見出し画像

現代版忠臣蔵!?ドラマ「半沢直樹」を観て感じたこと

どーも、中小企業診断士の「どばしんだんし」です。
8月23日放送のTBSドラマ「半沢直樹」を観て「忠臣蔵」と物語の構造が非常に似ているものを感じましたのでなぜそう思ったかをドラマの内容と併せてご紹介します。

半沢直樹#6あらすじ

<公式サイトより>
帝国航空を立て直し、何としても政府の要求する500億の債権放棄を拒否したい半沢(堺雅人)。自らの目で、現場で働く人々を見て何とか再建案を作り上げた半沢たち。
しかし、政府直属の再建検討チーム「帝国航空タスクフォース」のリーダー・乃原正太(筒井道隆)は、そんな半沢たちの努力をあざ笑うかのように、再建案を白紙に戻すと容赦なく告げる。その強引かつ高圧的な態度に半沢は反発し宣戦布告。両者は激しく衝突する。
一方、半沢の作成した再建案は帝国航空内でも暗礁に乗り上げていた。赤字路線の廃止、徹底的な経費削減、そして約1万人もの余剰人員の整理など、どれも大きな痛みを伴うことは必至であり、中でも整備士ら専門職は異業種への転職を断固拒否。彼らへの対応に日々追われる財務部長・山久登(石黒賢)はすっかり疲弊していた。
そんな中、乃原から政府に楯突く半沢の態度を聞いた国土交通大臣・白井亜希子(江口のりこ)は、なんと大臣自ら銀行に乗り込んでくる。この異例の事態に紀本(段田安則)も大和田(香川照之)も、そして中野渡頭取(北大路欣也)までもが、政府の脅威を実感するのだった。
そして、銀行には再びあの男の姿が。黒崎駿一(片岡愛之助)である。急遽始まったヒアリングで、帝国航空を巡るある重大な過失が発見されて—

※以下ネタバレあり

国土交通大臣の白井亜希子はその支援者である幹事長箕部の政治の力を使って金融庁を動かし、東京中央銀行に帝国航空の過去の融資に対する金融庁監査が入ります(その監査側の代表として黒崎が再登場)。

前回の融資の際に作成された帝国航空の経営改善計画が金融庁に提出したものと銀行に残されたものが違うことから吸ったもんだの展開に。

結局は銀行側の意図的な改ざんを半沢たちが暴くわけですが、実行犯は判明したもののそれを計画した黒幕が銀行内の誰であるかまでは今はまだはっきりしていません。

意図的な資料改ざんの責任から東京中央銀行は金融庁より業務改善命令を発出され、それにより金融庁長官に粛々と頭を下げる中野渡頭取の姿がテレビ中継で流れるのでした。

それを社内の大型スクリーンで観ていた半沢(と帝国航空債権回収チームのメンバー数十人)が頭取である中野渡にこの様なことをさせてしまったことを悔やむのと同時に、銀行内での裏切り者と金融庁を使ってまで今回の騒動を起こした政治家たちに「倍返し」を誓うのでした。

忠義と敵討ち

新渡戸稲造の著書『武士道』では「切腹」と「敵討ち」がなぜ合法的な制度とされたかについて言及しています。

「切腹」と「敵討ち」に共通する点はどちらも「誉(ほまれ)」つまり名誉を命よりも重きとする武士道精神が関係しています。

個人の恥や穢れを雪ぎ「誉(ほまれ))」を回復する方法として「切腹」という制度が設けられ、
主君や親の恥や穢れを雪ぎ「誉(ほまれ)」を回復する方法として「敵討ち」という制度が設けられました。

そして「敵討ち」は忠臣蔵というの作品を通じて武士道たる「忠義」を示す究極的な行為に昇華されます。

※ご参考;以前に新渡戸稲造の『武士道』について触れた記事になりますので併せてお読みいただければ幸いです↓↓↓

忠臣蔵とは

「忠臣蔵」とは18世紀初頭に起きた赤穂事件を元に創作された人形浄瑠璃や歌舞伎の演目で、現代でもドラマや映画に何度もなっている日本人に馴染みの深い時代劇の一つではないでしょうか。

赤穂事件(あこうじけん)は、18世紀初頭(江戸時代)の元禄年間に、江戸城・松之大廊下で、高家の吉良上野介(きらこうずけのすけ)義央[注釈 1]に斬りつけたとして、播磨赤穂藩藩主の浅野内匠頭(あさのたくみのかみ)長矩が切腹に処せられた事件。さらにその後、亡き主君の浅野長矩に代わり、家臣の大石内蔵助良雄以下47人が本所の吉良邸に討ち入り、吉良義央を弑し、当夜に在邸の 小林央通、 鳥居正次、 清水義久らも討った事件を指すものである。(「江戸城での刃傷」と「吉良邸討ち入り」を分けて扱い、後者を『元禄赤穂事件」としている場合もある)
出所;Wikipedia「赤穂事件」より

「忠臣蔵」がここまで長きにわたり日本人に愛されるのは勧善懲悪に加えて「敵討ち」「忠義を果たす」といった武士道のエッセンスが色濃い作風だからではないでしょうか。

半沢直樹と忠臣蔵の相似点

今回のドラマ「半沢直樹」を観てなぜ「忠臣蔵」と重なって見えのか、その理由と重なる人物を3つにまとめると以下になります。

①主君、トップの名誉が傷つけられた
→浅野内匠頭=中野渡頭取

②相手側に悪意がある
→吉良上野介=白井・箕部と銀行内の裏切り者

③家臣、部下がやり返す気満々
→大石内蔵助と赤穂浪士四十七士=半沢とチームのメンバー

相手により名誉を著しく傷つけられたトップの汚名を濯ぐために部下が「敵討ち」をするという構図が半沢直樹と忠臣蔵で非常に似通っていると感じた次第です。

すり替えられてしまった論点

そもそも半沢たちは何と闘っていたのでしょう?

半沢が属するのは帝国航空の債権回収チームですから債権をできる限り多く回収することが目的であり、そのための手段として自力再建を選択したわけです。

一方白井大臣主導のタスクフォースは政府の人気取りが目的であり、債券カットは手段ということになります。

目的が合致しないわけですから建設的な話し合いになるわけがありません。

(そんな両者に振り回される帝国航空もかわいそうですが)

それでも半沢たちからしてみればタスクフォースの要求は銀行の利益と真っ向から対立するわけですから対決姿勢を明らかにしてきました。

つまりこれまでは

債券カットさせたい政府VS債権回収したい銀行
タスクフォースVS半沢チーム

という論点での対決構図でした。

ただ、これでは銀行や半沢が圧倒的に不利な立場な上に債権をカットするか回収するかの水掛け論で政府やタスクフォースを倒す必然性を感じません。

そこで必要だったのが今回の「中野渡頭取の謝罪」ではないかと思います。

これによって見事に

トップに恥を掻かせた敵役VSトップの名誉を回復させたい半沢たち

という「敵討ち」に論点に見事にすり替えられて、半沢たちは大石内蔵助と赤穂浪士よろしく「国家権力に立ち向かう忠義の人達」というラベリングが完成しました。

最後に

この論点のすり替えに対して善し悪しを語ろうとは思いませんし、勧善懲悪&敵討ちという日本人の大好物な展開に持っていくその手法には敬服いたします。

日本人の心に眠る武士道を奮い立たせるからこそ人気も視聴率も高いのでしょう。

ただ仕事柄やり方ばかりにこだわって本来の目的を見失ってしまうことが企業再生では往々にしてありますから、国と銀行の対決や敵討ちよりも帝国航空の企業ファーストな再建案が実行されることを切に願うばかりです。

来週以降も放送を楽しみにしております。(了)

いいなと思ったら応援しよう!