胸水の鑑別まとめ【肺炎?心不全?がん?それとも??】
今回は胸水の鑑別まとめ.
先日のこのツイートが反応よかったので,採用.
クリニックからの紹介で「肺水腫の精査依頼」ということで診てみると、「どこに肺水腫が?胸水しかないが??」って思うこと、しばしばあります
— Drぷー (@Dr_ppooohh) October 27, 2020
明確に違う病態なので、ここはごちゃ混ぜにしない方がいいと思います
鑑別も少し異なります
その点、このまとめはわかりやすい https://t.co/4g2PqpFeoW
1.胸水の性状の鑑別
■Lightの基準
① TPの胸水/血清比 >0.5
②LDHの胸水/血清比 >0.6
③胸水LDH >血清LDHの正常上限×2/3
▲全て当てはまらない:漏出性胸水(☜信頼性◎)
▲いずれか1つでも満たす:滲出性胸水(?)
全て当てはまらない場合は,漏出性胸水の可能性が高いです.(申述性胸水の除外として感度はほぼ100%とされます)
1つでも当てはまれば,滲出性胸水疑いですが,その他の所見とも合わせて冷静に判断してください.(滲出性胸水として特異度80%程度とされます)
「Lightの基準は滲出性胸水の除外に有用」,と考えましょう.
■Lightの基準の補助:Lightの基準を1つでも満たしたら...
血清Alb-胸水Alb≧1.2 ⇒ 漏出性胸水の可能性up
血清と胸水のAlbを比べることは,臨床でも非常に有用です.
この「血清Alb-胸水Alb≧1.2」を満たすと,たとえLightの基準が1つくらいひっかかっていても,漏出性胸水の可能性を念頭に置かねばなりません.
■簡易な指標
①比重
≦1.015:漏出性胸水
≧1.018:滲出性胸水
②リバルタ反応陽性:滲出性胸水
これらは単純な指標で,Lightの基準のように統計学的な解析を元にしていません.
ただ,Lightの基準などと合わせて総合的に考えることで,鑑別を正しい方向に修正してくれます.
■胸水の糖とpH
糖<30mg/dl or/and pH<7.2 ⇒ 膿胸 or 関節リウマチなどの膠原病性胸水 疑い
少し視点は変わりますが,胸水の糖やpHが低い時,膿胸や関節リウマチなどの膠原病性胸水を鑑別にあげます.
対応は簡単.
ドレナージがてら胸腔穿刺しましょう.
診断的に有用ですし,膿胸だった場合治療効果もあります.
2.胸水の成因
病態生理
①静水圧の上昇
②透過性亢進
③血漿浸透圧の低下(低Alb血症など)
➃血管やリンパ管からの漏れ(血胸,乳び胸)
病態生理的には,上記しかありえません.
例えば,心不全は静水圧上昇による胸水.
肺炎随伴性胸水は,炎症による透過性亢進が原因.
などです.
3.片側性胸水の鑑別
片側性胸水の時の鑑別は以下のようになります.
※1 心不全:多くの場合は両側胸水だが,片側なら右優位(肺静脈の長さが左の方が長いため,右側の方が左心房への還流が悪いため)
※2 肝硬変・腹膜透析では,横隔膜に生理的に存在する小孔を通じて,腹水が胸腔へ移行することで片側胸水となる
※3 低Alb血症:90%以上は両側胸水となるが,そもそもの病態頻度が高いので,念頭に置く
上述した,滲出性・漏出性の鑑別をしてからこの表をみると,鑑別のアイデアが浮かびやすいです.
肝硬変,ネフローゼ症候群はいずれも低Alb血症を来たしますが,胸水が貯留する病態は多岐にわたるので,別項目としてのせています.
収縮性心膜炎は,心不全としては特殊な循環動態なので,心不全とは別項目としてのせています.
肺塞栓,大動脈解離,粘液水腫は,滲出性・漏出性,いずれの片側性胸水もきたしうります.