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工学部 大学院生へ ~研究が行き詰まるには訳がある~

大学院生から,研究の進め方について相談を受けることがよくあります.近年,大学院生も電話会議案内を発信できるようになり,大変助かります.電話では伝えにくい概念やアイデアも電子ホワイトボードごしの図やポンチ絵で説明することで理解が深まることはよくあります.私にとって,電話会議でペンタブレットは必需品です.言葉足らずの分は,グラフや絵を使って,必死でカバー.

なぜ私が学生から研究の相談を受けたりするのかというと,たびたび大学に出没するからです.といっても全然不審者ではありませんよ.きちんとしかるべき人にアポを取って行ってます.
ある時は共同研究者として,またある時はリクルート,企業の機械設計者としてゲストスピーカなどなど.
これまでお世話になった教授や研究室に行って,少しでも恩返しというか自分の子供世代に役に立てればと思ってのことです.もちろんコンプライアンスには十分配慮して,企業秘密などは一切明かせませんが,それでも大学院生に有益な話を一生懸命しているつもりです.

研究に行き詰る2つの特徴

研究に行き詰っている学生には,以下の特徴があるように思います.
  1.一人で悶々と悩んでいる.
  2.世の中の動向に対してアンテナが低い.

私がよく学生に話をする,これらに対する対処方法を示しますので,もし行き詰っていて悩んでいるなら,ぜひ参考にしてみてください.

1.一人で悶々と悩んでいる

生真面目な学生が陥りやすい,最も多い傾向かもしれません.共同研究先の企業担当者や研究室の指導教授の時間を割くのは忍びないと感じて,一人で悶々としている.
分からないとすぐに人に聞くというのは,論外ですが,1日じっくり考えた.一週間調べ物をしながら検討したにも関わらず全く対応策が見出せない.どうアプローチしていいのかさっぱり分からない.それが1ヶ月も続くようなら病気にならない方がむしろ異常かもしれません.とっとと周りの人に相談して下さい.
相談する時のポイントは,①背景/②現状/③問題点/④解決の方向性をしっかりと紙に書いて,分かりやすく説明できる準備をしっかりして下さいということです.
これがなくて,だらだらと言われても,下手をすると愚痴と受け取られてしまって,まともな協議というか回答を得られません.
お互いの時間を割いて相談したにもかかわらず,相手から直接的な回答が得られない場合もあったりします.でも,それ協議・相談は無駄じゃないんです.他の人に説明する資料を作成したこと自体が,自分の頭の中が整理されて,自己解決することが少なくありません.

また,1ヶ月以上も色々自分でやってみて数ヶ月後にやっぱり上手くいかなかったという報告をするパターン.
頑張り屋さんほど,実はこれが最も多くて,危険です.
何が危険なのかというと,時が経ち過ぎているという点です.趣味でやっているならいいです.でも仕事で,ましてや誰かと共同でチームで分担しているようなことは,必ず実施する前に
 1.○○に向かって
 2.△△というアプローチで
 3.□□を
 4.XXまでに

実施しますということを明言することです.
これを発信すると,
 ・周囲の共感が得られる
 (後でちゃぶ台をひっくり返されるリスクが減る)
 ・アドバイス(アイデア)や協力が得られる
 ・方向修正が楽

といったいいことだらけです.

2.アンテナが低い

社会課題を解決するというミッションにエンジニアリングを活用するんです.ということは,どういう社会課題があって,世の中(各国政府)がどういった施策を講じているのかを知ることは,自身の研究活動・計画を立案するのに必要な下調べなのです.
日本で言うと,経産省や国交省・厚労省・総務省などのホームページを眺めてみると非常に興味深いコンテンツ(○○白書,□□プロジェクトなど)がたくさんあります.

<学会>

大学院生であれば,自分が研究する分野での学会に最低でも1つくらいは入会して下さい.例えば,機械系であれば,日本機械学会.そのホームページから論文を読むこともできます.図書館に行ったり,教授に依頼して学会論文の購入依頼なんてしなくても読めてしまうのです!なんてありがたい!これを利用しない手はないです.YouTubeを見るのもいいけど,たまには頑張って目を通してみましょう.油圧関連であれば,日本フルードパワーシステム学会がおすすめです.私はここの論文を読む(見る?)のが好きです.さらに,科研費などにも目を通しておいてほしい.

<コンペ>

様々なコンペがWebに掲載されている.例えばKaggleDrivenDataSIGNATEなど.
こういうコンペの存在を知っているだけでも,みんな頑張っているんだなと自分のモチベが下がった時の励みになります.

<エンジニアリング情報サイト・コミュニティ>

あとは,情報共有サイト:GitHubQiitaZennなどなど多くの優れたエンジニアたちが有益なモデルやプログラムファイルをアップしてくれています.敬意と感謝を込めて拝見させて頂きましょう.今のご時世,情弱というのが最もハイリスクです!

自分と同じ考えや似たような研究,アプローチで困っている人は絶対にいます.それを自分だけしか考えていないなんていうことは絶対にありません.一人で悩まずに,みんで突破すればいいんです.えっ?成果を独り占めにしなきゃ気が済まない?このインターネット時代,もはや無理です.ネットワーク(異分野の人とのコミュニケーション)重視です.

いつかは,有益な情報をアップする側に回ることを目指して,目の前の課題解決に仲間と一緒に楽しんで取り組みましょ.


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