患者マニュアル 〜序章〜
このシリーズで学べること
・ 病院の検査の種類
・ 検査の解釈の仕方
・ 病院の選び方
・ 医師の選び方
・ 各疾患に関する患者としてのリテラシー
患者と医療従事者の間のずれ
医師として勤務する中で、昨今の医療現場に疑問を抱くようになった。
どこの病院もスローガンとして「患者さんを中心とした医療」を掲げている。
しかし、実際に患者となって医療機関を受診した際に、自分が主体となっていると実感できているのだろうか。
抽象的でわかりにくいので例を示す。
あなたは今まで経験したことのないような腹痛を自覚して、我慢できずに救急車を呼ぶ。
そして、最寄りの救急外来に搬送される。
到着するや否や、よくわからないコード類を身体に付けられ、会ったばかりの医師や看護師と時間をかけて信頼関係を築く間もなく、腕から血を取られ、点滴をされる。
「必要だから」と言われ、超音波検査や場合によってはCT検査を施行される。
しばらくして医師から「検査をいろいろしましたが、命に関わるような問題は見つかりませんでした。痛み止めを出しますので今日はご帰宅いただいて構いませんよ」と言われ、受付に案内される。
そこで目にするのが、予想よりも遥かに高い請求書だ。
時間外の加算、検査の加算、診察料、初診料等々、こんなに色々とられるものかと目を見張る。
非常によくある光景である。
一つ断っておくが、この一連の流れは医学的に全く問題はない。
医師の頭の中には病気の候補がいくつかあり、それを絞ったり除外したりするための検査や、その後の治療のシナリオが出来上がっている。
しかし、救急の現場では医師も緊迫しており、考えていることを逐一患者に報告する余裕はない。
また、医療費に関しては各種検査が具体的に患者の請求書でいくらになるか分からない医師がほとんどである。
故に、本来必要でない検査も軽い気持ちで追加すると言う事態が発生する。
必要か不必要かの判断を患者が下すのは非常に難しい。
患者としてできることは、医師が有無を言わさず検査を行おうとしたときに、その検査が本当に必要なものであるか、行わなかった場合のデメリットは何か問うことである。
検査を行うときは必ず患者からの同意が必要なため、そう聞かれたら医師も時間をとって説明せざるを得ない。
そこで口籠るようであれば、ルーチンとして検査を入れただけということになる。
もし、満足な説明が得られ、自分が主体となって方針を決めることに参加できれば、患者は請求に関しても納得がいくはずである。
また、行った検査結果を理解することも、受け身の患者にならないために非常に重要である。
このnoteのシリーズでは、私が日常業務の中で感じた医師と患者との溝を埋めるべく、患者として知っておいて損はない知識について紹介していく予定である。
業務の合間をぬって更新するため、気長に待っていただけると嬉しい。