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サム・ウィルソンが陽キャすぎて隠の者は付いていけないかもしれない。
『キャプテン・アメリカ ブレイブ・ニュー・ワールド』初日に観てきました。大満足でした。最高。MCUで過去1好きかもしれん。
ただ、中間部の某シーンについて賛否両論あるらしく、僕も触発されたので感想を書いて置きたい。サムの様な人間になるべく。
ネタバレ注意です。
なぜ“超人血清”を打てば⋯と悩む必要があるのか?
重傷を負ったホアキン。手術を見守るサムの元にバッキーが現れる。ハグを交わしたのちバッキーが自分の重責について話す中で「超人血清を打てばよかったか」と吐露する。
空も飛べて、翼で鉄も切れて、レッドウィングがいて、衝撃吸収&放出もできて⋯⋯その上で超人血清打ちたいの????
すでにスティーブ・ロジャースより強くないか????
というツッコミ。
ってかその悩み『ファルコン&ウインター・ソルジャー』で解決済みやん?
というツッコミ。
そのツッコミは理は叶っているが、読解としては0点である。
僕の様に国語のテストが大の苦手な人間が如何にも引っかかりそうな、素晴らしい落とし穴選択肢だ。
サムの高コミュニケーションスキル
サム・ウィルソンは冗談と比喩を交えて、聞き手が受け取りやすい言葉を選択しながら自己開示するコミュニケーションができる。それが天性の才能なのかそれとも退役軍人カウンセラーとしてのスキルなのかはわからないが。
現場急行中の通信、サーペント・ソサエティとの言い合い、人質への声掛け、サムはそれぞれの相手に対して見せる自身のキャラクター性を切り替えて相手に合わせて適切なコミュニケーションを手早くこなす。
イザイアに使うジョークの質はホアキンに使うそれとは全く違うし、それを初対面の2人の間で展開して友好を急速に深める。
普通に考えて自分の後輩に自分の先輩を紹介する時に「この人けっこう気難しいんだけど~」→「昔あった○○案件、この人の仕事やねん」→「んじゃいつものアレしようぜ!」って順番でトーク展開するかね???ビジネスなら実績と肩書きから紹介するのが定石だからこそ、サムは2人にそれ以上の関係を結んで欲しいからこそ、パーソナルな部分からジョークを交えてスムーズに紹介していく。
一方でサディアス大統領にキャプテン・アメリカとしての矜持を示すサムに対し、日本首相とぎこちなく写真撮影するサディアス大統領。サムに「外交が苦手」と言われるのは些か可哀想なレベルでコミュ力に差がある。
ホアキンの負傷は『シビル・ウォー』のローディを想起させる。サムがその事を忘れるわけが無い。だが、回復したホアキンには「失敗した事がない」と言い切ってみせる。ホアキンを励ますために虚勢を張っているのでは無い。自分の隣を飛ぶ相棒にファルコンとしての有り様を示す。
相手に合わせた言葉選びをするが、だからといって猫をかぶっているわけではない。自身に嘘はつかず、相手に誤解されることもない。圧倒的コミュニケーション強者サム・ウィルソン。
口下手だが背中で語るスティーブ・ロジャースとは違う。
魔法の合言葉「超人血清」
手術を見守るサムの元に駆けつけてくれたバッキー。
サムが現在背負っている責任、それはサムにしか果たせないということ、そんなことはサムもバッキーも認識済み。
サムに今必要なのはほんの少しの勇気。サムが今したいことはただ愚痴を吐きたいだけ。そんな想いを込めて元ウィンター・ソルジャーに向かって「超人血清」と言ってみせる。半分本気で半分冗談の男の会話。
バッキーもサムがそうやって言葉を選べる人間である事をよくわかっている。こいつが「超人血清」と言い出す時は弱音を吐きたい時なんだと、110歳の年輪がサムを抱擁し、2人の会話は気づけば全てがジョークだったかのように終わる。
成人男性の友情の理想像。
東北生まれガンダム育ち、運動部腐しとヤンキー批判しか冗談が言えない中年男性には余りにも眩しい⋯⋯
でも結局レッドハルクとかいう飛行能力とヴィブラニウムではどうにもならんのが出てきて超人血清が割とガチで欲しいかもって展開がお上手!くぅ~!
一本取り返すイザイア
イザイアもサムのそういうところをよく分かっていて、カウンセラートークはやめろと言ったり、2度とくるなと言って見せたりもした。
ラストでサムを上回るジョークをみせるイザイア。サムみたいなタイプはこういう漢に一番弱い。俺には本音の顔をうっかり見せても大丈夫なんだぞ、というイザイアの漢気。
この映画で力を示したのはサム・ウィルソンだが、彼に心を示したのは2人のスーパーソルジャーだった。