先発品と後発品(ジェネリック)
ジェネリックは嫌だとおっしゃる方もいらっしゃいますが、皆さん、違いをご存知ですか?
実はジェネリックは先発品よりも新しい製法で作られているものもありますし、純度も先発品より高いものも有ります。
そして副作用もジェネリックの方が少ない事も基本的には多いです。
現在国は「2020年9月を目標にジェネリックの使用割合を80%にする」と閣議決定し様々な施策を進めています。
しかし、医療機関で働くスタッフのジェネリック使用率は58.2%と全国平均72.5%を下回る結果になっています。(18年、厚生労働省調査)。
個人的には医療費の事を考えるとジェネリックを勧めます。
なぜならジェネリックは安価だからです。
製造方法が分かっているので安価に大量に作ることが可能なのです。
そして先ほど述べたように安かろう悪かろうではなく、質も先発品に劣っているわけではありません。
しかし、長年同じ先発品を使っている方にはジェネリックは効きにくかったり合わない人がいる事も確かです(例えば先発品であるロキソニンは効果あっても後発品であるロキソプロフェンNaは効果が劣るといったような方もいらっしゃいます)。
そして、先発品ならドーピングにひっかからないのにジェネリックを使ったがばっかりに不純物が入っていてドーピングになった選手もいます。
どちらのメリットデメリットもありますから、よく考えて選ぶと良いですね。
特に違いも分からないようであれば日本の医療のためにもジェネリックで十分だという事も覚えておいて下さい。
私個人としてはジェネリックを推奨していますが、先発品でないと効果がいまいちという患者さんにはプラセボ効果かもですが、希望通り先発品を処方するようにしています。
㊟我々医師がジェネリックを使うことで製薬会社から対価や報酬を得ることはありませんよ。そんなことがあれば犯罪ですから。ちなみに勉強会でお弁当を出してもらうことさえ難しい時代です。ボールペンでさえ最近は問題あるようです。
そして、皆さんに知っておいて欲しい事として、新薬を開発してもメーカーが儲かるとは限らないということです。
粗利率が高くても医薬品メーカーはぼろ儲けできないようになっているのです。
普段は健康保険が適応されているので気付きませんが、医薬品は意外に高額です。
医薬品メーカーは総じて粗利率が高い傾向にあります(粗利率とは、売上高から売上原価を差し引いた金額)。
決算書で確認すると、海外の医薬品メーカーの粗利率は0~8%程度でこの粗利率の高さの理由は、医薬品の生産コストが安いからなのです。
では医薬品メーカーがぼろ儲けしているのか?というと違います。
医薬品の研究開発には、平均して7,8,9年近くかかりその額はだいたい合計300億円以上にもなります。
人件費と治験費用が医薬品のコストの大元なのです。
しかし法律上、研究開発費は開発スタート時の10年も前から売上に計上されるのでその会計処理の影響で、発売時にはまるで原価が低くなっているように見える粗利率になります。
しかも、なんと開発の成功確率はわずか3万分の1以下。
数多くの研究が身を結ばず消えていっているのです。
更に医薬品の特許期間は原則20年間。実際は、新薬の治験を行う前に特許が出願される場合がほとんどですので発売の時にはすでに残り5~10年ということも多いのです。
この特許期間が過ぎるとほかの会社が同じ成分の薬を作り、新薬の3~20%の価格で売ることが許さます。これがいわゆるジェネリック医薬品です。
医薬品は、莫大な開発費や複雑な法律で、ようやく利益を生み出しているのです。
ジェネリック医薬品国内市場では2015年の約8000億円から増え続け、2017年には9,640億円、2021年には1兆円を超え、さらに市場拡大する見込みと言われています。
まとめ
医薬品は生産コストが安いため、医薬品メーカーの粗利率は70~80%と高い。
研究開発には人件費・治験費用が大量にかかる。
大半の医薬品は発売後5~10年で特許期間が終わり、同じ成分で60~70%の価格のジェネリック医薬品が出回る。
だいぶ理解できましたか?
分かった上でどちらか選べるようになれば良いですね。最後までありがとうございました。
ちなみに、ジェネリックとは。
以下参照
後発医薬品、ジェネリック医薬品とは、先発医薬品の独占的販売期間の終了後に発売される、先発医薬品と同じ有効成分で効能・効果、用法・用量が原則同一であり、先発医薬品に比べて低価格な医薬品である。
後発薬、GE薬といった略称で呼ばれることもある。
期限切れになった先発医薬品の特許内容を参考に製造されることから、同じ医薬品でも後発医薬品は複数存在する。医薬品の有効成分は一般名(generic name) で表せるので、欧米では後発医薬品を処方するのに一般名を用いることが多い。後発医薬品は先発医薬品の発売からおよそ10年経過してから発売される薬であるため、その間に、進歩した最新の製剤技術を取り入れることで、飲みやすさの工夫、使いやすさの工夫などを付け加えている。
追記
2018年7月、新聞などのメディアは、高血圧症の患者さんに処方されているジェネリック(後発医薬品)の一部から、発がん性物質N-ニトロソジメチルアミン(NDMA)が検出されたことを報じました。この高血圧症治療薬は一般名を「バルサルタン」といい、降圧剤としてよく治療に用いられているアンジオテンシンII受容体拮抗薬のひとつです。
先発の高血圧症治療薬は、スイスの製薬会社が開発した薬でした。
バルサルタンは、日本でも2014年頃から、その薬の後発医薬品として販売されるようになり、約1万9000人の患者さんに処方されていたと推定されます。
発がん性物質の混入が初めて指摘されたのはヨーロッパで、そのニュースが流れるや否や、ヨーロッパでは直ちにこの薬の回収が始まりました。日本でも同様に、新聞に報じられた製薬会社一社がわずかひと月余りで全ての該当製品を回収しました。
2017年厚生労働省調査によると、日本の高血圧症患者は約993万7000人いることがわかっています。男女比で見ると男性が約431万3000人、女性はそれよりも約133万人多い約564万3000人です。その患者さんたちに処方されている降圧剤は相当な数量になります。
そしてアメリカは、世界でも一番ジェネリックを使用している、いわばジェネリック王国です。
厚生労働省の資料によると、世界のジェネリック使用率は、アメリカ91.7%、ドイツ86.3%、イギリス76.6%、フランス67.6%、スペイン65.3%、イタリア59.2%、そして日本は59.0%です。
それだけに発がん性物質が検出されたショックは大きい事は確かです。
しかし、この事実は氷山の一角なのではなく、あくまでその薬に限った話だと思います。他のジェネリックも危ないという事は考えにくいと個人的には思っています。
ただ、事実としてこのような事があった事はジェネリックの普及を進めていく国としても、非常に残念ですね。
どっちがどっち?