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社労士試験 予備校では教えないポイント解説 vol.084

雇用保険法(12)

今回で、雇用保険法は終わりです。他の法律等から類推できることも多いですし、当然と言えば当然という内容も多いので、特例的な内容や、出てくる『数字』に気をつけてざっと見れば、試験で問われても大丈夫かと思います。

①受給権の保護

1)譲渡等の禁止

『失業等給付を受ける権利は、譲り渡し、担保に供し、又は差し押さえることができない。』
※労働基準法における賃金の『全額払の原則』と同じ趣旨です。借金等と債権との相殺等が禁止されています。もちろん、債権者の権利もありますので、失業等給付を受けた者が、その給付金の中から社会通念上正当と思われる範囲内で借金の返済等をするところまでは禁止されていません。

2)公課の禁止

『租税その他公課は、失業等給付として支給を受けた金銭を基準として課することができない。』
※一言で言えば『非課税』ということです。したがって、給付率が給付基礎日額の67%等という割と低い率に設定されたり、一般的な手取り率に合わせて、全体でも80%を超えないことを前提としているわけです。
【失業等給付】
※言葉の定義なのでここを引っ掛けての問題は、試験には出ないと思います。
労災保険法との違いを確認してみると、労災保険法では『保険給付』と規定されているのに対して、雇用保険法では『失業等給付』と規定されています。また、労災保険法では『金品』と規定されているのに対し、雇用保険法では『金銭』と規定されています。これは、労災保険法の給付には、療養の給付等の『現物給付』が含まれているのに対し、雇用保険法の給付は、すべて『現金給付』であるためです。ですから、同じく療養等の現物給付のある健康保険法においても『金品』と規定されています。

②未支給の失業等給付

※雇用保険に限らず、給付金は『後払い』なので、受給権利者が死亡した場合には、必ず、未支給の給付金が発生します。相続税法上は相続人が受給すベきということになりますが、それを貫くと、『本当に必要とする者』に給付金が給付されないことになりますので、社労士試験の範囲の未支給の給付金については、特別な優先順位が規定されています。大まかには『死亡した者によって生計を維持されていた者』というイメージで大丈夫です。そういう趣旨で、『配偶者』は婚姻届の有無は問われないということになっています。また、死亡した者は法律行為ができませんので、未支給の給付金を請求する者が『自己の名』で請求することになるということです。
『失業等給付の支給を受けることができる者が死亡した場合において、その者に支給されるべき失業等給付でまだ支給されていないものがあるときは、その者の配偶者(婚姻の届出をしていないが、事実上婚姻関係と同様の事情にあった者を含む。)、子、父母、孫、祖父母、兄弟姉妹(ケイテイシマイ)であって、その者の死亡の当時その者と生計を同じくしていたものは、自己の名で、その未支給の失業等給付の支給を請求することができる。また、未支給の失業等給付の支給を受けるべき者の順位は、この順序(つまり、上記の、配偶者、子、父母。。。の順序)による。』
なお、未支給の失業等給付の請求は、受給資格者等が死亡した日の翌日から起算して6箇月以内にしなければなりません。
※この『6箇月』という期限は、『相続の放棄』ができる期限と同じです。そもそも、額も大きくない未支給の失業等給付を請求しないのだから『それを必要とはしていない』ともいえると思います。(筆者推定)
【失業の認定を受けていなかった場合】
受給資格者等が死亡したため失業の認定を受けることができなかった期間に係る基本手当の支給を請求する者は、死亡者に係る(死亡者の死亡の当時の住所又は居所を管轄する)公共職業安定所に出頭し、死亡した受給資格者について失業の認定を受けなければなりません。
なお、死亡者に係る公共職業安定所の長がやむを得ない理由があると認めるときは、未支給給付金請求者の代理人が死亡者に係る公共職業安定所に出頭し、死亡した受給資格者について失業の認定を受けることができます。
※請求権利者が幼い子供だった場合等です。
【同順位が複数の場合】
『未支給の失業等給付の支給を受けるべき同順位者が2人以上あるとき(例えば、子が2人いる場合等)は、その1人のした請求は、全員のためその全額につきしたものとみなし、その1人に対してした給付は、全員に対してしたものとみなす。』
※元々は、受給資格者1人に対する給付なので、分割請求、分割支給は認めません.。。。という趣旨です。

③不正利得の返還命令等

※元々『自己申告』の部分が多く、不正受給が多いことに対する、雇用保険法だけに見られる『3倍返し』の規定です。
『偽りその他不正の行為により失業等給付の支給を受けた者がある場合には、政府は、その者に対して、支給した失業等給付の全部又は一部(※『一部』という意味は、正当な権利に基づく給付金は除いて、不正受給した給付金は『全部』という意味です。)を返還することを命ずることができ、また、厚生労働大臣の定める基準により、当該偽りその他不正の行為により支給を受けた失業等給付の額の2倍に相当する額以下の金額を納付することを命ずることができる。』
※つまり、返還する額と納付する額を合計すると、不正受給した給付金の『3倍』となります。
【事業主等の連帯責任】
『事業主、職業紹介事業者等、募集情報提供事業者を行う者等(労働者になろうとする者の依頼を受け、当該者に関する情報を労働者の募集を行う者、募集受託者又は他の職業紹介事業者等に提供する行為を行う者に限る。)又は教育訓練給付の指定教育訓練実施者が偽りの届出、報告又は証明をしたためその失業等給付が支給されたときは、政府は、その事業主等に対し、その失業等給付の支給を受けた者と連帯して、失業等給付の返還又は納付を命ぜられた金額(※つまり、3倍返しのことです。)の納付を命ずることができる。』

④育児休業等給付への準用

前記①から③の規定は、育児休業等給付に準用されます。

⑤不正受給による給付制限

1)求職者給付及び就職促進給付の給付制限

※以下説明する給付制限の各項目は、『給付制限期間』を覚えておけば、試験上は大丈夫かと思います。

1.原則

偽りその他不正の行為により求職者給付又は就業促進給付の支給を受け、又は受けようとした者には、これらの給付の支給を受け、又は受けようとした日以後、求職者給付(日雇労働者給付金を除きます。※次の2.参照。)又は就職促進給付は、支給されません。
ただし、やむを得ない理由(※『貧困』も理由として認められるようです。)がある場合には、当該給付の全部又は一部(※これも、受給しようとしたいくつかの給付のうち、『不正受給とみなされたものの全部』という意味での『一部』です。)を受給することができます。
また、不正受給者であっても、その後再就職し、その再就職により、新たに受給資格、高年齢受給資格又は特例受給資格を取得した場合には、その新たに取得した受給資格等に基づく求職者給付又は就職促進給付は支給されます。
【給付制限される給付】
・基本手当、高年齢求職者給付、特例一時金
・技能習得手当
・寄宿手当
・傷病手当(※基本手当の代わりに給付されるものですから、当然ですね。)
・就業促進手当
・移転費
・求職活動支援費

2.日雇労働者求職者給付金の例外

※日雇労働という就業形態の特殊性により、別段の取り扱いが規定されています。
日雇労働者求職者給付金の支給を受けることができる者が、偽りその他不正の行為により求職者給付又は就業促進給付の支給を受け、又は受けようとしたときは、やむを得ない理由がある場合を除き、その支給を受け、又は受けようとした月及びその翌月から3箇月間は、日雇労働者給付金は、支給されません。
※つまり、1月に不正行為があった場合は、5月まで給付金が給付されないことになりますが、給付の条件の『前2箇月に26日以上』というのがありますので、3月と4月に最低でも26日は働かないといけません。

2)教育訓練給付、雇用継続給付及び育児休業給付の給付制限

偽りその他不正の行為により以下の左欄の支給を受け、又は受けようとした者には、やむを得ない理由がある場合を除き、当該給付の支給を受け、又は受けようとした日以後、以下の右欄の通りの給付は支給されません。
(不正受給し(ようとし)た給付)(支給されなくなる給付)
①教育訓練給付金又は教育訓練支援給付金…同左
②高年齢雇用継続基本給付金…同左(※ただし、当該被保険者の離職についての基本手当は、支給されます。給付の趣旨が違うからです。)
③介護休業給付…同左
④育児休業給付…同左
⑤出生後休業支援給付…同左
⑥育児時短就業給付…同左
不正受給者であっても、その後新たに支給要件を満たした場合には、その新たな支給要件に基づく給付は支給されます。『新たに支給要件を満たした』とは、被保険者として雇用保険料を納付したことにより満たした支給要件のほか、例えば、育児休業給付を不正受給し(ようとし)た者が、当該育児休業給付の支給に係る育児休業を開始した日に養育していた子以外の子について新たに育児休業を開始し、育児休業給付の支給を受けることができる者となった場合には、当該育児休業に係る育児休業給付は支給されます。これは、不正受給の際は、当該育児休業給付を特には必要としていなかった場合であっても、その後の子についての育児休業給付までも給付制限するのは、当該子の保護に欠けるからというイメージで大丈夫です。(※筆者推定)

⑥就業拒否等による給付制限

※『せっかく紹介した就業を拒否するということは、就業することをそんなには必要としてないでしょ?』ということで給付制限が行われるということです。

1)就業拒否又は受講拒否による給付制限

1.原則

受給資格者(訓練受講後の訓練延長給付、個別延長給付、広域延長給付、全国延長給付又は地域延長給付を受けている者を除きます。※下記参照。結論としては、支給停止です。)が正当な理由なく、公共職業安定所の紹介する職業に就くこと又は公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けることを拒んだときは、その拒んだ日から起算して1箇月間は、求職者給付(※基本手当、技能習得手当、寄宿手当、傷病手当、高年齢求職者給付、特例一時金です。次の2)についても同じです。)は支給されません。
なお( )内の通り、高年齢受給資格者又は特例受給資格者についても、同様です。
【延長給付を受給している者の場合】
訓練受講後の延長給付、個別延長給付、広域延長給付、全国延長給付又は地域延長給付を受けている受給資格者が、正当な理由なく同様の拒否をした場合は、その拒んだ日以後基本手当は支給されません。ただし、その者が(再就職をして)新たに受給資格を取得した場合は、この限りではありません。
※『訓練受講後』に限定しているのは、訓練受講前や訓練受講中には、『職業を紹介する』という概念がないからです。
※次の2)についても、同じです。
【正当な理由】
紹介された職業が、労働者の希望する労働条件(賃金や所在地等)を満たしていない、就業に必要とされる知識や能力をその労働者が有していない、労働者の希望職種とはまったく違う職種である。。。など、どちらかと言えば、公共職業安定所側のミスマッチによるものです。

2.日雇労働求職者給付金の例外

日雇労働求職者給付金の支給を受けることができる者が、正当な理由なく、公共職業安定所の紹介する業務に就くことを拒んだときは、その拒んだ日から起算して7日間は、日雇労働求職者給付金は支給されません。
※『お金が必要なら、仕事は紹介するから、1週間、ちゃんと働け!』ということです。(筆者推定)

2)指導拒否による給付制限

受給資格者(訓練受講後の訓練延長給付、個別延長給付、広域延長給付、全国延長給付又は地域延長給付を受けている者を除きます。)が、正当な理由がなく、厚生労働大臣の定める基準に従って公共職業安定所が行うその者の再就職を促進するために必要な職業指導を受けることを拒んだときは、その拒んだ日から起算して1箇月を超えない範囲内において公共職業安定所長の定める期間は、求職者給付は支給されません。
なお、高年齢受給資格者又は特例受給資格者についても、同様です。

⑦離職理由による給付制限

1)離職理由による給付制限

被保険者が自己の責めに帰すべき重大な理由によって解雇され、又は正当な理由がなく自己の都合によって退職した場合には、待期期間(7日間)の満了後(※試験上、この『待期期間満了後』という部分は、非常に大事です。よく忘れます。)1箇月以上3箇月以内の間で公共職業安定所長の定める期間は、求職者給付(日雇労働求職者給付金を除きます。)は、支給されません。
ただし、次の①~③に該当するとき(①については公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受ける期間及び受け終わった日後の期間に限り、③については②の訓練を受ける期間及び受け終わった日後の期間に限る。)については、給付制限は行われません。
①公共職業安定所長の指示した公共職業訓練等を受けるとき(②に該当するときを除く。)
※この規定を悪用して、公共職業訓練等を受講するケースもあると聞いています。
②教育訓練給付に係る教育訓練その他の厚生労働省令で定める訓練を基準日(離職日)前1年以内に受けたことがあるとき(正当な理由がなく自己の都合によって退職したときに限る。 ※正当な理由があるときは、そもそも給付制限がないので、『限る』という表現になっています。)
③上記②の訓練を基準日(離職日)以後に受けるとき(正当な理由がなく自己の都合によってしたときに限り、上記②に該当するときを除く。)
なお、高年齢受給資格者については同様ですが、特例受給資格者については、前記のただし書きの適用はありません。(特例受給資格者については、ただし書き①~③に該当するときであっても給付制限が行われます。)。
【日雇労働求職者給付金】
日雇労働求職者給付金について設けられている給付制限は、不正受給による給付制限と、就職拒否による給付制限のみです。
※日雇労働者者について、『自己都合退職』という概念がないためです。
【給付制限される給付】
・基本手当、高年齢求職者給付及び特例一時金
・技能習得手当
・寄宿手当
・傷病手当
【1箇月以上3箇月以内】
近年、『正当な理由のない自己都合退職』の場合、『過去5年間で、2回目』までは、給付制限期間は、待期期間の終了後『2箇月』に短縮されました。
これは、キャリアアップのための離職や家庭の事情による離職を支援するという趣旨です。
尚、給付制限中は、失業の認定を受ける必要はありません。

2)給付制限に伴う受給期間の延長

※離職理由による給付制限は、『期間』の制限であり、『給付日数』が減るものではありません。しかし、元々、給付日数が多い場合は、離職理由による給付制限を受けた場合に受給期間内に受給できない場合もあるため、その救済規定です。なお、『21日』の意義は、絶対的な待期期間の『7日間』と、離職から最初に公共職業安定所に出頭するまでの平均的な期間『2週間』を足した期間という趣旨です。
離職理由による給付制限を行った場合において、給付制限期間(1~3箇月)に21日及び所定給付日数を加えた期間が1年(所定給付日数が360日である受給資格者(※就職困難者であって算定基礎日数1年以上で45歳以上65歳未満の者)にあっては、1年に60日を加えた期間   ※受給期間の特例で、元々、60日を加えた期間になっています。)を超えるときの基本手当の受給期間は、当初の受給期間(特例により延長された場合は、その特例により延長された受給期間)に当該超える期間を加えた期間となります。
【特例により延長された場合】
傷病等で就労不能の特例が適用され、受給期間が4年に延長されている場合に、当該給付制限に伴う受給期間の延長が行われたときは、受給期間が4年を超えることになります。
【計算例 ※数字問題なのでダミーを作りやすく、試験に出しやすいので、計算式は、理解しておきましょう。】
〈所定給付日数300日の者が2箇月(61日 ※計算問題の場合は、必ず、『日数』が明示されるはずです。)の給付制限を受ける場合〉
61日+21日(※この21日を忘れやすいので注意!)+300日-365日(※おそらく『閏年ではない』等の指示があるはずです。)=17日。。。が延長される日数になります。
上記の( )内の就職困難者の場合は、上記式中365日とあるところが、365日+60日となりますから、結果、上記式を流用すると、延長日数は、61日+21日+360日-(365日+60日)=17日となり、その者の全体の受給期間は、365日+60日+17日=442日となります。給付日数(前例ですと360日)と受給期間(同、1年+60日)を混同しないようにしましょう。

⑧ニ事業

※『ニ』とは、雇用安定事業と能力開発事業です。ニ事業に係る雇用保険料は、事業主のみの負担となります。また、この項目は耳慣れない言葉が多いので『選択式』の方に出題される可能性がありますので、社労士試験は、基本的には暗記の試験ではありませんが、ここはしっかりと押さえましょう。また、政府は、このニ事業の一部を『独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構』に行わせることとされています。

1)雇用安定事業

※『事業主』を助成及び援助して、雇用を継続させるという趣旨です。
『政府は、被保険者、被保険者であった者(※離職した者のこと)及び被保険者になろうとする者(※求職中の者、公共職業訓練受講中の者等)(以下、被保険者等という。)に関し、失業の予防、雇用状態の是正、雇用機会の増大その他雇用の安定を図るため、雇用安定事業を行うことができる。』
とされており、次の事業主に対して必要な助成及び援助を行うこと、その他被保険者等の雇用の安定を図るために必要な事業が実施されています。
①景気の変動、産業構造の変化その他経済上の理由により事業活動の縮小を余儀なくされた場合において、労働者を休業させる事業主その他労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を構ずる事業主
②労働者の再就職を促進するために必要な措置を構ずる事業主
③高年齢者等の雇用の安定を図るために必要な措置を構ずる事業主
④雇用に関する状況を改善する必要がある地域における労働者の雇用の安定を図るために必要な措置を構ずる事業主

2)能力開発事事業

※職業訓練等によって労働者の能力を向上させることにより離職を防ぐという目的で、その職業訓練等を受講しやすくするように『事業主』を援助する等を行うという趣旨です。

1.第63条の事業

『政府は、被保険者に関し、職業生活の全期間を通じて、これらの者の能力を開発し、及び向上されることを促進するため、能力開発事業を行うことができる。』
とされており、次のようなものが実施されています。
①事業主等の行う職業訓練を振興するために必要な助成及び援助
②公共職業能力開発施設等の設置運営・経費援助等
③再就職を容易にするための職業講習等の実施
④有給教育訓練休暇を与える事業主に対する助成及び援助
⑤公共職業訓練等の受講の奨励
⑥技能検定の実施に対する助成
【技能検定】
技能及びこれに関する知識について一定の基準を設け、労働者の技能がその基準に達しているかを判定する制度であり、職業能力開発促進法に基づいて実施されています。
※非常にたくさんの検定があります。イメージがつきやすいものを、『ほんの一例』挙げますと、
・産業車両整備
・自動販売機調整
・婦人子供服製造
・紳士服製造
・パン製造
・製麺
・酒造
・とび
・配管
・鉄筋施工
・防水施工
・塗装
・フラワー装飾
…等があります。上記は『特級』の際の区分で、各々の中で、特級以外(1~3級)は更に細分化されています。
※ほぼ『何でもあり』なので試験には出題されませんので、覚える必要はありません。

2.職業支援法事業

『政府は、被保険者であった者及び被保険者になろうとする者の就職に必要な能力を開発し、及び向上されるため、能力開発事業として、職業訓練の実施等による特定求職者の就職の支援を行うこと及び特定求職者に対して、職業訓練受講給付金を支給することができる。』
【特定求職者】
公共職業安定所に求職の申込みをしている者(雇用保険の被保険者である者及び受給資格者である者を除く。 ※つまり、現在働いて賃金を得ている労働者と、離職していても基本手当等を受給できる者を除くということです。)のうち、労働者の意思及び能力を有しているものであって、職業訓練その他支援措置を行う必要があるものと公共職業安定所長が認めたものをいいます。

3)事業等の利用等

1.事業における留意事項

『雇用安定事業及び能力開発事業は、被保険者等の安定を図るため、労働生産性の向上に資するものとなるよう留意しつつ、行われるものもする。』

2.事業等の利用

『雇用安定事業及び能力開発事業の第63条の事業の規定による事業又は当該事業に係る施設は、被保険者等の利用に支障がなく、かつ、その利益を害しない限り、被保険者等以外の者に利用させることができる。』

⑨費用の負担

1)国庫負担

1.給付費の負担

給付費に関しては、次のような負担割合の国庫負担が行われています。
( )内は雇用情勢及び雇用保険の財政状況が悪化していない場合に適用される割合で、近年、規定されたものです。 ※要は、なるべく、不要な国庫負担を減らしたいということです。
①-1.日雇労働者給付金及び高年齢求職者給付金『以外の』求職者給付(広域延長給付受給者に係るものを除く)…4分の1(40分の1)
①-2.広域延長給付受給者に係る求職者給付…3分の1(30分の1)
①-3.日雇労働求職者給付金…3分の1(30分の1)
②-1.介護休業給付…8分の1
②-2.育児休業給付…8分の1
③  就業支援法事業の職業訓練受講給付金…2分の1
※介護休業と育児休業は、元々は同一区分だったので同一負担割合となっています。 社労士の実務上、まったく重要な論点ではない(社労士が介入する余地がない)のですが、数字なので、試験には結構出ています。私の受験期間中にも出題されて、覚えていた語呂合わせで正答できました。なので、感謝の意を込めて、著作権があるのは承知していますが、某予備校作の語呂合わせを紹介します。
『給与もらったし、コーヒー飲みに行くかいや?職人。』
→求4もらったし、広日の3に育介8?職2ん
※語呂合わせ、侮るなかれ。
【暫定措置】
介護休業給付及び就業支援法事業の職業訓練受講給付金に係る国庫負担の割合は、暫定措置が設けられており、当分の間、表の負担割合の100分の55に相当する割合(介護休業給付は、令和6年度から令和8年度までの各年度については、表の負担割合の100分の10に相当する割合)とされています。なお、上記の暫定措置は、令和9年4月1日以降できるだけ速やかに、安定した財源を確保した上で廃止するものとされています。

2.事務費等の負担

『国庫は、毎年度、予算の範囲内において、就職支援法事業に要する費用(職業訓練受講給付金に要する費用を除く。 ※上記③で国庫負担があるから。)及び雇用保険事業(出生後休業支援給付及び育児時短就業給付に係る事業を除く。 ※子ども・子育て支援納付金をもって充てることとされているため、雇用保険の保険料は、充てられていません。)の事務の執行に要する費用を負担する。』

2)保険料

詳細は次項『徴収法』で述べますが、雇用保険の保険料は、賃金の総額に雇用保険率(失業等給付分及び就職自衛隊事業分+育児休業給付分+ニ事業(就職支援法事業分を除く)分)を乗じたものになります。
この内、失業等給付分が労使折半、他は事業主のみの負担となります。
現行の保険料率を下記に掲載しておきます。また、就職支援法事業については、失業等給付分に含まれます。(つまり、労使折半)
※保険料率は、近年、頻繁に変わっていますので、最新情報を確認してください。
※社労士実務としては、とにかく『年度途中に保険料率を変更しないで欲しい。』だそうです。労働保険料の納付が『年単位』だからです。
(事業の種類):(保険料率全体):(a.失業等給付分)(b.育児休業給付分)(c.ニ事業分)※率はすべて1000分のxという単位
①一般の事業:16.5:a.8  b.5  c.3.5
②農林水産・清酒製造業:18.5:a.10  b.5  c.3.5
③建築業:19.5:a.10  b.5  c.4.5

⑩不服申立て

※⑩及び次項の⑪は、労災保険法より類推は可能です。さらっと一通り目を通してください。
雇用保険に関する処分についての不服申立ては、不服申立人が通常失業者であることに加え、専門技術的な性格を有し、かつ、大量に行われますので、基本的には、特別法である『労審法(労働保険審査官及び労働保険審査会法)』に基づいて行われます。ただし、労審法の不服申立ての対象外となる処分もありますので、これらの処分についての不服申立ては、一般法である『行政不服審査法』に基づいて行うことになります。

1)労審法による不服申立て

1.審査請求及び再審査請求

『被保険者となったこと若しくは被保険者でなくなったことの確認、失業等給付及び育児休業等給付(以下、『失業等給付等』といいます。)に関する処分又は不正受給による失業等給付等の返還命令若しくは納付命令の処分に不服のある者は、雇用保険審査官に対して審査請求をし、その決定に不服のある者は、労働保険審査会(✕雇用保険審査会…そういう会はありません。)に対して再審査請求をすることができる。』
また、
『審査請求をしている者は、審査請求をした日の翌日から起算して3箇月(✕2箇月…社会保険は2箇月です。案件量による違いで、労働保険は3箇月掛かるということです。)を経過しても審査請求についての決定がないときは、雇用保険審査官が棄却したものとみなすことができる。』
※つまり、3箇月経過したら、次のステップである再審査請求又は、次の2.の裁判所への直接の訴訟ができるということです。
なお、審査請求及び再審査請求は、時効の完成猶予及び更新に関しては、裁判上の請求とみなされます。
【雇用保険審査官】
厚生労働事務官から厚生労働大臣によって任命され、各都道府県労働局に置かれています。

2.訴訟との関係

『前記1.の処分の取消しの訴えは、当該処分についての審査請求に対する雇用保険審査官の決定を経た後でなければ、提起することができない。』
※雇用保険審査官の決定について不服がある者は、労働保険審査会に対して再審査請求をすることができるほか、裁判所に(直接)処分の取消しの訴えを提起することができます。
※審査請求は、処分があったことを知った日の翌日から起算して3月を経過したときはすることができない。また、処分とは、
①被保険者資格の確認
②失業等給付等に関する処分
③不正受給に係る返還命令又は納付命令
をいいます。
※再審査請求は、決定書の謄本が送付された日の翌日から起算して2月を経過したときは、することができません。

3.不服の理由の制限

被保険者となったこと又は被保険者でなくなったことの確認に関する処分が確定したときは、当該処分についての不服を当該処分に基づく失業等給付等に関する処分についての不服の理由とすることができません。
※つまり、同じ内容を、角度を変えてもう一度審査請求することはできないということです。例えば、『被保険者の要件を満たしていない』ということが確定したのに、これを不服として、『失業等給付等が支給されない』ことについて訴えることはできないということです。

2)行政不服審査法による不服申立て

『被保険者となったこと又は被保険者でなくなったことの確認、失業等給付等に関する処分及び不正受給による失業等給付等の返還命令又は納付命令』以外の処分について不服がある場合には、厚生労働大臣に対して審査請求することができます。

⑪雑則等

1)時効

失業等給付等の支給を受け、又はその返還を受ける権利及び不正受給による失業等給付等の返還命令又は納付命令により納付すべきことを命ぜられた金額を徴収する権利は、これを行使することができるときから2年を経過したときは、時効によって消滅します。

2)書類の保管

事業主及び労働保険事務組合は、雇用保険に関する書類(一定の書類を除きます。)を、原則として、その完成の日から2年間(被保険者に関する書類にあっては4年間)保管しなればなりません。
※『2年間』は、時効期間に合わせていると理解して大丈夫です。
【4年間】
資格取得確認通知書は、被保険者を雇用している期間中及びその者が被保険者資格を喪失してから4年間保管しなればなりません。
※『4年間』というのは、受給期間の特例を受けた場合の最大期間という意味と考えて大丈夫です。

3)報告等の命令

行政庁は、被保険者若しくは受給資格者若しくは教育訓練給付対象者を雇用し、若しくは雇用していたと認められる事業主又は労働保険事務組合若しくは労働保険事務組合であった団体に対して、雇用保険法の施行に関して必要な報告、文章の提出又は出頭を命ずることができます。
その他、行政庁は、受給資格者等を雇用しようとする事業主、受給資格者等に対し職業紹介若しくは職業指導を行う職業紹介事業者等、募集情報提供事業を行う者(労働者になろうとする者の依頼を受け、当該者に関する情報を労働者の募集を行う者、募集受託者又は他の職業紹介事業者等に提供する行為を行う者に限る。)又は教育訓練を行う指定教育訓練実施者に対して、雇用保険法の施行に関して必要な報告又は文書の提出を命ずることができます。
また、行政庁は、雇用保険法の施行のために必要があると認めるときは、当該職員に、被保険者、受給資格者等若しくは教育訓練給付対象者を雇用し、若しくは雇用していたと認められる事業主の事務所又は労働保険事務組合若しくは労働保険事務組合であった団体の事務所に立ち入り、関係者に対して質問させ、又は帳簿書類の検査をさせることができます。二事業に関しても同じです。

4)罰則

事業主我次のいずれかに該当するときは、6箇月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処せられます。
①被保険者に関する届出をせず、又は偽りの届出をした場合
②被保険者となったこと又は被保険者でなくなったことの確認の請求又は特例高年齢被保険者となる申出をしたことを理由として、労働者に解雇その他不利益な取扱いをした場合
③報告又は文書の提出命令に違反して報告せず、若しくは偽りの報告をし、又は文書を提出せず、若しくは偽りの記載をした文書を提出した場合
④離職者等が求職者給付、雇用継続給付又は育児休業等給付を受けるために必要な事業主の証明書の交付を拒んだ場合
⑤立入検査における行政庁職員の質問に対して答弁をせず、若しくは偽りの陳述をし、検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合
なお、事業主の場合とほぼ同様の罰則規定が、労働保険事務組合についても設けられており、違反があった場合には、労働保険事務組合の代表者又は代理人、使用人その他の従業者に対して、同様の罰則が適用されます。
また、雇用保険法においても、いわゆる両罰規定(第86条)が設けられています。
【参考:第八十六条】
法人(法人でない労働保険事務組合を含む。以下この項において同じ。)の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関して、前三条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対しても各本条の罰金刑を科する。
【被保険者の場合】
被保険者、受給資格者等が、
①不正の行為によって日雇労働被保険者手帳の交付を受けた場合
②報告、文書提出又は出頭命令に違反して報告せず、若しくは偽りの報告をし、文書を提出せず、若しくは偽りの記載をした文書を提出し、又は出題しなかった場合
③立入検査における行政庁職員の質問に対して答弁をせず、若しくは偽りの陳述をし、又は検査を拒み、妨げ、若しくは忌避した場合には、6箇月以下の懲役又は20万円(✕30万円)以下の罰金に課せられます。

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