事業再生における3体のラスボス(TBSドラマ「半沢直樹」第7話より)
TBSドラマ「半沢直樹」が終盤に入りますます盛り上がってきました。
8/30の放送第7話ではタスクフォースの債権放棄案が却下され帝国航空の事業再生を今後誰がどうして行くのか不透明な状況です。
中小企業診断士としてこの「事業再生」についてをドラマの内容を交えながらご紹介いたします。
事業再生とは
経営状況が悪化し事業継続が困難な企業の立て直しを図る事を「事業再生」と言います。(細かな定義の違いはありますがここでは「企業再生」も同義とお考え頂いて構いません。)
ドラマ「半沢直樹」では帝国航空は
・OBの抵抗が強く企業年金の削減ができない
・労働組合の抵抗が強く給与の引き下げや人員整理ができない
・赤字路線を削減できない
などの理由から赤字体質に陥り、銀行からの借入で資金を穴埋めしていましたがいよいよ資金繰りが苦しくなって本格的な「事業再生」が必要という状況の様です。
そこで白井国土交通大臣直属のタスクフォースが事業再生の一環として債権カット(借金の7割を帳消しにする)を融資先金融機関に要請します。
それに対し半沢チームは帝国航空のポテンシャルを調べ上げ債券カットはせずとも自力での再建が可能という結論に達し政府と真っ向から対立するのでした。
そしてそれが政治や官僚、中野渡頭取まで巻き込んだ大事に発展していったのが前回までの放送内容でした。
「対症療法」と「原因療法」
今回はドラマの対立構造上
タスクフォース=債券カット
VS
半沢チーム=自力再建
となっておりますが私が関わる実際の「事業再生」の現場では通常この様な対立構造には普通なりません。
上記の案どちらかを選択するよりはどちらもやるということがほとんどです。
医療現場で例えるとすると「対症療法」と「原因療法」どちらかだけ取り入れるのではなく、この両方の良さをバランスよく取り入れるて治療法を考えることと似ています。
「対症療法」=病気によって起きている症状を和らげたり,なくしたりする治療法
(例)発熱に対する解熱剤、頭痛
腹痛などに対する鎮痛剤
「原因療法」=病気の原因を根本的に取り除くことを目標とする治療法
(例)感染症に対し抗生物質を投与し病原体を死滅させる
がんに対する外科的治療、化学療法、放射線療法
※疾患の多くは直接の原因と複数の遠因が重なり合って起こるため、原因療法と対症療法の区別は相対的なものである。
<参考;ウィキペディアより>
今回のドラマ「半沢直樹」ではそれぞれ
・対症療法的な対策(出血を止める)
債券カット
・原因療法的な対策(利益が出る様に体質改善を図る)
企業年金や給与水準の見直し
人員削減
赤字路線の見直し
(※経営危機の多くは直接の原因と複数の遠因が重なり合って起こるため、原因療法と対症療法の区別は相対的なものとなります。)
が帝国航空における「事業再生」の案として出ています。
半沢としては銀行員の立場もありますので極力債権カットは避けたいのでしょうが、企業側(この場合帝国航空)からすればいずれにせよ年金や給与の見直し、人員削減、赤字路線の見直しをするのであれば、借金を7割帳消しにしてもらった方が「事業再生」には圧倒的に有利です。
ドラマの構造をぶっ壊してしまいますが、もし私が企業側のコンサルとして雇われていたら「じゃあ銀行さんの再建案(原因療法)と政府さんの債権カット案(対症療法)のハイブリッド(良いとこどり)でいきましょう」と言っちゃうと思います。
「事業再生」のラスボス
実際に「事業再生」の現場に携わらせて頂いたり、借金に悩む100人以上の経営者の方から話を伺うことで私はとある結論に至りました。
それは「事業再生」の根本的な問題の発生源(=ラスボス)は代表的なものが3体いるということです。(※ご参照;借金に悩む100名以上の経営者に話しを聴いた際の気づきをまとめた記事はコチラになりますので併せてお読みいただければ幸いです↓↓↓)
その3体とは以下の通りです。
①社長自身
②会長(社長のお父さん)
③企業風土
ひとつずつ補足させて頂くと
①社長自身
このパターンが3体の中でも圧倒的に多いのですが、結局赤字や債務超過というのはあくまで結果、症状であって、そうなる原因は日頃の習慣、経営者自身の行いによるものがほとんどです。
特徴としては「銀行から梯子を外された」とか、「景気が悪いから」など他責な言動が多く「事業再生」のお手伝いをして一時的に良くなってもまた復活するというゾンビ的しぶとさがあります。
②会長(社長のお父さん)
このパターンはお父さんが創業者で2代目社長に息子さんが就いている際に起きやすく、1代で会社を成功させたバイタリティは認めますが人の意見は受け入れず社長を含め周りをイエスマンで固めてしまいがちです。(防御力ハンパない)
特徴としてはもともと決断力、行動力はあるのでいざ「事業再生」をスタートさせるとそのスピードは速いです。
ただしいかに窮状を会長本人に自覚してもらえるかが鍵になります。
③企業風土
このパターンは歴史が長く従業員も一定数以上いる企業で起こりやすく、3体のラスボスの中でも1番の強敵です。
なぜ企業風土が強敵なのか?
それは実態がない上に社員1人1人の潜在意識に刷り込まれており、この呪いにかかった社員は「うちは昔からこうだから」という最強呪文を唱えてきますのでこちら側が何をやっても変化がありません。(返事がない、、、ただの屍の様だ)
今回の帝国航空はまさにこれに当てはまります。
これに対しては西洋医学的アプローチ(例;日産・カルロスゴーン)や東洋医学的アプローチ(例;JAL・稲盛和夫)などありますがいずれにしても抵抗勢力との激しい戦いになることが予想されます。
最後に
本日はドラマ「半沢直樹」より「事業再生」について書かせていただきました。
ドラマではラスボスである「企業風土」との戦いまで描く時間は無さそうですが、金融機関でも政府でもなく当事者である「帝国航空」ファーストの「事業再生」が描かれますことを心より願っております。(了)