトランスアミナーゼ上昇する疾患
i)筋疾患(心筋梗塞も含む)脱
ii)溶血性疾患(採血手技の不良も含む)
iii)胆道系疾患脱
iv)甲状腺機能低下症
v)進行癌 など
☆正常の20倍(500IU)以上, 特に1000を超える
♦ウイルス性肝炎(HAV, HBV)
♦薬剤(中毒)性肝炎
♦虚血性肝炎(ショック肝) ☚LDHが著増するのが特徴
☝低循環に伴うものでうっ血肝も含む
☝低循環によるものだが必ずしも低血圧を伴わない
♦その他の『minor cause』
胆管炎,自己免疫性肝炎,Budd Chiari,肝梗塞,HBV再活性化
『LDH』:正常値(基準値)は120~245IU/l
‣全ての細胞に存在(特に心、骨格筋・肝・腎・赤血球・癌)
☆ASTよりLDH上昇目立つ:肝実質以外の障害を疑う
‣極めて高いLDH上昇:腎梗塞を念頭に ☜「血尿,WBC上昇,LDH上昇,などが主要所見」
‣AST/ALTと共にLDH著増:虚血性肝炎(ショック肝)を念頭に
【LDHアイソザイム】:LDH1~LDH5
LDH1、LDH2:心筋・赤血球(1>2)、、腎、骨格筋
LDH2、LDH3:白血病細胞(白血病:2>3)、悪性腫瘍、肺梗塞・肺炎(特に3)
LDH3、LDH4、LDH5:悪性腫瘍(転移)
LDH5 :肝(5>4)、骨格筋、皮膚、悪性腫瘍
‣半減期は各アイソザイムによって異なる
‣(肝に多い)LDH5は約10時間 ≒ASTやCKの半減期