抗菌薬(抗生剤)が不要な時【なんでもかんでも抗生剤はダメ】
「感染症?はい,じゃあ抗生剤出しとくね」
こんな対応,もしくは思考回路になってませんか?
むやみやたらな抗生剤は,利益がないばかりか,最近の耐性化や,副作用の出現にもつながりかねません.
今回は,一般的に抗菌薬が不要とされる状態をまとめます.
■抗菌薬が不要な時①:健康な成人の上気道炎
いわゆる風邪症状です.
最も抗菌薬が無意味に使われていそう.
ウイルス性であることが多く,基礎疾患がない限り,いきなり抗生剤は使用しなくてよい.
■抗菌薬が不要な時➁:A群溶連菌以外の咽頭炎
溶連菌が起炎菌の場合,リウマチ熱の予防のために抗生剤を使用するべき.
疑った場合は,迅速診断キットで溶連菌はチェック.
■抗菌薬が不要な時➂:COPDなど基礎疾患のない気管支炎
マイコプラズマ気管支炎ですら,自然治癒することは多い.
■抗菌薬が不要な時➃:発症1週間以内の急性副鼻腔炎
アレルギーやウイルス性も多い.
細菌性も軽度なら自然治癒する.
よって,発症から1週間は抗生剤無しで様子をみる.
■抗菌薬が不要な時➄:発症3日以内の急性中耳炎
感冒からの波及症状として呈すことが多い.
ほとんどの中耳炎は自然軽快するので,症状が遷延する場合のみ,抗生剤を使用しましょう.
■抗菌薬が不要な時➅:怪しさのない急性腸炎
ほとんどがウイルス性.
むやみな抗生剤は,かえって下痢などの消化器症状を助長させる可能性もあります.
逆に,抗生剤の使用を考慮するのは,便中に粘膜破壊所見(血液・粘膜・粘液)を認める際や,免疫抑制患者,高度の脱水所見などを伴う重症例.
■抗菌薬が不要な時➆:無症状の膿尿・細菌尿
治療要する尿路感染(腎盂腎炎など)や,敗血症に進展することは稀.
また,早期から抗生剤を使用することで,それらを防げるというデータもない.
特に,高齢者や尿道カテーテル留置患者では,非特異的膿尿は少なくない.
逆に,抗生剤の使用を考慮するのは,妊婦や,泌尿器科的処置前,人工物埋め込み前,など.
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