9/22開催【ドコモベンチャーズピッチ】ヘルスケア最前線~医療データの利活用に向けた取組みの最前線をご紹介~
皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2022年9月22日(木)に行ったイベント、
【ドコモベンチャーズピッチ】ヘルスケア最前線~医療データの利活用に向けた取組みの最前線をご紹介~
についてレポートしていきたいと思います!
本イベントでは、ヘルスケアに関連する事業を展開し、新しい事業に取り組まれている注目のスタートアップ5社をお招きし、ピッチをしていただきました。
新規事業開発を担当されている方
ヘルスケア事業動向に興味のある方
スタートアップへの投資や事業連携をご検討されている方
医療データ活用、PHRに興味のある方
既存産業のアップデートを目指す方
にぜひお読みいただきたい内容となっております!
以下、各スタートアップにピッチをしていただいた内容をご紹介します!
■1社目:からだポータル株式会社
1社目は、からだポータル 井内 伸一様にご登壇いただきました!
<からだポータル株式会社 代表取締役 井内 伸一 様>
・からだポータル社の事業内容
からだポータル社は、大阪にある社会医療法人愛仁会出身のメンバーで組織されており、医療分野で顧客のニーズに合わせたPHR (=Personal Health Record (個人健康情報管理)) の開発とデータ活用を行っています。ショッピングセンターなどで健康イベントを開催し、地域住民の健康維持に貢献しています。
・PHRの課題
現在のPHRにおける課題は
の2点が挙げられます。
実際にPHR事業者を対象にしたアンケートでも、ビジネスモデルやマネタイズ面での難しさを感じる事業者が多いそうです。
その背景には、PHR事業者の顧客となるそれぞれの医療機関や診療所、治療によって、必要な機能や管理したい項目が違うという事情があります。多くの医療機関のニーズを網羅したサービスの開発は困難です。
・モジュール型PHRによる個別開発
そこで、からだポータル社はモジュール型PHRという個別に開発されたPHRを提供しています。
からだポータル社が提供するPHRの各機能をベースに、顧客となる医療機関などの企業ごとのニーズに合わせることにより、拡張性のあるPHRを実現しています。
からだポータル社が所有する基本機能には、
があります。
これらを組み合わせて、PHRを顧客に合わせて開発し、ビジネス拡大を検討しているそうです。
・データベースは一本化
からだポータル社は、個別に開発したPHRから得られた利用データを、データベース上で一元管理しています。そのデータは、主にマーケティングに活用されています。
現在は、医療機関や企業などが、利用者に提供したいコンテンツを個別に提供するコンテンツマーケティングサービスを構築しているそうです。
・実績
からだポータル社が実施したショッピングセンターにおける健康イベントでは、698名の方がPHRに登録しました。また、2017年8月〜2020年2月の調査実施期間内における離脱者はわずか2名と、高い継続率を達成しました。井内様は、離脱者が少ない理由について、登録者の間で健康維持を助け合うコミュニティのようなモノが生まれているからだと分析しています。
2020年のWeb上での健診結果配信サービス開発・稼働以降、2022年に入ってから976名の方が登録しています。登録者数は2021年から急増しており、これはニーズに合わせて機能を追加するなど、調整をした結果だと捉えています。
・今後について
クライアントからの問い合わせを発端とした案件獲得が多くなっており、現在も個別の相談をいくつか受けているそうです。
今後は受託開発を続けながら、他システムとの連携を強め、個人の健康状態に合わせて必要な情報を提供できる健康情報提供プラットフォームを構築していきたいとのことです。
■2社目:株式会社HRデータラボ
2社目は、HRデータラボ 三宅 朝広様にご登壇いただきました!
<株式会社HRデータラボ 代表取締役 三宅 朝広 様>
・HRデータラボ社の事業内容
HRデータラボ社はストレスチェッカーに関するサービスを提供・運営しており、2017年のサービス開始以来約4,600社に導入されています。
・ストレスチェッカーについて
ストレスチェッカーとは、用意された質問に回答することで、個人のストレス度合いや、仕事上でのストレスの原因、ストレスによっておこる心身の反応などを知ることができるサービスです。また、部署ごとなどで、集団分析を行うこともできます。
ストレスチェックは、労働安全衛生法の改正により、2015年12月から50人以上の事業場で検査を行うことが義務づけられました。
これらは全て厚生労働省が公式に提供しています。
事業者がストレスチェックを行う場合、これらの厚生労働省から提供されているものを使う必要があります。
しかし、これらのツールを使うためには、サーバーを立ち上げたり、必要なシステムを構築したりする必要があり、事業者の負担となります。
そこでHRデータラボ社は、厚生労働省が提供するツールを用いた、簡単なストレスチェックツールをSaaSを介して提供しています。
・HRデータラボ社が提供するストレスチェッカーについて
HRデータラボ社は、
の3つのプランを用意しており、無料プランは業界唯一、Web代行プランと紙プランは業界最安値となっています。
全国で約88,000社がストレスチェック義務化の対象となっている中で、HPデータラボ社は市場のシェアの5%ほどを占めています。さらに類似のサービスを提供する企業の導入数と比較すると、約3〜4倍にもなっています。
・ストレスインデックスを用いた分析
HRデータラボ社は、ストレスチェッカーを通じて、企業に人的資本経営における定量的評価指標となる「ストレスインデックス」を提供しています。
約4,600社から収集した膨大なデータを解析し、そこから得た知見を顧客に提供することで、顧客にとってより信頼性のあるサービスを実現しています。
従来の厚生労働省が提供するストレスチェックでは、自社のデータを全国平均と比較することしかできませんでした。たとえば、IT分野の企業の数値を、環境や働き方が異なる他の業界の数値と比較しても、その数値が高いのか、または低いのかを知ることができませんでした。
HRデータラボ社が提供するストレスチェッカーは企業にとって様々な切り口から意味のある比較をすることができるサービスになっています。
■3社目:株式会社Zene
3社目は、Zene 井上 昌洋様にご登壇いただきました!
<株式会社Zene 代表取締役 井上 昌洋 様>
・Zene社の事業内容
Zene社は、「ゲノムをより身近に、あたりまえの世界に。」というVisionを掲げて活動しています。メンバーはヤフー株式会社の出身者で構成されており、ゲノム解析分野の黎明期から活躍しているメンバーが集まる、ゲノム解析・関連法規に精通した国内屈指のスペシャリスト集団です。
・Zene360について
Zene社が提供するZene360は、自宅で簡単に遺伝子検査を受けられるヘルスケアサービスです。国内最高精度のゲノム解析技術が活用されており、遺伝子から将来なりやすい病気を知ることができるサービスになっています。
実際のゲノム解析ではポリジェニックスコア(※)を算出しており、Zene360の解析アルゴリズムの精度は、一般向けの遺伝子の約3倍になると井上様は説明されていました。
またZene社は、ゲノム解析だけでなく、その後の生活習慣を見直すための提案までを行っており、病気の予防に貢献しています。
・健康保険組合向けに販売
自身の体質や健康状態を知るサービスに興味を示すのは健康に気を遣っている人が中心で、本当にそうしたサービスを必要とする人は関心を示さないというのが現状です。
そこで、Zene社はZene360を健康保険組合向けに販売しています。そして健康保険組合がサービスを利用すべき人に利用を促すことで、解析の機会を提供しています。
・サービスの流れ
ユーザーは、以下のような流れでサービスを利用することができます。
こうすることで、ゲノム解析結果とそれに合わせた予防プログラムの提案を受け取ることができます。
実際に多くのユーザーが、「解析結果が行動を改めるきっかけになる」「将来の健康を今まで以上に考えるようになった」と感じているそうです。
・データ活用について
Zene社は、健康保険組合に所有する健康情報を提供してもらい、それらをZene社が提携する外部パートナーや研究機関と協力して研究を進めています。今後もゲノム情報をもっと多くの場面で活用したいと考えているそうです。
・個人情報保護について
一方でこうしたゲノム情報の収集・利用などには、個人情報に関する問題があります。しかしZene社は、個人情報の保護についても十分な備えがあるとしています。
ルールを明確化し、個人情報を産業創出のために正しく活用することが重要であるとした上で、遺伝子検査にまつわる制度について、
の4つの観点を重視しています。
また、生命化学指針についても見直しが進んでおり、
といった点が変更されています。
Zene社は、制度の見直しに合わせて、そのルールに則ってゲノム情報を活用していきたいとしています。
■4社目:株式会社Yuimedi
4社目は、Yuimedi グライムス 英美里様にご登壇いただきました!
<株式会社Yuimedi 代表取締役社長 グライムス 英美里 様>
・Yuimedi社の事業内容
Yuimedi社は、医療・ヘルスケアデータの利活用を促進し、医療の質向上等を目指す、ノーコード・オフラインの医療データ特化型クレンジングツール「Yuicleaner」の開発・運営を行なっています。
医療機関に蓄積されている診療情報等を代表とする医療・ヘルスケアデータは、フォーマットが統一されておらず、データを利活用しづらいという課題があります。
それらのデータを独自の変換技術によって整理し、分析できる状態にするツールが「Yuicleaner」です。
ミッションに「データで医療・ヘルスケアの世界を結う」を掲げ、医療・ヘルスケアデータ流通のインフラを目指しています。
・医療リアルワールドデータ
医療リアルワールドデータ (以下、医療RWD) とは、日常の実臨床の中で得られる医療データのことを指します。実験で集められるようなデータではなく、電子カルテに記録されている、
などの情報のことです。
医療RWDは、製薬会社や保険会社などで活用されており、さらなる利活用により、
などが期待できます。
・データが限られている
医療RWDに多くの期待がかかる一方で、データを利活用したい人がすぐに利用できる医療RWDデータは限定的で、実在する膨大な医療RWDに対し、多くの機会損失が生じています。
医療RWDの利活用が停滞する原因には、
などが挙げられます。
また、すぐに活用できるデータレジストリを作成するにも、多大な人件費を要します。
・Yuicleanerについて
そこで、Yuimedi社では、データの信頼性が高い医療RWDレジストリを簡単に作れるツール「Yuicleaner」を提供しています。
Yuicleanerは、医療データに特化したAIによるノーコードのデータクレンジングソフトウェアで、以下のような特徴があります。
特徴1:自動でデータをクレンジング&構造化
テキストからデータのみを抽出したり、病名のみを抽出したりするなど、ニーズに合わせて自動でデータをクレンジングします。他にも、医学的表記のわずかな違いを自動で修正する機能を搭載しています。
特徴2:医学的な解釈を伴うアルゴリズムによるデータ解釈のサポート
Yuimedi社と医師が共同で開発した独自のアルゴリズムを元に、自動でデータの論理チェックを行います。また、膨大なデータの中から、必要な情報を瞬時に選定する機能を現在開発中です。
特徴3:データ変換プロセスを可視化することで改ざんを防止
レビュー機能が搭載されており、どのようなプロセスで変換されたのか、なぜこのようなデータになったのかが分かるようになっています。また異常値が確認された場合は、その内容を一目で確認することができます。
これにより、医療RWDのデータレジストリ作成のコストを削減しながら、質の高いデータレジストリを作成することができます。エンジニアでなくても簡単に条件を設定し、クレンジングできるような分かりやすいUIになっていることもポイントです。
・今後について
グライムス様は、医療RWDの利活用拡大の次のステップとして、医療RWDのネットワークを構築したいとおっしゃっていました。そして、そのネットワークを介して、利用者がより簡単にデータソーシングをできるようにしていきたいと考えているそうです。
■5社目:株式会社テックドクター
5社目は、テックドクター 湊 和修様にご登壇いただきました!
<株式会社テックドクター 代表取締役 湊 和修 様>
・テックドクター社の事業内容
テックドクター社は、大量のデータを臨床研究や医療現場で活用しやすくすることを目指し、デジタルバイオマーカー(※)開発プラットフォームである臨床研究データ解析SaaS「SelfBase」とメンタルヘルス向けアプリケーション「SelfDoc.」の2つのソリューションを開発しています。
・デジタルバイオマーカーの開発
テックドクター社は、デジタルバイオマーカーの中でも、ウェアラブルデバイスを活用したコンシューマー向けのデジタルバイオマーカーの開発に取り組んでいます。
上記の条件を満たすデバイスを活用し、ロングタームのデータから、病院の外での変化や状態をデジタルデータ解析しています。
しかし、デジタルバイオマーカーの開発を進めていく中で
といった部分に課題を感じたと言います。
・SelfBase
そこでテックドクター社は、大量のデータを収集/解析しデジタルバイオマーカー開発を支援するサービス、「SelfBase」を提供しています。
ウェアラブルデバイス・IoTデバイスとヘルスケア関連データや健診データを組み合わせて、ビックデータやアナログデータなどを元に、SelfBase上で解析できるようになっています。現在は、国内大手製薬企業8社が立証研究にSelfBaseを活用しているとのことです。
他にも、ヘルスケア関連商品や医療機関などでも研究開発に活用されています。SelfBaseには、
といった特徴があります。
・事例
上の図は、医療機器とコンシューマデバイスの心拍数の解析結果を比較したものです。右の青色で表示されているものがHolter心電図での解析結果で、左の赤色で表示されているものがGoogleのFitbitでの解析結果です。
この図からは、解析結果がずれているところがあること、一方で全体の傾向を捉えることができていることも見て取れます。
コンシューマデバイスは、被験者の負担がかなり小さいため、長期間に渡り継続して装着しやすいというメリットがあります。
他にも、血中酸素濃度や睡眠ステージなどでも比較しながら、どのような場面でウェアラブルデバイスを元にしたデジタルバイオマーカーが活用できるのかを検討しているそうです。
・ウェアラブル外来:「SelfDoc.」
テックドクター社は、デジタルバイオマーカーの開発だけでなく、医療現場での活用にも取り組んでいます。それが、ウェアラブル外来「SelfDoc.」です。
Fitbitに蓄積されたデータを主治医に共有することで、診療時にそのデータを元に、患者にアドバイスすることができます。
最終的には、医療現場とソリューションをデータで繋ぎ、ウェアラブル外来全体を取り巻く仕組みを作っていきたいそうです。
まとめ
今回は、ヘルスケア領域でデータの利活用に関連する代表的な5社のお話をお聞きしました。
ヘルスケア領域でのデータの利活用が進むと、より多くの病気の早期発見が可能になります。また業務の効率化により医療従事者の負担も軽減することができ、医師と患者の双方にメリットがあります。
今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます。
引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!
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