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6/28開催【ドコモベンチャーズセミナー】フランス最大のオープンイノベーション・カンファレンス「VIVA Technology」の速報レポート

皆さんこんにちは!ドコモ・ベンチャーズです。
今回は、2022年6月28日(火)に行ったイベント、

【ドコモベンチャーズセミナー】フランス最大のオープンイノベーション・カンファレンス「VIVA Technology」の速報レポート

についてレポートしていきたいと思います!

「VIVA Technology」はフランスのエコシステムの特徴でもある、コーポレート起点でのオープンイノベーションの文脈が特に強いヨーロッパ最大のテックカンファレンスです。

  • 海外のスタートアップトレンドにご興味のある方

  • 欧州・フランスのスタートアップ・エコシステムにご興味のある方

  • 海外のスタートアップカンファレンスへの出展や参加をご検討されている方

  • 海外マーケットへの進出をご検討されている方

  • 新規事業、オープンイノベーション等をご検討されている方

にぜひお読みいただきたい内容となっております!

本イベントでは、実際にパリに赴き、調査を実施したRouteX Inc. COOの塚尾氏にご登壇いただきます。

<RouteX Inc. COO 塚尾 昌浩様>

RouteX Inc. 塚尾 昌浩様

<プロフィール>
RouteXにて国内外のエコシステムにおける研究開発領域のスタートアップを中心とした調査を重点的に推進し、技術を切り口としたイノベーション創出に関するトピックで事業推進を行なっている。
特に直近ではヘルスケア、MaaS、Agri Tech分野の探索に注力。
また、外部イベントでの登壇やアクセラレーションプログラムでのメンタリング等の経験をもつ。
前職では日産自動車株式会社にて機械設計エンジニアとして、ハイブリッド車のバッテリ開発・プロジェクト推進業務に従事。
京都大学大学院工学研究科修了(化学)。

RouteXの活動

RouteXではスタートアップ・エコシステムにおける”情報の非対称性”を無くし、スタートアップ・エコシステムに関わる全ての領域のプレイヤーを支援する事を目標に掲げています。

特に複数のスタートアップ・エコシステムを並行分析する事により抽出したベストプラクティスやネットワークを活用し、起業家だけでなく、投資家や政府関係機関等の様々なプレイヤーの新規事業開発や事業拡大を支援しています。

VIVA Technologyとは何か

「VIVA Technology」(通称「VivaTech」)は、フランスの経済誌「Les Echos」および広告代理店「Publicis Groupe」が主催する年1回のオープンイノベーション・カンファレンスです。2022年は6月15~18日に開催され、大盛況のうちに幕を閉じました。

VIVA Techのイメージ映像

今年は3年ぶりの対面開催となりましたが、その模様は無料でオンライン視聴することもできました。

規模は非常に大きく、今年は来場者が9万人を超え、世界最大のカンファレンスとなりました。フランス政府が開催をバックアップし、複数企業が登壇するセッションが多いことが特徴です。

また開催日程は2部制で前半の3日間はビジネスプレイヤー向け、後半の1日は一般の来場者向けとなっていました。そのため、前半は英語、後者はフランス語で開催されており、現地の人にも発信するというオープンイノベーションな気質がうかがえます。

会場は総面積45,000m2という3日間かけてもまわり切れないような広さで、特に対面での開催という強みを生かして、最新のハードウェアを体験できる企業ブースが多く設置されていました。

Viva Tech 会場の様子

スタートアップ・エコシステムにおける政府の存在はとても重要であり、特にフランスはその介入が大きなエコシステムとなっていますが、VIVATechにおいてもフランスのマクロン大統領がFrench Techの次期目標を発表するなど、参加者に向けてその方針を発信する場として機能していました。

VivaTechでは、大きく分けて以下の6つの分野が注目トレンドとして発信されていました。
  1.Race to Net Zero Emissions(CO2排出実質0の達成)
  2.Future of Work(未来の働き方)
  3.Web3 & Metaverse(Web3とメタバース)
  4.Mobility Rebound(モビリティ分野の再構築)
  5.Inclusion is a Mindset(若年層・女性の社会参画)
  6.European scale-ups(欧州の規模拡大)

ここから、太字の3分野について紹介します。

注目トレンドその1 「グリーンテック」

6つの注目トレンドとして紹介された1つ目、Race to Net Zero Emissions(CO2排出実質0の達成)、いわゆる「グリーンテック」です。EUは気候変動の対策に注力しており、関連するスタートアップも多く存在しています。

ここからは、今回登壇した企業の中でも注目したい数社と、興味深いブースを紹介します。

1つ目に紹介するのは「Back Market」という2014年創業のユニコーン企業です。この企業は電子機器やガジェットなどの中古品を再生して販売するというビジネスモデルを展開しており、未上場企業でありながらすでに16カ国で事業を展開しています。

登壇の中でBack Market社は、顧客の購入意思決定が国や地域によって異なることを発信しました。EU圏の国では環境起点、環境に良い製品を選ぶことが購買意欲に影響しうるのに対して、アメリカでは低価格が購入の主要因であり、比較的環境意識が低いことを指摘しました。消費者の環境意識に紐づいたグリーンテックの出現がヨーロッパでは先行して期待できそうです。

2つ目は「Watershed」という企業で、シリコンバレー発のスタートアップです。企業におけるCO2排出削減の効果的なプログラムを提供しています。

特に注力しているのがカーボン・オフセットに関する企業間競争です。カーボン・オフセットとは、環境省の説明を引用すると、

カーボン・オフセット
「日常生活や経済活動において避けることができないCO2等の温室効果ガスの排出について、まずできるだけ排出量が減るよう削減努力を行い、どうしても排出される温室効果ガスについて、排出量に見合った温室効果ガスの削減活動に投資すること等により、排出される温室効果ガスを埋め合わせるという考え方」

環境省

という意味の言葉で、Watershed社は企業が温室効果ガスの削減を目指す際、数値規制に対する調和性と活動の透明性を強みとしています。

続いて「Low Carbon Park by EDF」というブースを紹介します。

このブースではフランスの大手電力会社のEDF社と連携するスタートアップの「Bioo」やEDF社からスピンアウトした農業関連のCO2排出を可視化する「ACTEON FARM」に関する展示が行われていました。

特に「Bioo」については、植物発電技術をもとに、触れると電球が光る照明や音声を発するデバイスを販売するto C向けビジネスを2015年から展開しています。

グリーンテック関連の展示としては他にも

  • Googleの研究機関Xが主導し、温度・湿度等の管理により最適な生育をおこなう農業ロボット

  • La Grangette」というフランス企業が開発した、キッチンで葉物野菜を育てる家電

  • 同じくフランスの「Ynsect」という、ミールワームを原料とした食品や家畜用餌を提供する企業によるワームの展示

など、環境問題に対する多種多様なソリューションが提供されていました。

注目トレンドその2 「モビリティ」

車やバイク、ヘリコプターといったモビリティも、昨今はグリーンテックと深い関係のある分野となっています。VivaTechでは、カーボンニュートラルの達成や都市部での渋滞、コロナによる利用者の動態変化に応じたソリューションを提供するモビリティが紹介されていました。

モビリティ展示

特にヨーロッパでは、モビリティについて単に環境に配慮するだけではなく、都市景観への配慮という観点が含まれていることが特徴の一つです。

多くの企業が展示を行っていた中で、RouteX社が注目した企業として、「TUC.technology」を取り上げたいと思います。

この企業は自動車の足回り機構USB型のプラグを通じて、自動車をモビリティデバイスへと変換するサービスを始めようとしています。この仕組みは自動車のアップデートを容易にしたり、製品開発コストを下げたりすることができるとされています。まだシード段階のスタートアップですが、船舶や航空機への応用も示唆するなど、これからの成長に期待が持てる企業です。

注目トレンドその3「Web3 / メタバース」

VivaTechではWeb3やメタバース関連の展示も多く設置されていました。Facebookから社名変更した「Meta」もブースを出しており、体験型の製品紹介を行っていました。内容としては新たな製品を公開するというよりは、既存の製品の紹介に留まっていた印象です。

そしてマクロン大統領の登壇を除けば最も盛り上がったセッションといっても過言ではないのが、暗号資産取引所を展開する「BINANCE」のCEOと「Ethereum」開発者の対談でした。BINANCEは自社ブースを出展していましたが、そこでのサービスの細かい説明というより、暗号資産やNFTについて周知することが目的のように見受けられました。

別ブースでは、仏ファッションブランドの「LVMH」がWeb3やメタバースを使用した先進的な展示を行っていました。LVMHはファッションブランドにおいて課題となっている、ブランドに対する顧客意識の変化や偽造品対策としてメタバースを使用する利点を、実際にHMD(ヘッドマウントディスプレイ)をつけて購買体験をしてもらうことで、参加者に体験の機会を提供していました。

また著名企業の重役が登壇したセッションでは、分散型のWeb3的な世界と中央集権的なWeb2の世界を対比した議論がなされたり、Web3やメタバースから生まれるイノベーションを阻害しないように、現時点では運用に強い制約を設けない方がいいという意見が出たりしていました。

最後に、メタバース関連で興味深い企業をご紹介します。企業名は「Aquaverse」で、海水を濾過し有機物を食べる海綿動物の習性を生かし、マイクロプラスチックや重金属等、水中の汚染物質を除去する海綿タンクを設置する事業を行っています。将来的な製品販売を見越した利益の2%をNFT所有者に寄付するというシステムを採用しています。

さらにメタバース的な要素について触れると、Aquaverse社は仮想通貨エルロンド(Elrond/EGLD)の技術を使ったトークン$SPONGESを発行しており、所有者は「ガーディアン」として海綿養殖場をはじめとしたプロジェクトへの投資の他、将来的に実装されるゲームでの利用ができる予定になっています。

注目トレンドその4「スタートアップ・コンペティション」

VivaTechでは欧州内の優れたスタートアップを紹介する「Next Unicorn Awards」という場が設けられ、6つの企業が受賞しました。

Next Unicorn Awards 受賞企業6社

多くがユニコーンとしての成功が確実視されており、諸外国でサービスを展開していることが特徴です。その中でも「Luko」と「Tibber」の2社をピックアップして紹介します。

まずフランス企業のluko社は、顧客直販モデルで住宅保険をオーナーに提供するインフラテックの企業です。フランス国内だけではなく、スペインやドイツへの進出の中で競合企業とどのように差別化をしていくのかが問われています。

そして2つ目のtibber社は、環境に優しく安い電力利用を消費者に提供することを目的とし、アプリとハードウェアを一般向けに提供しています。2016年にノルウェーで設立された企業で、電力の自由化が進むEUで、tibberが有するマーケットプレイスもその需要の高まりの波に乗って利用者が増加傾向にあります。

今後の展望

ざっとではありますが、VivaTechで収集した最新トレンドをご紹介してきました!ここからは各トレンドに関する総括を行いたいと思います。

グリーンテック / モビリティ関連
当初EUをはじめとした政策起点でのエコシステムにおける盛り上がりがメインでサービス自体もto B向けが大半でした。しかし現在では消費者向けのサービスも徐々に現れ、市場全体でのマインドセットが変わりつつあると言えます。
一方Deep Tech(科学的発見、革新的技術に基づき、世界規模の課題を解決しようとする試み)が課題解決に寄与することは間違いないものの、市場に導入するプロセス設計がいまだに課題であることが指摘できます。

Web3 / メタバース関連
「メタ」という言葉は、Meta社の社名変更の流れによりバズワード的な扱いを受けていましたが、先に紹介したLVMHのような課題解決を目的としたプレイヤーの顕在化により、「実際に何ができるのか」という具体的なやりとりやソリューションが提示され始めています。
一方Web3については、一般消費者向けコンテンツが現れているものの、その可能性や規制については手探りである印象で、今後どのようにイノベーションを促進しつつ一般消費者を保護していくかということや、Webを支配する巨大組織との関係性については考慮の余地がありそうです。

テック・スタートアップ関連
VivaTechのようなこうした場自体がメタバースを通じた独自の世界観を表現しており、そうした技術やスタートアップ企業が身近な存在であることを提示していると言えます。
しかしNext Unicorn Awardsを受賞したスタートアップを初めとして、多くが既存課題解決型で、先進事例の塗り直しという印象でした。一方グリーンテックのような地球全体の課題、またメタバースにみられるようなパラダイムシフトに対して包括的な解決策を提供できるスタートアップが求められていると考えます。

Q&A

Q.1
欧州のスタートアップでは、製造業が比較的多く出てくる印象があるが、その特徴や気づきを知りたい。

A.1
製造業領域に近いスタートアップは、相対的に少ない印象でした。主に自動車関連やインフラ関係の企業ブースの一貫として出展しているといった具合で、今回のVivaTechでは参加者の期待が集まりやすいWeb3やメタバースの方が多かった印象です。

Q.2
今回のVivaTechの総括を聴いて、欧州は様々な分野において先進的であると感じた。これに対して日本はどのような手段を講じていけばよいか。

A.2
マインド面において、日本ではオープンイノベーションがまだまだ浸透しておらず、新規事業に対するマインドセットは欧州より視野が狭いなという印象を受けました。オープンイノベーションをもっと積極的に進める必要が有ると思います。一方コンテンツ面において、アニメをはじめとする様々なサブカルチャーコンテンツを有している日本は、そうしたものを生かすための手段として、例えばNFTのような新しい技術を使用していくという考え方が望ましいと思います。

Q.3
Next Unicorn Awardsで受賞した企業を含めて、日本をはじめとするアジアの国への進出を検討する企業はあったか。

A.3
私の見た限りでは明確に日本進出を指定している企業はなかったと思います。その背景にはEU内の国同士における制度的な進出のしやすさや、アメリカ合衆国のように言語的な進出のしやすさと比べて日本には制度や言語の壁があることが指摘できます。こうした部分は仕方ない部分ではありますが、法規制緩和などの手段を経た上で、日本への進出のしやすさをアピールするのも一つの手かと思います。

Q.4
2025年には大阪万博が開催されるが、日本が今後世界にどのような強みを発信していけばよいか。

A.4
個人的には、ビジネス面でのオープンイノベーションの推進や、Deep Tech分野における体系化を行うことで、数年後には世界に発信できるような産業を生み出していけると考えます。

まとめ

今回は、フランス・パリで行われたカンファレンス「Viva Technology」に参加されたRouteX社の塚尾様から、最新のフランスのスタートアップ・エコシステムに関するお話をお聞きしました。

オンラインでの体験や二次情報ではなく、実際に現地に赴いた塚尾様だからこそわかる、特定分野の先端情報から、肌で感じたことまでを沢山共有していただけました。

特にWeb3やメタバースは、まだどのような使われ方が中心とされるのか、またどのような需要が大きいのかがわからない中で、各スタートアップや大企業が己の強みを生かして模索している感じがしますね。数年後のこうしたカンファレンスでは今よりもっと技術が進歩し、進むべき方向性も見え、新たなビジネスチャンスを個人単位で見出すこともできそうです!

今後もドコモ・ベンチャーズでは毎週1回以上のペースで定期的にイベントを実施し、その内容を本noteでレポートしていきます!

引き続きイベントレポートを配信していきますので、乞うご期待ください!!

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