上室期外収縮にどう対応するか【ガイドライン解説】
私が考える最もショボい不整脈,上室期外収縮.(不整脈の大家に見られたら怒られるかもしれない..)
こういう病態見つけた時って,逆に,対応の仕方に迷いませんか?
こんなことでガイドラインを開く気力も湧きにくいでしょうし,循環器専攻の私がここで解説します.
※基本的には「2020 年改訂版 不整脈薬物治療ガイドライン」の内容に沿っています.
■大前提
上室期外収縮は,症状や血行動態への影響は少なく,治療対象となることはまれである.
■塞栓源不明の脳塞栓症(ESUS)の既往例では上室期外収縮は臨床的意義を持つ.
ESUS 症例において上室期外収縮が多い群は,その後の新規心房細動の発見率が高くなります.
脳梗塞症例では,抗血栓療法の選択の一助になるかもしれないので念頭に置きましょう.
■対応や薬物治療の実際
まず,無症状は基本的に治療不要です.
症候性の場合,治療を考慮します.但し,安全性とのバランスが吟味されなければなりません.
➀カフェイン,アルコール摂取を制限(calssⅠC).
薬物どうこうを考える前に,カフェインやアルコール摂取の制限で上室期外収縮は減らせる可能性があるので,それらに関わるライフスタイル是正を優先しましょう.
➁薬剤選択は,まずβ遮断薬.
症候性の上室期外収縮に対するβ遮断薬はclassⅡaCです.
日中に増加するタイプでは,特にβ遮断薬の有効性が期待されます.
メキシレチン以外の I 群抗不整脈薬(アプリンジン,シベンゾリン,ピルシカイニド,プロパフェノン,フレカイニドなど)も使用されることがありますが,器質的背景が乏しいことが前提です.(2020年改訂版ではⅠ群薬の使用に関して,推奨クラスの言及はなし)
心筋梗塞や心機能低下があれば I 群抗不整脈薬は予後を悪化させる可能性があるので,使用すべきではありません(classⅢB).
■ちなみに無症候性はどうするか
2020年改訂の不整脈薬物治療に関するガイドラインでは,無症候性上室期外収縮に抗不整脈薬を使用することはclassⅡbCです.
よって,使用していけないわけでないですが,しかるべき使用理由とともに慎重に使用しましょう.
■心房細動や心房粗動がdetectされていた場合
ちなみに,心房細動や心房粗動がdetectされていた場合はそちらの対応に準じます.
具体的には,より積極的な薬物対応が求められます.
上述してきた本記事の内容は,あくまでこれらの不整脈(心房細動や心房粗動/心房頻拍)の合併が明らかでない上室期外収縮の対応です.
■一個前の「2009年改訂 不整脈薬物治療に関するガイドライン」には抗不整脈薬の選択がもっと細かく書いてあった
2020年改訂の一個前のガイドラインには,抗不整脈薬の選択が細かく書いてありました.
正直,鬱陶しい内容だったので,なくなってよかったです(←).
一応,言及すると,ポイントは2点.➀心機能,➁虚血性心疾患の関与の有無,です.
Ⅰ群薬(Naチャネル遮断薬)は,解離速度の速さで適応を分けていました.
▼intermediate kinetic Na ch遮断薬
プロカインアミド,キニジン,アプリンジン,プロパフェノン
▼slow kinetic Na ch遮断薬
ジソピラミド,シベンゾリン,ピルジカイニド,フレカイニド,ピルメノール
2020年改訂版と異なり,心機能低下例は,軽度の低下であればⅠ群薬使用可能であり,また,intermediate kinetic Na ch遮断薬であれば虚血が関与していても使用検討可能でした.
たかが,上室期外収縮ごとき(←)にわざわざここまで細かい使い分けを記載してたんですね.
まとめてたのに,ガイドライン改訂で記載がなくなって悲しいから載せときます(←).