上部消化管穿孔と下部消化管穿孔の特徴・違い
急性腹症の1つである消化管穿孔.
頻度はそんなに少なくないので,多くのが臨床医が出会ったことがある病態ではないでしょうか?
ひとえに消化管穿孔といっても,上部消化管穿孔と下部消化管穿孔は,まったく病態が異なります.
今回はこれらの特徴・違いを,内科医歴10年の私がまとめました.
私は循環器内科ですが,急性腹症の診断能力は内科医のエチケットだと思ってます!
■上部消化管穿孔
特徴
‣Sudden onsetの痛み,脱水hypovolemia
‣Risk⇑:NSAIDs, ステロイド,タバコ,ストレス
‣Risk⇓:制酸薬治療中,ピロリ除菌後,胃手術後(迷走神経切離)
鑑別
‣vs 胆石性疾患・胃疾患 :これらは板状硬にはならない
‣vs 重症膵炎 :アルコール多飲歴,胆石症,空腹時,(Suddenではなく)Acute onset
注意点
‣上部消化管穿孔の8%はCTでもfree airが見えない
⇒CTの意味:×free airの発見 ◎急性膵炎など類似症状の他疾患精査
原因
‣3つに大別:胃潰瘍,胃癌,十二指腸潰瘍(最多)
治療
原則手術
■下部消化管穿孔
特徴
‣病態は敗血症 ☞高体温/低体温に注目
鑑別:上部消化管穿孔との違い
‣高齢者に多い ⇔上部消化管穿孔は若年~壮年
‣自発痛より圧痛,特に反跳痛が目立つ
※但し,間膜や後腹膜に向けて穿孔した場合,腹膜炎症状は目立たない
‣free airの量は少ない:小腸穿孔では全くないこともある
注意すべき病歴
‣高齢,便秘 ⇒排便でいきんだ後に発症 :宿便穿孔
‣魚骨や鶏骨を食べた,歯がない(=飲み込むリスク) :異物
‣膠原病などの血管炎
‣悪性腫瘍と化学療法
原因
多彩(腫瘍,潰瘍,憩室穿孔,異物,外傷,宿便穿孔など)