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惜敗率三連単というご提案
国政選挙の投票率
民主主義の根幹は、自由で公平な選挙にある。今では当たり前となった選挙権も、先人たちの努力によって得られたことを忘れてはならない。しかし……
国政選挙の投票率は、令和3年10月に行われた第49回衆議院議員総選挙では、55.93%。
つまり、選挙権を持つ国民の4割以上がその権利を行使していないことになる。各人の考えまではわからないが、これは非常にもったいないことだと私は思う。
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穿った見方をしてみる
衆議院議員総選挙とは、国会の解散や任期満了によって「無職」となった代議士465名を再選させたり、新人がその座席を奪ったりするバトルロイヤルである。もちろん誰が当選したかも非常に大切だが、誰が無職のまま失職したかという見方もできる。
投票日の午後8時、開票速報の中継で見るべきは、当選した人の万歳三唱なんてつまらないものではない。惜しくも落選した人の敗戦の弁、これから自分は無職になるのだという悲壮感を隠せないあの表情なのである。人が無職になった瞬間が見られる機会などそうそうない。しかも、その人は我々の1票によって無職になったのだ。人を無職にできる行為、それが投票。私は自分の手で人を無職にしたいがために必ず投票に行っている。
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惜敗率とは
現在の衆議院議員総選挙の選挙方式は、小選挙区比例代表並立制である。1区つき1人の当選者が決まるほか、比例代表制によっても議員が選出される。今回注目して欲しいのは、小選挙区1区につき、当選者が1人だということだ。
併せて覚えておいてほしい言葉が「惜敗率」である。まずはその意味を引用すると、
小選挙区の当該選挙区における最多得票数に対する当該候補者の得票数の割合を惜敗率といいます。
つまり、小選挙区内で2位以下の得票数だった人が「どれだけ惜しかったか」を表す割合(数値)となる。
例えば、ある選挙区で1位の候補者A氏が10万票を得て当選。2位の候補者B氏が7万票、3位の候補者C氏が5万票の票で落選したとする。この場合の惜敗率は、B氏が70%、C氏が50%となる(A氏は当選しているので惜敗率は存在しない)。これが惜敗率である。
なぜ惜敗率という割合を算出するのかといえば、比例代表制のためである。小選挙区で落選しても、比例代表に重複立候補していた場合、多くの政党では惜敗率が高い順(小選挙区で惜しかった順)に復活当選することになる。そのため無職になりたくない方々にとっては、万が一小選挙区で勝てなくともどれだけ肉薄できるかによって、その後最大4年間の身の振りようが変わってくるというわけだ。
選挙を10倍楽しめる「惜敗率三連単」
前置きが長くなってしまったが、ようやく表題の話に入る。前回2021年の総選挙で私は「惜敗率三連単」という遊びを考えた。またの名を「落選ダービー」である。簡単に言えば、惜敗率の高い3人を当てる遊びだ。
しかし、範囲を全国にしてしまうと難易度が高すぎる。ちょうど私の住む北海道は小選挙区が12区までで、道内で三連単を開催する場合は12人から3人を選ぶダービーとなる。これは結構ちょうどいいので、今回は北海道を例に説明していくことにする。
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チームに分けて楽しむ
惜敗率三連単は1回の選挙で2回チャンスがある。まず、出走する馬(候補者)を、自民党・公明党と立憲民主党(共闘区の場合は共産党)に分ける。自公候補者の中での惜敗率上位3名と、立憲の候補者の中での惜敗率上位3人を当てるのが目的だ。競馬式に書けば、自民:①>②>③、立憲:①>②>③ということになる。勝馬投票券ならぬ、負候補投票券である。
ちなみに、2021年総選挙で北海道は、12区全ての選挙区で自公と立憲が対峙する形となったのでこれも非常に分かりやすい。一方、2009年や2012年の総選挙のように、片方が大勝してしまうとそもそも3人も落選しないことも発生しうるが、それもまた楽しみと捉えた方が良いだろう。
実際にやってみよう
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すでに投開票が済んでいることから、分かりやすさを重視して自民→立憲の順とした
ということで出馬表を用意した。維新の会や共産党などからの候補者がいる選挙区もあるが、今回は割愛させていただく。この24人のうち、12人は必ず当選するが、そんなことはどうだっていい。大切なのは必ず落選する12人である。どの選挙区で自公あるいは立憲が負けるか、そしてどの選挙区が競るかを考えるのである。
だんだん、選挙戦の見方が変わってきやしないか?
競る選挙区を当てる面白さ
聡明な方は気づいただろう。惜敗率1着はすなわち、ギリギリで競り負けた候補者である。1着を当てることの難しさがこの遊び最大の面白さである。
少し真剣に情勢を見ればどの選挙区が競るかはなんとなくわかる。当然、競る選挙区は惜敗率が高くなることもわかる。そこからどちらが負けるかを当てなければ、三連単的中とはならないのだ。負けると思って1着予想した自民党候補がギリギリ競り勝った瞬間、勝つと思っていた対立候補の負けが確定し、立憲の1着になるハラハラ感をぜひ味わってほしい。
パドック
すでに結果はわかっているが、ここからは当時の選挙戦(ここではパドックと呼ぶ)を振り返りながら、私の予想を書いていく。
これはあくまで素人の私見。選挙情勢を詳しく知りたい人は別途自己責任で調べてほしい。また、結果だけ見たい人は読み飛ばしてしまって結構だ。
1区(札幌市中央区など)
自民は前々回当選、前回は比例復活のフナハシ、立憲は現職のミチシタ。元々革新系が強い道内において、都市部の1区も伝統的に革新系が強い。とはいえ2連続の比例復活はメンツが立たないフナハシとの激戦が想定され、荒れたパドックとなっていた。
ミチシタが当選するだろうが、フナハシも自民の中では上位の惜敗率となると予想した。
落:自民 ●
2区(札幌市北区・東区)
直前の補選に続くこの年2回目の選挙。元々自民の地盤だったが汚職事件で議員辞職。それを受けた補選は立憲のマツキが制し、勢いそのまま当選する可能性が高い。自民もやっとの思いで候補者こそ立てたものの、浸透しているとは言い難い。
落:自民 4着以下
3区(札幌市豊平区・白石区など)
自民のタカギと、立憲のアライが争い続けてきた伝統の区。タカギは前回落選、アライは今回息子が地盤を継いで出馬することになった。非常に混戦が予想され、自民が負けても立憲が負けても惜敗率上位に食い込むことは必至。パドックの状態よりは、フィールドの状態から考えてハナ差で立憲アライが負けると予想、青杯1位はここだろう。
落:立憲 ◎
4区(後志管内など)
4選を目指す自民・ナカムラに、新人のオオツキが挑む戦いとなった。郡部で浸透しているが、票田小樽市などでの人気が鈍いナカムラに、フレッシュな女性候補の登場は予想外の脅威となり、当初の想定よりも混戦となりそうな予感がする。3区同様三連単上位への食い込みは間違いない。3区と4区どちらかは立憲が取ると仮定し、自民ナカムラの競り負けと予想した。
落:自民 ◎
5区(札幌市厚別区・石狩管内)
現職同士の対決。盤石な自民・ワダに対し、立憲・イケダは前回のような野党共闘が崩れて苦しい戦いが予想される。イケダの負けは間違いないだろうが、惜敗率3位に入るか入らないか……。三連単を当て切るために重要な選挙区となる可能性が高い。
落:立憲 ▲
6区(上川管内)
自民は道議出身の新人アズマ、立憲は旭川市長の新人ニシカワを擁立。当初は元旭川市長の知名度を生かしてニシカワが圧勝すると思われていたが、パドックでの調子がどうも良くない。これは意外と混戦?正直読めなかった選挙区の一つだった。
落:自民 ○
7区(釧路・根室管内)
間違いなく現職の自民・イトウの圧勝。立憲のシノダは惜敗率3位以内もないだろう。
落:立憲 4位以下
8区(渡島・檜山管内)
現職の立憲・オオサカが強い選挙区だが、自民のマエダも知名度は上げてきている印象がある。マエダの負けは固いが、惜敗率3位になる可能性もあり、赤杯の勝負所はこの区にあるかもしれない。
落:自民 ▲
9区(胆振・日高管内)
ホリイとヤマオカの4度目の対決。当初は知名度皆無だったヤマオカも比例復活するまでに成長。悲願の選挙区制覇を狙う選挙戦となっている。ここも競り勝つか競り負けるかのボーダー的選挙区で難しい。ぎりぎりでホリイが競り負けると予想し、4区ナカムラに次ぐ赤杯惜敗率2位予想とした。
落:自民 ○
10区(空知・留萌管内)
道内唯一の公明党の選挙区とあって、イナツの集票力は盤石……と思いきや、立憲のカミヤも毎回結構迫ってきている隠れた激戦区。カミヤが負けるのは間違いないだろうが、どこまでの惜敗率になるか正直予想がつかない。
落:立憲 △
11区(十勝管内)
自民・ナカガワ王国に挑むイシカワ一家の構図。ここも激戦予想でどちらが負けても惜敗率上位は必至。パドックの様子は両者同じ程度だが、馬場の具合からナカガワが負けると予想。とはいえ9区ホリイとどちらが上になるかがわからない。
落:自民 ○
12区(オホーツク・宗谷管内)
ここは自民・タケベの圧勝が確実。立憲・カワハラダが惜敗率上位に食い込むことはない。
落:立憲 4位以下
さあ予想しよう!
長々とパドックの様子をご覧いただいた。パドックや馬場(情勢調査)などに基づいて、私が当時出した予想がこちらである。
自民 ④>①>⑨
立憲 ③>⑤>⑩
この三連単はやはり1点買いにこそ美学があると思う。流しで選ぶものでもないし、そもそもお金を賭けてはいけない。このメモを握りしめて、翌朝の開票速報を待ったのであった。
気になる結果は…?
2021年10月31日、予想以上の熱戦となった総選挙の開票速報。道内で最後に小選挙区の当落が出たのは3区で、日も変わった午前1時20分ごろ。比例復活最後の議席が埋まったのは11区で午前4時を回ってからだった。
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まずは当落から見ていく。当落を外したのは4区のみ。予想通りの大接戦となったものの、自民の現職が約700票差で薄氷の勝利を得たとのこと。
この予想外しにより私の三連単的中は100%無くなってしまったが、これを当てることの難しさが面白さである。
さあ、続いては皆さんお待ちかねの惜敗率である。
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これが、2021年総選挙の北海道地区における惜敗率三連単の結果である。
やはり鍵となったのは3区と4区。特に4区の惜敗率99%超えは極めて接戦であり、大波乱の結果となった。また自民党杯でも5人全てが惜敗率80%超えで、3位と4位の差もほとんどないことから、誰が落選するかはわかったとしても、その順番まで当て切ることの難しさが際立った選挙だったと言えるだろう。
おわりに
異論はあるだろうが、この三連単を思いついてからより真剣に選挙というものを見るようになった。きっかけは人の失職する瞬間が見たい!という邪なものではあるが、それによって政治を少し学ぶことは決して悪いことでもあるまい。選挙を自分の中でエンタメ化することで、政治が少し身近に感じられ、投票率の回復につながるのではないだろうか。
もしもっと真剣に取り組むとすれば、その代議士の活動がどれだけ選挙という結果に繋がっているかを研究するモチベーションにも繋がるだろう。そこまで私はやらないけど。
ちなみに、北海道以外では、埼玉県と愛知県が15区、千葉県が13区、兵庫県が12区、福岡県11区と、四国全部で11区などと、区数的にやりやすい県はいくつかある。お住まいの方はぜひやってみてほしい。