ビタミンのまとめ➀水溶性ビタミン
今回は水溶性ビタミンについてのまとめ.
まずは,ビタミンの大別をします.
■ビタミンの大別:脂溶性ビタミンと水溶性ビタミン
まずは,脂溶性と水溶性で大きく見方を変えましょう.
・脂溶性ビタミン
ビタミンA,ビタミンD,ビタミンE,ビタミンKの4種類のみ.
【覚え方】
脂溶性ビタミンはこれDAKE(だけ)
脂溶性ビタミンは,全て過剰症に注意が必要.
・水溶性ビタミン
脂溶性ビタミンでないビタミンは全て水溶性ビタミンです.
水溶性ビタミンは,発汗,尿(利尿薬使用),血液透析などで欠乏のリスクが高くなるので注意.
過剰症は起こらない.
▲イメージ
ざっくりといえば,脂溶性ビタミンは過剰症も欠乏症も注意,水溶性ビタミンは欠乏症だけ注意していればいい,という感じ.
ただ,水溶性ビタミンは体内の水分とともに失われやすいので,医原性の欠乏にも十分注意が必要です.
■各水溶性ビタミンの特徴
1.ビタミンB1:チアミン
ビタミンB1欠乏症
Wernicke-Korsakoff症候群,脚気, 乳酸アシドーシス
摂取の推奨量1.2-1.4mg/day.
体内への蓄積量は平均25~30mgですが,加齢とともに貯めておける量は減少します.
高齢者は,潜在的にビタミンB1の半欠乏状態といえます.
全く投与しなければ3週間弱で欠乏し始めます.
静脈栄養管理時は,ビタミンB1を1日3mg以上の投与をしましょう.
必要量はもう少し少ないはずですが,点滴中に含まれる亜硫酸塩が,ビタミンB1を分解するため,欠乏しやすぃなります.
ゆえに,静脈栄養時は多めのビタミンB1投与が推奨です.
過剰症もないですしね.
経腸栄養においては1日1.2mg投与でokです.
ビタミンB1はアルコールの分解に用いられるため,アルコール依存症の症例はビタミンB1欠乏症が起こりやすくなります.
また,肝障害がある場合,ビタミンB1の利用障害が起こるため,ビタミンB1欠乏症が起こりやすくなります.
その他,胃切除や妊娠悪阻もビタミンB1欠乏のリスクとなります.
メタボリン®(チアミン塩50mg /1ml)
用法用量:10-50mg/日 皮下・筋・静注
・Wernicke脳症
:意識障害,外眼筋マヒ(複視),小脳障害(失調性歩行)
・Korsakoff症候群
:失見当識,記銘力障害 ⇒作話
・脚気
:多発神経炎,浮腫,高拍出性心不全
2-1.ビタミンB12:コバラミン
摂取の推奨量2.4μg/day.
肝臓に5mgも蓄えられるので,通常は5年くらい欠乏しません.
欠乏するとしたら,その原因は
・ベジタリアン
・内因子欠如(自己免疫性萎縮性胃炎,胃粘膜の破壊,胃の手術)
・blind loop症候群
・吸収不良症候群
・薬剤性(制酸薬,メトホルミン)
などになります.
2-2.葉酸
摂取の推奨量240μg/day.
蓄えられる量は少ないので,数カ月の摂取不足で発症しうります.
欠乏原因としては,
・摂取不足,中心静脈栄養
・腸管吸収障害
・アルコール依存症
・葉酸拮抗薬(メトホルミン,メトトレキサート,トリアムテレン,トリメトプリム)
・抗てんかん薬
・需要増大(妊娠,がん)
・維持透析
などになります.
ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏の症状・所見(概ね共通)
‣DNA合成障害 ⇒大球性貧血,無効造血,汎血球減少
‣亜急性連合性脊髄変性症 ⇒振動覚・位置覚障害,異常感覚,自律神経障害
‣睡眠障害:メラトニン分泌異常
‣消化器症状:Hunter舌炎、無胃酸
ビタミンB12欠乏と葉酸欠乏の治療
ビタミンB12製剤の筋注・静注(吸収障害があるので,経口摂取ではダメ)
⇒反応なければ葉酸欠乏と考え,葉酸(フォリアミン®)経口投与もしくは静注
3.ニコチン酸(ナイアシン)
ビタミンBの一種とされます.
欠乏原因は
・アルコール多飲,摂取不足,ビタミンB6欠乏,薬剤(イソニアジドなど),トリプトファン欠乏
などです.
症状
3D(dermatitis, diarrhea, dementia)のゴロでいわれますが,3Dが3つも揃う症例は約半数程度
具体的には,日光過敏,舌炎・口内炎,下痢・便秘,不眠・不安・うつ・せん妄
治療
・複合ビタミン製剤の投与:複合的栄養障害伴うこと多い
・ニコチン酸製剤
‣ニコチン酸トコフェロール (ユベラN®,ユベラニコチネート®)
∟ビタミンE+ニコチン酸
‣ニコモール(コレキサミン®)
‣ニセリトロール(ペリシット®)
4.ビタミンC
摂取の推奨量100mg/day.
ビタミンC欠乏症
壊血症
…コラーゲンの異常 ⇒血管障害 ⇒易出血性
Fe3+をFe2+へ還元する効果もあり,鉄剤の吸収補助にも使用されます.
ハイシー®25%顆粒
用法用量:50-2000mg/day/1-3x
ビタシミン®100mg/1ml, 500mg/2ml
用法用量:50-2000mg/1-3x
[適応]
ビタミンC欠乏予防・治療,毛細血管出血,骨折癒合促進,皮膚色素沈着改善
シナール®:ビタミンC+パントテン酸(ビタミンB5)
[適応]
ビタミンC欠乏予防・治療,皮膚色素沈着改善,鉄剤吸収補助
5.パントテン酸(ビタミンB5)
摂取の目安量5mg/day.(推奨量でなく,目安量)
食事に多く含まれるので,通常は欠乏しえません.
パントール®
①接触性皮膚炎・湿疹:ビタミンCの作用補助
②麻痺性イレウス:アセチルコリン産生増加
[用法用量]①20-200mg/day/1-2x,②50-1500mg/day/1-3x
個人的には,重症管理下のイレウス予防で300-500mg/dayくらい投与しています.
6.ビタミンB6
摂取の推奨量1.4mg/day.
腸内細菌からも合成されるので,欠乏はしにくいです.
欠乏のリスクとなるのは
・薬剤:抗生剤長期服用,経口避妊薬常用
・アルコール依存症,栄養不良
・他の各種ビタミンB欠乏症
欠乏症状
末梢神経障害,ペラグラ様症候群,貧血,痙攣発作(多様な乳児痙攣,抗痙攣薬無効の痙攣)
診断
臨床的に行う:一般にビタミンB6の臨床検査は存在しない
ピドキサール®
用法用量:[内服]10-60mg/1-3x,[静注]5-60mg/1-2x