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【獣医執筆】FIPの診断から治療そして寛解まで

はじめに

皆様はじめまして。数あるNoteの中から読んで頂き心よりお礼申し上げます。

私の紹介は他のnoteに簡潔ながら書きましたので気になる方は読んでいただけたら幸いです。
https://note.com/doctor_kaede0510/n/nff5d6335dbeb

まだ不慣れで拙い文ではありますが少しでも参考になるように頑張ります。
読んでいる際にお気付きになられた点がありましたら是非お気軽に聞いてくださいね。

今回の記事を始めたのは猫達をもっと救いたいと思ったからです。
私が救えるのは手の届くお家の犬猫のみで、外猫はなかなか救えません。

皆さんの周りに野良犬はいますか?居ないですよね。
では野良猫はどうでしょうか?
野良犬はほぼ居ないのに野良猫はなかなか減らせないのは何故でしょうか。
野良猫を減らすために私達が出来る事はなんでしょうか。

野良猫は水も食料も充分に確保出来ず、過酷な環境下で生きています。
家猫の平均寿命が15年に対して野良猫の平均寿命は半分以下とも言われています。
その主な原因は充分な睡眠の確保が出来ないこと、綺麗な飲水を確保出来ないこと、食料の不足、そして交通事故です。

先日も病院に自転車事故に巻き込まれた猫が運ばれてきました。一命はとりとめましたが、その子は生きる気力を失っていました。
野良猫の生活は想像以上に過酷です。
そういう子たちに接する機会が多く、どうすればこういう子たちを減らす事ができるのか…。

上記の事を考えていく中で、獣医として記事を書くことで幸せな動物が1匹でも増えるようにNoteを始めました。
記事は全部無料で読めますが購入していただいた場合、身寄りの無い動物たちの支援に使わせて頂きます。
寄付先:福井県福井市の保護猫団体 『しあわせにゃん家』

http://shianyan.com
https://www.instagram.com/shia_nyan/

しあわせにゃん家さんのHPです

猫伝染性腹膜炎(Feline infectious peritonitis:以後FIP)の治療を行った獣医としての視点とご家族様の声をNoteにしたのでお読み頂けたら幸いです。情報を少しでも届けたいと思い作ったら文字数がかなり多くなってしまいました。

FIPの疑いもしくは診断された猫の家族の皆さんはおそらく分からない事や不安な事が多々あると思います。これを読むことで少しでもお役に立てれば幸いです。

また病気について診断、治療法、リスク因子そして実際にかかった費用をまとめましたので不明な点などがありましたら、何でも聞いてください。

1、FIPという病気について

この感染症は未だに不明な点が多く、仮説としては猫のコロナウイルス(FCoV)が変異して強毒型のFIPウイルス(FIPV)が生じると言われています。(FCoVは元々複製の段階でエラーが起こり易い=変異が起こりやすい)
FIPは致死性の高い疾患ですがFCoVは軽度の腸炎を起こすのみです。
FCoV陽性(感染している事)だからといって必ずFIPを発症するわけではありません。
現在確立したワクチンは開発されていません。

FIPに感染した猫から他の猫への感染予防としては部屋の棲み分けが理想的です。
FIPウイルスはエンベロープと呼ばれる膜構造を持っている為、アルコールや次亜塩素酸等の一般的な消毒で不活化出来ます。

しかし一般的な環境下では7週間失活しないとされています。
またFIPV、FCoVどちらのウイルスも経口もしくは経鼻感染し体内に侵入するとされています。
つまり基本的には猫用トイレ、衣服、手指等を介して感染します。
蔓延を防ぐ為に糞便の飛散を防ぐ事が大切です。
こまめなトイレ掃除、洗浄、交換はしっかりしてあげましょう。

発症には免疫細胞の一つであるマクロファージの感染が不可欠です。感染したマクロファージによって過剰なサイトカインが放出され免疫が抑制される事によってさらなるFIPの病態悪化が進行します。

このウイルスが他と異なる点として、一般的にウイルスに対する抗体(ウイルスと戦う免疫機構)がある事によってウイルスは感染性を失いますが、FIPウイルスは逆に抗体が存在する事で感染が増強されます。
これを抗体介在性感染増強と言われ、FIPVが爆発的に増殖し症状を悪化させる理由の一つになります。

症状としては非特異的(特徴的な所見が無い)で発熱、食欲不振、嘔吐下痢、体重減少、可視粘膜の蒼白、黄疸などです。特に1歳未満での発症は病状の進行が早いといわれます。症状だけでFIPを診断するのは難しいです。

また症状で2つの型に分けられます。(混合タイプを入れたら3型)
Dry(非滲出液)型:脾臓、肝臓、腎臓、腸等に肉芽腫と言われるしこりが出来たり、眼の病変や神経症状が見られます。
Wet(滲出液)型:胸腔や腹腔に滲出液の貯留が主な症状として見られます。

2、リスク要因として

■感染源
•多量のFCoVが存在する環境

■背景
•FIPと診断された血統もしくは兄弟が居る
•免疫抑制治療
•キャッテリー、シェルター、保護団体、譲渡会から引き取った
•外的ストレス 
 1. 手術(避妊去勢もしくはその他の手術)
 2. ワクチン接種
 3. 消化器疾患
 4. 上部気道疾患
 5. 旅行やキャットショーへの参加
  赤ちゃん等の新しい家族や引越      など

■シグナル
•2歳以下でのFCoVへの暴露
•未去勢雄
•ベンガルやバーマン等の特定の猫種

■健康状態
•FIVやFeLVもしくはその他の病気の併発
•免疫が低下している状態

■飼育環境
•多頭飼い
•複数の猫との接触
•異なる期間滞在する猫が一緒に過ごす
•異種年齢の混在
•過密(5頭以上)

*リスクの話ですので上記が当てはまるからといってFIPになる訳ではありません

3、診断方法

胸水や腹水が認められるWet型の診断は比較的容易で抜去した貯留液(胸水や腹水)の検査によって診断出来ることが多いです。(血液を用いた検査よりも検出率が遥かに高いです)

Dry型の様な貯留液(胸水や腹水)が無い場合は症状が非特異的で診断が難しい場合があります。なぜなら一般的にFIPで異常が出やすい血液検査(高蛋白血症、高グロブリン血症、低アルブミン血症、高ビリルビン血症)さえも認められない事がある為です。症状に合わせて血液検査、胸腹の貯留液、脳脊髄液(CSF)、組織の細針吸引(FNA)や生検など様々な種類の検査方法を実施することで診断に繋がります。

あまり一般的ではありませんが貯留液の検査でリバルタ検査(酢酸液と蒸留水の混合液に抜いた腹水または胸水を垂らす検査。通常であれば液体の中に液体を入れているので交わりますが 異常がある場合は画像のように垂らした貯留液が一本線になります。)というものがあります。この検査は安価で簡易的なFIPの否定として使えます。陽性の場合は腹膜炎、胸膜炎、リンパ腫といった他の疾患でも陽性になる可能性があるので注意が必要です。あくまでも簡易的なスクリーニングテストなので診断は総合判断で行いましょう。

リバルタ検査で反応する腹水・胸水は炎症性のもののみです。
腹水や胸水が出る原因は大きく分けて2つです。
1つは何かの影響で血圧や血中の成分(タンパク質)の異常等が起きる事で血管から大量に水分が漏れ出たり、回収する機能が低下し吸収しきれず漏れ出た状態になってしまうものです。この腹水・胸水の特徴はサラサラしている事で、それによって酢酸に入れても混ざってしまい判別出来ません。
2つ目は炎症した部位から出てくる水です。分かりやすく言うと、ショウ液などです。例えば怪我をした際に酷い傷だと傷口がネバネバすることがあると思います。あれがショウ液です。臓器などが炎症を起こすと、炎症反応でショウ液が炎症部位から出てきます。リンパ管が回収できない量が腹水や胸水になります。
1つ目の非炎症性の場合と違って炎症性の場合は腹水や胸水に様々な物(赤血球や炎症細胞など)が混ざり、酢酸に入れると下図のように混ざらず一本の線のようになったり 浮遊物が見られます。

リバルタ検査陽性
滴下した貯留液が混ざらず沈殿している

・腹膜炎:腹腔の臓器を覆う膜をざっくりと腹膜と言います。それが感染や腫瘍等によって炎症を起こす事です。
・胸膜炎:胸腔内にある胸膜に起こる炎症のこと。胸腔は肋骨より内側の部分で、胸腔内と肺を覆う膜が胸膜です。その膜が外傷や感染や腫瘍によって炎症を起こす事を胸膜炎と言います。
・リンパ腫:悪性腫瘍の一種。

4、治療方法

FIPの研究は盛んにされてて、色々な治療は行われきているが完全な治療法は確率されていません。

近年新しい治療法としてGS-441524(MUTIAN・ムチアン)が少しずつですが浸透してきました。まだ認可のとれていない薬で使う時は自己責任にはなってしまいますが生存率80%、再発率2%と今までの治療法とは比べ物にならない程の成果を挙げています。

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC8705141/

Therapeutic Effects of Mutian® Xraphconn on 141 Client-Owned Cats with Feline Infectious Peritonitis Predicted by Total Bilirubin Levels

5、ムチアンで治療を行った一例

■患者さん情報
ブリティッシュショートヘア
2021年2月生(現在約2歳)
既往歴は無し
‘21年8月に去勢手術済
1匹飼い(他の猫と接触機会は無し)
ペットショップからのお迎え

初診日
’21年10月中旬(当時8ヶ月齢)

■稟告
一般状態は良いが数日前から粘液便をする。用意したご飯は全部食べるが以前と比べ勢いが低下している。
いつもどおりの生活を行っていて体調の悪化に繋がるような事は何も無かった。

■所見
体重:3.94kg 体温39.5℃

・超音波検査
 複数の腹腔リンパ節の腫大(φ1.27×3.5cm)。腎臓のリムサイン(腎臓の髄質部分が白く見える事)。大腸壁の極度の肥厚。

・血液検査
 極軽度のビリルビン値の上昇、高蛋白血症、高*グロブリン血症及びそれに伴う過粘稠度症候群(血小板の明らかな上昇)

*グロブリンとは免疫において重要な役割を担うタンパク質の事。血液検査でのALB(アルブミン)とグロブリンを足すとTP(総蛋白になる)
下記だとTP9.7g/dLでALB2.9g/dLなのでグロブリンはその差の6.8g/dL
A/G比は2.9÷6.8=0.42

院内スクリーニング検査

・外注検査
血清アミロイドA(SAA)*:193μg/mL(基準範囲5.5μg/mL未満)
*炎症が起きた時に肝臓で作られて放出されるタンパク質の一個です。この数値が高いとそれだけ炎症が強い事を示します。

蛋白分画検査*:ポリクローナルガンモパチー(多種類の蛋白が増えていること)
*蛋白分画検査:高蛋白血症などの蛋白成分の異常値が認められる時に追加検査で行う。特定の疾患で特異的な増減をする場合がある。
(cf.ウイルス感染、多発性骨髄腫、膜性腎症、肝硬変など)

検査結果(左)と正常(右)
蛋白分画

便PCR検査:FCoVの陽性(参考基準陰性)またその他の消化器感染症の否定

猫下痢PCR

(FCoVは健康な猫さんでも陽性の場合が有るためこれだけではFIPの診断にはなりません)

初診時に外注検査の結果が出るまで、抗生剤及び胃腸薬を服用しながら待っていただきました。

診察費用(初診日)
診察 ¥1,000
超音波検査 ¥1,500
血液検査 ¥10,000
外注検査(SAA) ¥2,000
外注検査(蛋白分画) ¥3,000
外注検査(下痢PCR) ¥15,000
処方 ¥3,000
-----------------------------------------
計 ¥35,500(+tax)

第5病日
体重:3.92kg 体温:39.0℃
上記に示した検査結果からFIPの可能性が高く、確定診断の為に腫大したリンパ節のFNA*を行いました。
その検体で細胞診検査とFIPVのPCR検査を行いました。動いてしまうため鎮静下で行いました。
*FNA(fine-needle aspirate):穿刺吸引細胞診と言われ、検査目的の組織を針で穿刺吸引すること。

院内スクリーニング検査

診察費用
再診 ¥500
血液検査 ¥8,500
外注検査(FIPパネル) ¥15,000
外注検査(細胞診) ¥8,000
FNA ¥3,000
超音波検査 ¥1,500
鎮静処置 ¥10,000
血管確保 ¥1,500
静脈点滴 ¥3,500
処方 ¥2,550
-----------------------------------------
計 ¥54,050(+tax)


第6病日
FIPVと確定診断

FIPV用のPCR

ムチアンの発注にあたって
ムチアンの錠型は飲み薬もしくは注射の2種類があります。飼い主様が投薬に対する不安や通院が可能だった事もあり注射を選択され毎日通院する事になりました。

診察費用
処方料 ¥1,800
-----------------------------------------
計 ¥1,800(+tax)


第13病日
体重3.7kg 体温39.4℃
食欲の低下が見られ、1週間前と比較して体重が220g減少

診察費用
再診 ¥500
処方料 ¥2,850
-----------------------------------------
計 ¥3,350(+tax)


同日
海外から注射薬が届いたので、届いたこの日から注射を行うことになりました。(ムチアン発注から1週間)
薬用量としては今回の症状からプロトコール(プラン)に従うと1kgあたり0.4mlの量で使用しました。
つまり今回は体重が約4kgなので1.6mlを接種する事になりました。
接種期間としては84日間毎日接種です。

接種部位は特に接種後に何か問題が起きた等の記載はありませんでしたが、念のために左右の腰部に交互に接種しました。

休薬基準は*アルブミン/グロブリン比(A/G比)が0.7を超えること。
また終了後に再発した場合は無料で薬を発注してくれるとのことです。

*A/G比:上の方にも記載しましたがグロブリンは免疫に関連する蛋白で、感染状態だとグロブリンは高くなりやすいので指標の一個に使っています。

正直注射は接種時に結構痛がるので保定者は注意が必要です。今回の子はとても良い子でしたが二人に保定をしてもらい注射を接種しました。薬価が高価なのでプレッシャーがかなりありますが落ち着いて接種すれば一般的な皮下注射と代わりありません。

また他の動物との接触を少しでも減らす為にお昼の休診時間に来て頂き接種しました。検査は必要最低限で行いました。

FIPウイルスは上記の通りアルコールに弱い為、処置後は院内全ての消毒をアルコールで行いました。

ムチアン1回目接種 0.4ml/kg s.c (1.6mlを皮下注射)

注射頑張ってます

診察費用(接種1日目)
診察、消毒、注射料 ¥1,000
-----------------------------------------
計 ¥1,000(+tax)

第14病日
食欲が少し出てきて活動性の改善が認められた
ムチアン2回目接種
診察費用
診察、消毒、注射料 ¥1,000
-----------------------------------------
計 ¥1,000(+tax)

第15病日
さらに改善傾向。
ムチアン3回目接種
診察費用
診察、消毒、注射料 ¥1,000
-----------------------------------------
計 ¥1,000(+tax)

第16病日
自分からご飯を要求するようになり走るようになった。
ムチアン4回目接種
診察費用
診察、消毒、注射料 ¥1,000
-----------------------------------------
計 ¥1,000(+tax)

第17〜24病日
ムチアン5〜12回目接種
診察費用
診察、消毒、注射料 ¥1,000 ×8
-----------------------------------------
計 ¥8,000(+tax)

第25病日
体重4.04kg
ムチアン13回目接種
血液検査と超音波検査を実施。
リンパ節や大腸の肥厚所見は良化傾向。リムサインは変わらず。

院内スクリーニング検査

診察費用
再診料 ¥500
血液検査 ¥8,000
超音波検査 ¥1,500
処方料 ¥1,600
-----------------------------------------
計 ¥11,600(+tax)

第26〜38病日
体調はとても安定していて元気だった頃と変わらない位元気でご飯もよく食べる。
ムチアン14〜26回目接種
診察費用
診察、消毒、注射料 ¥1,000 ×13日分
-----------------------------------------
計¥13,000(+tax)

第39病日
体重4.25kg
ムチアン27回目接種
血液検査と超音波検査を実施。
リンパ節の腫れはほぼ分からない位になり、大腸は正常の見え方に。
リムサインは変わらず。

院内スクリーニング検査

診察費用
再診療 ¥500
血液検査 ¥8,000
超音波検査 ¥1500
処方料 ¥2,400
-----------------------------------------
計 ¥12,400(+tax)

第40〜52病日
ムチアン28〜40回目接種
体調は何も気になることは無い位良い。
診察費用
診察、消毒、注射料 ¥1,000 ×13日分
-----------------------------------------
計¥13,000(+tax)

第53病日
体重4.36kg
ムチアン41回目接種
血液検査と超音波検査を実施。
体調は何も問題無く元気いっぱい。
リムサインは変わらず。

院内スクリーニング検査

診察費用
再診 ¥500
血液検査 ¥8,000
超音波検査 ¥1,500
処方 ¥2,400
-----------------------------------------
計 ¥12,400(+tax)

第54〜95病日
ムチアン42〜83回目接種
体調はかなり安定していたこともあり検査は行わなかった。
診察費用
診察、消毒、注射料 ¥1,000 ×42日分
-----------------------------------------
計¥42,000(+tax)

第96病日
ムチアン84回目接種
体調面では何も気になる事無いくらい元気。
腎臓のリムサインは変わらず。
血小板の数も測定出来る様になってきました。
初めの方に記載した通りA/G比が0.7を超えているのでムチアンの接種は終了。
84日間毎日の通院お疲れ様でした。

院内スクリーニング検査

診察費用
再診 ¥500
血液検査 ¥8,000
超音波検査 ¥1,500
-----------------------------------------
計¥10,000(+tax)

第103病日
ムチアン接種を終えた後の再診。
体調は全く問題なし。元気いっぱい。
FIPだった頃の臨床症状は全く無い。

院内スクリーニング検査

診察費用
再診 ¥500
血液検査 ¥8,000
超音波検査 ¥1,500
-----------------------------------------
計¥10,000(+tax)

G/A比(青)と体重(緑)

まとめ
腎臓のリムサインは執筆現在も消失しない事を考えるとこのままの可能性があります。
ただこれを診断する為には腎臓を生検しなければならない為、メリットとデメリット比が見合わないので経過観察としています。
以前致死率がほぼ100%だった病気がこのように現在何も服用せず元気に過ごせています。これは獣医医療の進歩に他なりません。
飼い主さんから歯石の相談、肥満の相談をされた時に目頭が熱くなりました。
少し前までは余命の事を考えていたのに、無意識の言葉だったと思いますがこれから一緒に人生を歩む事を考えてくれたと思ったからです。
この時に本当の意味でFIPに勝ったと思いました。獣医としてこんなに嬉しい言葉はありません。
今回の治療に携われた事は私の獣医人性の誇りの一つです。

その後
治療してから約1年が経ちました。
とても元気に過ごしている写真を見せてもらいました。
そういういつもの日常の写真を見せて貰えるのは本当に嬉しいです。
また現在は家族に猫ちゃんが1匹増え仲良くやっています。
猫ちゃん二匹はFIPにならず、すくすくと毎日幸せに走り回っています。

費用合算

ムチアン$359/本
使用本数27本
当時のレートは$1=¥119
合計¥1,150,000(端数切り)

初診からムチアン終了後の再診まで
合計¥231,100

-----------------------------------------
費用合算 ¥1,381,100(+tax)
(獣医療の費用は自由診療の為あくまで目安になります)

確かに現在はFIPの治療に対してかなりの費用はかかりますが、私が獣医になった時には絶対に助けられない病気の一つだったFIPが今は治療出来る様になった獣医療の発展を体感する事が出来、またこれから同じ病気の子たちに可能性を提示する事が可能になった事に心から感動しています。

https://journals.sagepub.com/doi/pdf/10.1177/1098612X221118761

2022 AAFP/EveryCat
Feline Infectious Peritonitis Diagnosis Guidelines

飼い主さんの声

ムチアンの効果に可能性があると先生からお聞きしましたし、ネットにも書かれていましたが、うちの子にはどうか分からなかったので、治療する前は期待と不安と心配が入り混じっていました。

ですが、ほぼ食欲がなく、1日中寝ていたのに開始した翌日に、確かに食欲が出て、動きがよくなったんです。3日にはごはんの催促をしてうんち(下痢)の回数が減って、駆け回りました。
なので、実は2日目には効いたのかな!って思いました。

みるみる元気になっていって、2週間後には病気になる前と変わらない姿になりましたが、それでも最後の注射が終わるまでは、不安がありました。

終わった後は、やって本当に良かったなって思いました。
100%助からない病気に勝ったんだと感動しましたし、感謝の気持ちでいっぱいです。

*治療には個体差や進行具合が異なりますので効き具合、効くまでの時間は個体差があります。

今はご家族の腕の中で幸せそうに寝ています

この場でnoteを執筆出来た事、執筆するにあたって飼い主さんのお力添えいただいた事、またここまで読んで頂いた読者様に感謝を申し上げます。

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