肝胆道系機能検査まとめ➁ 肝細胞の機能(肝予備能)をみるもの
肝胆道系の検査数値って種類多すぎじゃないですか?
それぞれの意味も分からず,とりあえず,なんとなくセット採血していませんか?
今回は,過去にまとめた肝胆道系機能検査の解釈まとめ➁です.
医者2年目~3年目の時にまとめた内容ですが,9年目の今でも参考にしています.この解釈は簡単に変わるものではないですからね.
今回は第二回.
肝予備能,いわゆる"肝機能"のマーカーについて
➁肝細胞の機能(肝予備能)をみるもの
i)合成能の指標: PT,Alb,ChE,コレステロール
『プロトロンビン時間(PT)』
‣半減期:数時間-2,3日(短い)
‣肝臓は凝固因子をAlb・ChEよりも優先して保とうとする
-急性肝不全:まずAlb・ChE低下(PTに先行)
⇔肝機能回復:まずPT改善し,遅れてAlb、ChEが改善
⇒初期肝硬変:PTよりもAlb,ChEがよい指標
『アルブミン(Alb)』:100%肝で合成される蛋白
‣炎症(合成抑制),栄養不良,腎や消化管からの漏出などでも低下する
▽低Alb血症
・免疫能低下:リンパ球の機能障害
・水溶性抗生剤効力低下(βラクタム系など) ⇔脂溶性抗生剤:ニューキノロン,マクロライドなど
・NSAIDs・利尿薬なども効力低下)
‣血管外への体液漏出
『コリンエステラーゼ(ChE)』
‣ChE上昇:肥満による脂肪肝、ネフローゼ症候群などで起きる
■ネフローゼ症候群の診断基準
(1) 1日蛋白量≧3.5gが持続
(2) TP≦6.0g/dl or Alb≦3.0g/dl
(3) TC≧250mg/dl
(4)浮腫
参考:多数の卵円型脂肪体・重屈折性脂肪体
『コレステロール』
‣大きく低下して入れば肝予備能低下は重症と判断される
ii)解毒・排泄機能の指標:ICG試験,血中アンモニア
『ICG負荷試験』
‣解毒・排泄機能の代表的な指標だが,黄疸(T-Bil≧3.0)ではビリルビン排泄と競合するので,正しく評価できない
『血中アンモニア』
‣肝臓は,アンモニアを解毒できる唯一の臓器
‣肝予備能の他に,門脈―体循環シャントの指標でもある
本来,肝臓で無毒化されるので,門脈-大循環shuntがあると無毒化されずに循環してしまう
‣基準値以上だった場合,非代償性の肝硬変や劇症肝炎などを想定する
‣ほとんどが腸管での(ウレアーゼによる)蛋白質代謝の結果産生される
∟ゆえに食事蛋白量に大きく影響される
∟その他,便秘や消化管出血の影響もうける
肝性脳症とアンモニア濃度
‣血液だけでなく,髄液や脳内のアンモニア濃度も高い状態
‣肝性脳症における血中アンモニアは必ずしも高値とはならず,肝性脳症の程度とも必ずしも相関しない.
‣肝性脳症の診断に,血中アンモニア濃度は必ずしも必要ではない
‣但し,疫学的に肝性脳症の90%以上で血中アンモニア値が上昇している
☆肝血流障害の指標
i)『Fisher比:BCAA/AAA』基準値3.0以上
肝疾患:BCAA合成低下&AAAのフェニルアラニン代謝障害
ii)『BTR(総分岐鎖アミノ酸/チロシン mol比)』 基準値4.41~10.05
酵素法を用いて簡便かつ安価にFisher比を測定
iii)『血中アンモニア』 基準値40-80μg/dl