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社労士試験 予備校では教えないポイント解説 vol.081

雇用保険法(9)

教育訓練給付

教育訓練給付は、一般被保険者若しくは高年齢被保険者又は一般被保険者若しくは高年齢被保険者であった者(※つまり、離職していてもいいということです。)に対して、その主体的な能力開発の取り組みを支援し、雇用の安定と再就職の促進を図ることを目的として支給される給付で、『教育訓練給付金』があります。また、令和7年3月31日までの間に一定の要件を満たした者には、教育訓練給付金に加え『教育訓練支援給付金』が支給されます。
※予備校の社労士講座も一定の場合には支給対象となるコースがあります(私も受給しました)ので、支給要件など『自分のためにも』よく理解しましょう。ただし、『修了した』と認められるには、出席率8割とか各確認テストなどですべて60点以上とか、結構、ハードルは高いです。(社労士試験そのものの合否は関係ありません。そもそも、申請期限が合格発表日より前ですので。。。)
【一定の要件(教育訓練支援給付金)】
当該項目のところで説明してもいいのですが、疑問は即座に解決。。。ということで。
教育訓練支援給付金の支給要件は次の通りです。
①専門実践教育訓練を受講する方
②45歳未満であること
③昼間制で通学すること
 ※つまり夜間制や通信制はダメです。
④受給資格確認時に離職中であること
⑤令和7年3月までに受講開始すること
ということですが、重要なのは、⑤の期間が延長されない限り、令和7年8月に実施される社労士試験には出題されないということです。
※つまり、同じ社労士講座でも、『平日夜間』の時間帯の枠で受講される方は対象外ということです。

①教育訓練給付金

1)支給要件

教育訓練給付金は、次のいずれかに該当する者(『教育訓練給付対象者』といいます。)が、雇用の安定及び就職の促進を図るために必要な職業に関する教育訓練として厚生労働大臣が指定する教育訓練を受け、当該教育訓練を修了した場合(当該教育訓練を受けている場合であって一定の要件を満たしている場合を含み、当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者により所定の証明(※つまり、ここで、上記の出席率と各確認テストの成績が必要となります。)がされた場合に限られます。)において、当該教育訓練を開始した日(以下、①②において『基準日』といいます。)までに支給要件期間(ほぼ=で、被保険者であった期間)が3年以上あるときに支給されます。
※『開始した日』が基準日となるのは、『修了した日』だと受講中にまだ『支給要件期間が3年以上』という条件を満たしていない場合も出るからです。
上記の規定は( )が多くてわかりにくいので、もう一度( )を外して簡単に書きますと、
教育訓練給付金は、次のいずれかに該当する者が、厚生労働大臣の指定する教育訓練を受け、修了した場合において、当該教育訓練を開始した日までに支給要件期間が3年以上あるときに支給されます。
①基準日に一般被保険者又は高年齢被保険者である者
②基準日が当該基準日の直前の一般被保険者又は高年齢被保険者でなくなった日から1年(当該期間内に妊娠、出産、育児、疾病、負傷その他管轄公共職業安定所の長がやむを得ないと認める理由により引き続き30日以上当該教育訓練を開始することができない者が、当該者に該当するに至った日の翌日から、当該者に該当するに至った日の直前の一般被保険者又は高年齢被保険者でなくなった日から起算して20年を経過するまでの間に管轄公共職業安定所の長にその旨を申し出た場合には、当該理由により当該教育訓練を開始することができない日数を加算するものとし、その加算された期間が20年を超えるときは、20年とする)の期間内にあるもの
※この『20年』という規定は、割と最近入れられた規定ですが、要は、近年の育児法の改定の趣旨に則り、『子育てをしている女性』のため(そうとはどこにも書いていませんが。。。)に改定されたところです。
※延長された期間が20年に満たない場合は、延長された最後の日までの間をいいます。
【支給要件期間】
教育訓練開始日を離職の日とみなして算定した算定基礎期間に相当する期間(被保険者であった期間)と考えて、特に差し支えありません。ただし、教育訓練開始日前に教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、当該給付金に係る基準日前の被保険者であった期間が除かれます。
※基本手当等の支給については、関係ありません。

教育訓練給付金の支給対象となる『厚生労働大臣が指定する教育訓練』には『一般教育訓練』のほか、速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資する教育訓練として指定される『特定一般教育訓練』、中長期的なキャリア形成に資する専門的かつ実践的な教育訓練として指定される『専門実践教育訓練』があります。
支給要件期間は、以下の通りです。
( )内は、基準日前に教育訓練給付金の支給を受けたことがない者(初めて教育訓練給付金を受ける者)の支給要件期間です。
①一般教育訓練及び特定一般教育訓練…3年(1年)以上
②専門実践教育訓練…3年(2年)以上
なお、基準日前3年以内に教育訓練給付金の支給を受けたことがあるときは、教育訓練給付金は支給されません。
※つまり、上記①②を満たした上で、『支給日から3年間』という期間が必要なので、以前に教育訓練給付金を受けたことがある者は、例えば、社労士講座ですと、講座修了後でないと給付金を受給できませんので、最低でも『4年ごと(講座受講期間1年+3年)』になります。また、筆者の受験勉強期間中に『特定一般教育訓練』や『期間が4年の長期専門実践教育訓練』が増設されました。今後も、教育訓練については対応が強化されるかもしれませんので注意が必要です。
【特定一般教育訓練】
①業務独占資格(社労士講座はこれです。)、名称独占資格若しくは必置資格に係る養成課程等又はこれらの資格の取得を訓練の目的とする課程…宅地建物取引士、介護職員初任者研修など
②情報通信技術に関する資格のうちITスキル標準レベル2以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とする課程…基本情報技術者試験など
③大学等における職業実践力育成プログラム、専修学校におけるキャリア形成促進プログラムであって、速やかな再就職及び早期のキャリア形成に資するもの(いずれも訓練期間など一定の基準に該当するもの(専門実践教育訓練に該当するものを除く。)に限る。)
※③で『専門実践教育訓練』に該当するものが除かれているのは、専門実践教育訓練に係る給付金の方が給付が長期に渡り、また給付率がいい(条件を満たせば、最大受講料等の70%が支給されます。)からです。
【専門実践教育訓練】
いずれも訓練期間など一定の基準に該当するものに限られます。
①業務独占資格又は名称独占資格の取得を訓練目標とする養成課程…介護福祉士、看護師、美容師、管理栄養士などの養成施設の課程
※元々、専門実践教育訓練の給付金の対象は最長3年間だったのですが、管理栄養士は4年間必要なので、『長期』として4年目も対象となるように追加されました。
②専修学校の職業実践専門課程及びキャリア形成促進プログラム
③専門職大学院
④大学等の職業実践力育成プログラムであって、中長期的なキャリア形成に資するもの
⑤一定レベル以上の情報通信技術に関する資格取得を目標とした課程(情報処理安全確保支援士、ネットワークスペシャリストなど)
⑥第四次産業革命スキル習得講座(AI、データサイエンス、セキュリティなど)
⑦専門職大学

2)支給額

教育訓練給付金の額は、教育訓練給付金対象者が教育訓練の受講のために支払った費用の額(当該教育訓練の受講のために支払った費用の額であることについて、当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者により証明がされたものに限られます。)に、所定の支給率を乗じて得た額(所定の上限額があります。)になります。ただし、教育訓練給付金の額として算定された額が4,000円を超えないときは、教育訓練給付金は支給されません。
※つまり、ぴったり4,000円は支給されないということです。あまりに少額だと、給付金としての効果が薄いということと、事務費用を考慮したものと思われます。
【受講費用の範囲】
・入学料
・受講料
(ただし、短期訓練受講費の支給を受けているものを除く。)
なお、一般教育訓練給付金の場合は、その訓練期間が1年を超えるときは、当該1年を超える部分を除き、受講開始前1年以内にキャリアコンサルティングを受けたときは、その費用(その額が2万円を超えるときは、2万円)を含めることができます。
※キャリアコンサルティング費用について、特定一般教育訓練や専門実践教育訓練については、事前に必ずキャリアコンサルティングを受けてジョブカードなどを作成しなくてはならないので、特定一般教育や専門実践教育訓練については、特別に『キャリアコンサルティング費用』についての記載はありません。
※予備校の社労士講座では10月開講ところが多いと思いますが、『来年度試験対策講座』として5月ごろから重要論点を一通り学習する『スタートダッシュ講座(仮名)』のようなプレ講座を本講座の前に実施するところもあると思いますが、それを含めると1年を超えてしまうので、その『スタートダッシュ講座』の費用については、給付金の対象外となります。私が給付金を受給したときは、このケースでした。

1.一般教育訓練・特定一般教育訓練に係る教育訓練給付金の支給率及び上限額

一般教育訓練及び特定一般教育訓練に係る教育訓練給付金の支給率及び上限額は、次の通りです。
※『支給額』でないことに注意です。(この論点での引っ掛けは出題されないとは思いますが、本試験中、時間に追われて焦ってくると、『10万円が支給されます。』と掛かれていたら、◯としてしまうかもしれません。)
( )内が上限額ですが、『全部②は①の倍』と覚えて差し支えありません。
①一般教育訓練を受け、修了した者…20%(10万円)
②特定一般教育訓練を受け、修了した者…40%(20万円)
※元々の受講料等の上限を50万円と想定しているということです。

2.専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金の支給率及び上限額

※まず最初に押さえるべきポイントは、この専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金は、修了後に一時に支給されるのではなく、6箇月ごとに支給されるということです。長期に渡る教育訓練なので、こまめに支給されるということです。
専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金は、次表①の額(支給率50%、上限額120万円)ですが、専門実践教育訓練の受講を修了し、資格取得等(すでに就職している場合)・就職につながった場合には、次表②の額(支給率70%、上限額168万円)となり、①との『差額』(つまり、20%分)が追加支給されます。
※当たり前ですが、合計で120%とはなりません。が、試験中、焦ってると、『70%が追加支給されます。』と書かれていたら、◯としてしまう可能性があります。また、1年間の受講料等の上限を、80万円と想定しています。
この専門実践教育訓練に係る教育訓練給付金は、支給単位期間(専門実践教育訓練を受講している期間を訓練開始日から原則として6箇月ごとに区分した一の期間をいいます。)について支給され、次表『上限額(年間)』の①40万円、②56万円とは、原則として連続した2支給単位期間(つまり、1年間)ごとに支給する額の上限となります。
※支給は6箇月ごとなのに上限額を1年単位で見ているのは、受講料等が変動することを考慮したものと思われます。(上限額を見る期間を長くするほど、受講料が平均化されてカットされる額が減ります。)
また、長期専門実践訓練(専門実践教育訓練のうち管理栄養士養成施設により行われる教育訓練その他の法令により4年の修業年限が規定されている教育訓練をいいます。※看護士も3年間が基本ですが、大学で修学すれば4年間となります。)を受講している者であって、一定の要件を満たすもの(以下、『長期専門実践教育訓練に係る上限額の拡充対象者』といいます。)については、次表『上限額(全期間)』が( )内の①160万円、②224万円に拡充されます。(つまり、1年分上積みされたということです。)
①専門実践教育訓練を受け、修了した者(当該専門実践教育訓練を受けている場合を含み、下記②に掲げる者を除く。)…支給率50%:上限額 年間40万円、全期間120万円(160万円)
②・専門実践教育訓練を受け、修了し、当該専門実践教育訓練に係る資格の取得等をし、かつ、当該修了した日の翌日から起算して1年以内(原則)に一般被保険者又は高年齢被保険者(特例高年齢被保険者を除く。つまり、一の適用事業所で高年齢被保険者となること。)
・専門実践教育訓練を受け、修了した日において一般被保険者又は高年齢被保険者(特例高年齢被保険者を除く。)として雇用されている者であって、当該修了した日の翌日から起算して1年以内に資格の取得等をした者…支給率70%(①との差額支給):上限額 年間56万円、全期間168万円(224万円)(①との差額支給)
なお、10年の間に複数回専門実践教育訓練を受講する場合は、最初に教育訓練給付金を受給した専門実践教育訓練の基準日(つまり、受講初日)から10年を経過するまでの間(『受給限度期間』といいます。)において開始した別の専門実践教育訓練に着係る教育訓練給付金との合計額について、168万円((先発が)長期専門実践教育訓練に係る上限額の拡充対象者にあっては224万円)が限度となります。
【長期専門実践教育訓練に係る上限額の拡充対象者の一定の要件】
※結局は、『3年目の後期』において『高収入の在職者でないこと』ということです。
①当該長期専門実践教育訓練の基準日から起算して3年が経過していること。
※つまり、『4年目』ということです。
②当該長期専門実践教育訓練の基準日が、支給限度期間の初日であること。(長期専門実践教育訓練の受講開始日前10年以内の期間に別の専門実践教育訓練を受講したことがないこと。)
※つまり、長期専門実践教育訓練が後発の場合は、給付されないということです。先発で専門実践教育訓練を受講しているのに、10年以内に、また長期専門実践教育訓練を受講するということは、先発の専門実践教育訓練が役に立ってなかったと判断されますので。(注:筆者の推定です。)
③当該長期専門実践教育訓練の基準日から起算して30箇月を経過する日の属する支給単位期間(3年目の後期)における賃金の日額が、基本手当の日額の算定にあたって100分の50(60歳以上65歳未満の者にあっては、100分の45)を乗ずることとされている賃金日額のうち最も低額なもの(つまり、『最高額の区分』ということですが、今後の額の改定がある場合も考慮して、このような表現となっていると推定します。この記事記載時点では、12,580円(60歳以上65歳未満は11,300円))未満であること。

3)支給申請手続

教育訓練給付金対象者は、教育訓練給付金の支給を受けようとするときは、次に掲げる書類に所定の書類を添えて、次に掲げる期限までに管轄公共職業安定所の長に提出しなければなりません。
※試験で問われるのは、おそらく、『期間』と『開始前』or『修了後』だと思います。
①一般教育訓練…
 教育訓練給付金支給申請書:(申請期限)一般教育訓練を修了した日の翌日から起算して1箇月以内
②特定一般教育訓練…
 1 教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票:(申請期限)特定一般教育訓練を開始する日の1箇月前(まで)
 2.教育訓練給付金支給申請書:(申請期限)特定一般教育訓練を修了した日の翌日から起算して1箇月以内
③専門実践教育訓練☝️
 1.教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票:(申請期限)専門実践教育訓練を開始する日の1箇月前(まで)
 2.教育訓練給付金支給申請書:(申請期限)支給単位期間(6箇月ごと)の末日の翌日から起算して1箇月以内
※一般教育訓練のみ、受講前の申請は不要だということです。
【添付書類】
教育訓練給付金及び教育訓練支援給付金受給資格確認票には、担当キャリアコンサルタントが、特定一般教育訓練又は専門実践教育訓練受講予定者の就業に関する目標その他職業能力の開発及び向上に関する事項について、キャリアコンサルティングを踏まえて記載した職務経歴等記録書(ジョブカード)などを添えなければなりません。
【専門実践教育訓練に係る資格の取得等をした場合】
専門実践教育訓練を受け、修了した者が、前述2)2.の表の②の要件に該当した場合には、当該専門実践教育訓練を修了の上、当該専門実践教育訓練に係る資格を取得等し、かつ、一般被保険者又は高年齢被保険者(特例高年齢被保険者を除く。以下、同じ。 ※つまり、一の適用事業所のみで被保険者となること。)として雇用された日(一般被保険者又は高年齢被保険者として(すでに)雇用されている者にあっては、当該専門実践教育訓練を修了の上、当該専門実践教育訓練に係る資格を取得した日)(※つまり、資格の取得等と、適用事業所で雇用されているという2つ要件を満たした日)の翌日から起算して1箇月以内に、教育訓練給付金申請書を提出することで、その差額について追加支給を受けることができます。

②教育訓練支援給付金

※令和7年4月以降延長にならなかった場合は、試験には出題されないと思います。
教育訓練支援給付金は、教育訓練給付対象者(教育訓練給付金の支給を受けたことがない者のうち、基準日が当該基準日の直前の一般被保険者ではなくなった日から1年 ※つまり、一回限りの給付金ということです。また、対象者が下記の通り45歳未満なので、高年齢被保険者は、対象者ではありません。)(当該1年の期間内に妊娠、出産、育児、疾病、負傷その他管轄公共職業安定所長に申し出てその期間を延長した場合は、最大4年)の期間内にある者に限ります。)であって、令和7年3月31日以前に一定の専門実践教育訓練を開始したもの(当該教育訓練を開始した日における年齢が45歳未満であるものに限ります。)が、当該教育訓練を受けている日(当該教育訓練に係る指定教育訓練実施者によりその旨の証明がされた日に限ります。)のうち失業している日(失業していることについての認定を受けた日に限ります。)について支給されます。
※ここも( )が多いので、( )を外して簡単に書くと、
教育訓練支援給付金は、教育訓練給付金の支給を受けたことがない者で、その教育訓練の初日が、一般被保険者でなくなった日から、原則1年以内の範囲内にあり、令和7年3月31日以前に一定の専門実践教育訓練を開始したもの(その初日における年齢が45歳未満である者に限ります。)が、当該教育訓練を受けている日のうち、失業している日として一定の認定その他の証明を当該教育訓練実施者から受けた日について支給されます。
【教育訓練支援給付金の額(日額)】
原則として基本手当の日額(✕賃金日額)に相当する額に100分の80を乗じて得た額(基本手当の日額の80%相当額)とされており、基本手当が支給される期間や、基本手当の待期期間、基本手当の給付制限が行われる期間については、支給されません。
※生活補償という同じ趣旨の基本手当と重ねての給付はしないということですが、学費支援という別の趣旨の教育訓練給付金は、要件を満たす限り、別途、支給されます。

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