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「包丁が怖い、赤ちゃんが怖い?」 加害系OCDの苦悩とその克服法


包丁を持ちながら、ふと「この包丁で家族を傷つけてしまうのではないか」と考えたことはありませんか?
赤ちゃんを抱きながら、「落としたり、傷つけたりするのでは」と一瞬不安になったことは?


ほとんどの人は、「そんなことを考えるなんてありえない」とすぐに切り替えるでしょう。しかし、**加害系OCD(強迫性障害、強迫症)**を抱える人にとって、このような思考はただの一瞬では終わりません。それどころか、繰り返し頭をよぎり、自分が危険な人間ではないかと苦しみ続けることになるのです。


この記事では、加害系OCDがどのようなものか、その具体例や症状、治療法について詳しく解説します。




加害系OCDとは何か?


加害系OCDは、強迫性障害(OCD)の一種で、「自分が他人を傷つけてしまうのではないか」という不安や恐怖を伴う状態です。
具体的には、他人を傷つけるイメージや考え(これを「侵入思考」といいます)が突然頭に浮かび、それが自分の性格や将来的な行動に直結するのではと恐れるのです。


例えば:


  • 包丁を持ちながら、「家族を刺してしまうのでは」と感じる。

  • 赤ちゃんを抱きながら、「窒息させるのでは」と不安になる。


このような思考は一時的なものであっても、加害系OCDの人にとっては恐怖と罪悪感が積み重なり、日常生活に大きな影響を及ぼします。




加害系OCDの症状と具体例


症状の特徴


加害系OCDの主な症状は以下の2つです:


  1. 侵入思考(Obsessions)

    • 「自分は暴力的な人間なのでは?」

    • 「大切な人を傷つけてしまうのでは?」

    • 「この考えを持つ自分は異常なのではないか?」

  2. 強迫行動(Compulsions)
    不安を和らげるために繰り返し行う行動や思考。例えば:

    • 刃物や危険物を避ける。

    • 他人に「自分は大丈夫だよね?」と確認する。

    • 心の中で「そんなことはしない」と繰り返し思う。




実際の事例

シナリオ1:暴力的な考えに悩む息子

良太さんは包丁を持ちながら料理をしているとき、突然「この包丁で母親を刺すこともできる」という考えに襲われました。この瞬間、良太さんは激しい恐怖を感じます。そして頭の中で以下のような思考がぐるぐると回り始めます:


  • 「もしかして、母親を刺してしまうのでは?」

  • 「普通の人もこんなことを考えるのか?」

  • 「自分は暴力的な人間なのでは?」


良太さんは不安のあまり包丁や鋭利な物を避けるようになり、母親との接触も減ってしまいます。その結果、家族関係が悪化し、孤立してしまうのです。

シナリオ2:新米ママの苦悩

リサさんは生後3ヶ月の赤ちゃんを抱き上げたとき、突然「赤ちゃんを絞めてしまうのでは」というイメージに襲われました。リサさんはこの考えに恐怖を感じ、以下のような疑念に苛まれます:


  • 「私って異常なの?」

  • 「こんな考えを持つ自分は母親失格では?」

  • 「本当に赤ちゃんと一緒にいて大丈夫?」


その後、リサさんは赤ちゃんを抱っこするのを避けるようになり、夫に繰り返し「私は大丈夫だよね?」と確認する日々を送ります。




加害系OCDに悩む人々の心理とは?


加害系OCDを持つ人は、自分が危険な人間ではないかと悩む一方で、実際には暴力を強く嫌悪しています。この矛盾が彼らを苦しめます。


現実には、どんな人でも「他人を傷つける」というような思考が浮かぶことがあります。大半の人はそれを気に留めませんが、OCDを持つ人はその思考に固執し、「自分は異常ではないか」と悩みます。




加害系OCDのサインと典型的な強迫行動


よくある侵入思考(Obsessions)


  • 「もし私が誰かを傷つけたら?」

  • 「本当は暴力的な人間なのでは?」

  • 「いつかコントロールを失ってしまうのでは?」


典型的な強迫行動(Compulsions)


1. 回避行動


  • 包丁や刃物を避ける。

  • 人混みや高い場所など、危険を感じる場所を避ける。


2. 安心を求める行動


  • 他人に「自分は危険ではない」と確認する。

  • 自分が安全な人間であることを証明しようと過去の記憶を何度も振り返る。


3. 精神的な儀式


  • 「自分は暴力的ではない」と心の中で繰り返す。

  • 悪い考えを打ち消すために祈る。




加害系OCDの原因


OCDの発症には環境的要因と生物学的要因の両方が関与しています。例えば:


  • 家族歴:OCDの人の10〜20%が家族内に同じ疾患を持つ人がいると言われています。

  • 環境要因:ストレスフルな出来事や習慣がOCDの発症に影響することがあります。




加害系OCDの治療法


加害系OCDは適切な治療を受ければ克服が可能です。最も効果的な治療法として知られるのが**暴露反応妨害法(ERP)**です。


ERPとは?


ERPは、不安を引き起こす状況に意図的に直面しながら、強迫行動を減らす訓練を行う治療法です。例えば:


  • 包丁を見たり触ったりしても、それに対する強迫行動(避ける、確認するなど)をしない練習をします。

  • この過程で、不安に耐え、やがてその不安が軽減されることを学びます。




まとめ:加害系OCDは克服できる


加害系OCDを放置すると、その恐怖や不安が何年も続く可能性があります。しかし、適切な治療を受けることで、再び自分らしい生活を取り戻すことが可能です。


行動の第一歩は、強迫症について良く学び、また専門の治療者に相談すること。 そして、加害系OCDを理解し、適切な対処法を身につけていきましょう。あなたの未来は、恐怖ではなく、希望に満ちたものに変えられます。




【あとがき】

加害系OCDは、誰もが抱き得る「もしこんなことをしたらどうしよう?」という思考に、強烈な恐怖と罪悪感が結びついたつらい症状です。しかし、正しいアプローチで取り組めば、悪循環から抜け出すことは十分に可能です。もし「さらに詳しく知りたい」「具体的なステップを学んでみたい」と思われた方は、当事者や家族目線でまとめられた全25記事の有料プログラムもぜひ参考にしてみてください。

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少しずつ不安に向き合い、自分のペースを大切にしながら進めていくことで、再び安心して生活できるようになるはずです。ぜひ第一歩を踏み出してみてくださいね。

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