肝胆道系機能検査まとめ➂ 慢性の炎症をみるもの と 胆道閉塞をみるもの
肝胆道系の検査数値って種類多すぎじゃないですか?
それぞれの意味も分からず,とりあえず,なんとなくセット採血していませんか?
今回は,過去にまとめた肝胆道系機能検査の解釈まとめ➂です.
医者2年目~3年目の時にまとめた内容ですが,9年目の今でも参考にしています.この解釈は簡単に変わるものではないですからね.
今回は第三回で最終回.
慢性炎症のマーカーと,胆道閉塞の評価マーカーです.
➂慢性の炎症をみるもの:γグロブリン、ZTTなど
‣AST/ALTは現在の炎症の指標
⇒炎症が“いつからか”や,炎症性変化が“どの程度か”はわからない
■アルブミン/グロブリン比(A/G比)が低下してないかをチェック
‣慢性肝疾患の予後指標:γグロブリン上昇=肝硬変への移行リスクが高
▲A/G比低下の鑑別
高齢者,慢性炎症性疾患(特に膠原病)、多発性骨髄腫
■線維化の指標:Plt↓, ヒアルロン酸↑, Ⅳ型コラーゲン↑
『血中ヒアルロン酸』基準値50.0以下
主として線維芽細胞,肝で産生 ⇒肝細胞で代謝
♦50-130 ng/ml: 肝の線維化疑い
♦>130 ng/ml::肝硬変
『Ⅳ型コラーゲン』
主に肝線維化のマーカー
タンパク分解酵素の影響を受けにくいため血中では安定
➃胆道閉塞をみるもの:Bil、γGTP、ALP、LAP
『T-Bil』
♦正常:1mg/dl程度以下
♦2-3mg/dL以上:黄疸
『間接Bil』Hb代謝で生成 ⇒水に溶けるため蛋白に結合
『直接Bil』間接Bilが肝で代謝(グルクロン酸抱合) ⇒胆汁排泄
‣間接Bilが主に上昇
⇒赤血球破壊(溶血):Bil生成>肝臓の処理
‣直接Bilが主に上昇
⇒胆汁排泄障害:肝から血中へ逆流
‣両方上昇
⇒肝細胞障害:グルクロン酸抱合 & 胆汁中分泌 の双方が障害される
肝機能回復後も遷延する黄疸の理由
①肝ミトコンドリアenergy産生障害+Kupffer cell肥大⇒:類洞の循環障害
②胆汁酸排泄量低下 ⇒伴ってBil排泄悪化
③δBilの半減期が長い 半減期:17.6日(通常のBilの半減期:2.4日)
■胆道系酵素:γGTP、ALP、LAP
原因を問わず胆汁欝滞で上昇
Bilより遥かに鋭敏に反応する
『γGTP』
▼胆汁欝滞以外に主に以下の三つの原因で上昇
①アルコール摂取:敏感反応(禁酒後急速に低下)
②薬物:抗痙攣剤など神経科領域の薬が多い
③過栄養性脂肪肝:肥満による脂肪肝
『ALP』
通常の肝炎:基準上限の2-3倍
⇒それ以上の上昇:胆道閉塞・肝内胆汁欝滞・肝腫瘍 など
☆γGTPの上昇を伴わずにALP上昇
‣骨芽細胞が増殖:骨折・癌骨転移・代謝性骨疾患
※偽高値:小児(骨成長中),妊娠(胎盤由来のALP)