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5/24開催【ドコモベンチャーズピッチ】地球を守るクライメットテック~持続可能な世界を目指すテクノロジー~
皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2022年5月24日(火)に行ったイベント、
【ドコモベンチャーズピッチ】地球を守るクライメットテック~持続可能な世界を目指すテクノロジー~
についてレポートしていきたいと思います!
本イベントでは、クライメットテックに関連する事業を展開し、新しい事業に取り組まれている注目のスタートアップを3社をお招きしピッチをしていただきました。
環境課題を解決するスタートアップに興味のある方
気象関連のビジネスに興味のある方
SDGs関連の投資先を探している投資家の方
大企業とスタートアップの共創を模索している方
にぜひお読みいただきたい内容となっております!
以下、各スタートアップにピッチをしていただいた内容をご紹介します!
■1社目:Sustineri(サスティネリ)株式会社
1社目は、Sustineri 針生様にご登壇いただきました!
<Sustineri株式会社 代表取締役 針生 洋介様>
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・Sustineriの事業内容
Sustineri社は気候変動問題に関する事業をしています。
気候変動問題は国家と企業にとっての重要な課題の一つであり、その課題への取り組みは世界中で行われています。日本も各国同様、2050年までのカーボンニュートラルの実現という目標を掲げており、それに向けて企業も動き始めています。
こうした背景状況を踏まえて、Sustineri社がどのような事業を展開しているのか詳しく見ていきます。
カーボンオフセット
Sustineri社は「カーボンオフセットクラウド」を開発し、2022年の5月にβ版をリリースしました。
まずカーボンオフセットという言葉は、企業活動や日常生活で排出されるCO2などの温室効果ガスを、他の場所で削減・吸収活動をすることによって埋め合わせする仕組みのことを指しています。
具体的には、企業がCO2を削減するプロジェクトに資金を提供し、プロジェクト側からCO2削減価値分(クレジット)を受け取ることで、企業が削減困難なCO2分を代替的に削減するという形式になっています。Sustineri社はこの仕組みをクラウド上で行おうとしています。
同クラウドでは商品やサービスを販売・予約するウェブサイトやアプリにAPIを導入することで、CO2の可視化とカーボンオフセットを実現しています。現在のサービスはβ版ですが、すでに数社の企業との連携が決まっています。
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利用のイメージとしては、
・ネット上での商品購入に伴う宅配、物流のサービス
・フライトなどの人の移動を伴うサービス
・ネット自動車保険
などが挙げられます。CO2の削減量とそれにかかる費用をSustineri社が計算して表示し、その費用を企業か利用者のどちらかが負担することを選択できます。
日本においては、エンドユーザー向けに商品やサービスごとのCO2削減量を明示するサービスは、他の企業があまり取り組んでいない分野となっているそうで、そこがSustineri社の強みにもなっているそうです。
カーボンオフセットクラウドを使用するメリット
Sustineri社のクラウドを導入することにより、脱炭素社会の実現に向けた取り組みのハードルを限りなく下げることが可能です。
具体的な特徴としては
素早く簡単に導入することが可能
CO2削減量の計算に関連する専門的な知識が不要
リアルタイムでCO2の計算ができる
例えば1Kgの荷物配送などの少量でもカーボンオフセットが可能
といった点が挙げられます。さらには導入によって企業のイメージアップやロイヤリティの向上などが期待できます。
またCO2削減量は、β版では針生様ご自身の深い知見と、国際的なガイドラインに基づいて計算していますが、本アプリのリリースまでには第三者による監査を導入し、正確性を担保したいとおっしゃっていました。
針生様が行ったアンケート調査によると、約4割の方が少しの費用負担でCO2削減に貢献できるならしたい、と回答されたとのことでした。サービスが公開されれば、CO2削減への一般の方の意識もさらに上がることが期待できそうですね。
■2社目:レラテック株式会社
2社目は、レラテック 小長谷様にご登壇いただきました!
<レラテック株式会社 代表取締役 小長谷 瑞木様>
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・レラテックの事業内容
レラテック社は風量発電所を導入する際に行う、風況調査を実施する神戸大学発の研究開発型ベンチャー企業です。具体的には風況調査として、神戸大学の研究成果を元に、発電量評価と風車設計に関する風条件評価の2つを行っています。また産学連携(神戸大学と民間事業との連携)に力を入れており、気象とICTをかけ合わせた事業を通じて社会貢献しています。
国内状況と市場評価
政府は2050年のカーボンニュートラルに向けて、グリーン成長戦略を打ち出しています。特に洋上風力発電についてはその成長戦略の14分野のうちの1つであり、日本が四方を海に囲まれていることを踏まえて、
大量導入の実現性
コスト低減
経済波及効果
などが期待されています。矢野経済研究所の調査によると、洋上風力発電の市場は向こう10年間で約460倍になるとされています。
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株式会社矢野経済研究所(2020)洋上風力発電市場に関する調査
また洋上風況調査の市場についても、風況調査費用を風力発電市場全体の5~10%と試算した場合に、2030年には500億円以上の規模になること予測できます。
なお、日本は四方が海に囲まれているものの、現時点では洋上風力発電を設置できる海域は限られていると言われています。では、風況調査のニーズは少ししかないのでしょうか?
答えは「NO」です。それは、今後の技術の発展で、領海を中心とした浅瀬以外の大陸棚部分に海底に風車を固定しない「浮体式」の洋上風力発電が設置されることが期待されているからです。上で紹介した市場の拡大には、浮体式の洋上風力発電も含まれています。そこで、知見の少ない海域が対象となることから、レラテック社のような高度な専門知識をもつ会社が必要となるのです。
レラテック社による風況調査
洋上風況調査は、1事業で2億円から20億円程度の高額な費用がかかります。しかし、洋上風力発電事業は数千億円規模となることから、実施可否を慎重に判断するためには極めて重要なプロセスと言えますね!
調査方法としては
風況観測
風況シミュレーション
風況解析
という三段階で行われており、それぞれの調査には専門的な技術が用いられています。
風況観測についてはドップラーライダーというリモートセンシング機器を用いて測定しており、特に近年は、スキャニングライダーやフローティングライダーという洋上での風況を測定する機器が使用され始めています。新しい技術につき精度検証の実績やガイドラインが必要とされていますが、そうした検証は神戸大学の研究の一環として行っています。
欧州の風況調査市場は日本よりも拡大していますが、日本特有の台風や乱流といった気候現象に対する分析が可能な点がレラテック社の強みです。そして洋上風力発電の適地を探すのも事業の一つです。販売相手は大手電力会社を含む発電事業を実施する会社が中心で、海外プレイヤーが日本市場に注目していることも近年見られる傾向です。
環境にも優しい洋上風力発電の導入が日本で進むのが楽しみですね。小長谷様は研究拠点である青森県から本イベントに参加してくださいました!
■3社目:株式会社Atomis(アトミス)
3社目は、アトミス 浅利様にご登壇いただきました!
<株式会社Atomis 代表取締役CEO 浅利 大介様>
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・アトミスの事業内容
アトミス社は素材ベンチャーで、具体的には1997年に京都大学高等研究院iCeMS拠点長/特別教授の北川進教授によって発見された新素材のPCP/MOF(多孔性配位高分子)を扱っています。
多孔性配位高分子とは
この素材は立方体が組み合わさった3次元の形態をしています。約13万種作られた高分子の用途として貯蔵、分離、触媒、光機能などがあり、幅広い産業界で利用可能です。
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アトミス社はこの高分子を安く作って販売することをベースにしつつ、大企業が狙わないようなアプリケーション開発を行っています。
例えば高分子の貯蔵機能を利用することで、細孔内にガスを整列して貯蔵することが可能になり、従来の貯蔵方法より大幅にコンパクトすることに成功しました。現在では高圧ガス容器の実証実験を行って一般利用に向けて動いています。
この貯蔵製品にはIoTモジュールを搭載することで、よりロスのない管理が可能になりました
さらにこの貯蔵方法により、エネファーム※を併せて使用すると、現在の中央集権的な送電システムの代替となることができると考えられています。
※エネファーム(家庭用燃料電池)
環境問題への応用
アトミス社の製品によるガス供給網により、移動コストなどの削減やメタンガスの実用的な利用、水素ガスの利用が達成されれば、数千万トンのCO2削減につながると期待されています。
メタンガスについては、現行の技術だとパイプや大規模な冷却が必要ですが、アトミス社の製品を使うことにより固体での輸送が可能になりました。この輸送についてもサプライチェーンとして、新たに供給網を設置するのではなく、空トラックや宅配便のトラックを利用して運搬することを考えています。
また多孔性配位高分子の用途の一つである分離・触媒機能を用いてCO2をメタノールに変換させることが可能です。大企業は分離させることにフォーカスし、二酸化炭素を地中に埋めている場合が多いですが、アトミスは触媒反応までを行い、最終的にはエネルギーや素材としてCO2を用いることを検討しています。
空気からCO2を取り出す技術も様々な企業が取り組んでいますが、現行の企業が開発しているのは大型ファンによる二酸化炭素の抽出がほとんどです。そうした中でアトミス社は既存の小型換気ファンを利用してメタノールを合成・販売することを考えているそうです。
新しい素材を使うことで、これまでとは異なる様々なアプローチが可能となるのですね。製品化が待ち遠しいですね。
まとめ
今回は、クライメットテック関連の代表的な3社のお話をお聞きしました。
今後の環境問題に対するアプローチが大きく変わる可能性のあるシステムや製品、サービスの数々には、2050年のカーボンニュートラルを現実のものにする力があると感じました。
特に各スタートアップが、企業が実施していないような部分に入り込んで潜在的な市場の顧客を広げていく姿を見ると、今後数十年でのクライメットテック市場での活躍を期待せずにはいられませんね!
今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!
引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!