組織の不満を取り除くだけじゃ改革は成功しない!!(銀英伝に学ぶ組織改革の失敗の本質)
組織改革を改革しようとする経営者やリーダーは必見!?
8月24日放送のアニメ「銀河英雄伝説Die Neue These#21」では自由惑星同盟内でのクーデターが失敗に終わりました。
組織を急激に改革するためには痛みが伴いますが、その際にやってはいけない失敗の法則や、気をつけなければいけない成否のポイントについて過去の歴史からも事例を挙げて放送内容と共にご紹介致します。
銀河英雄伝説とは
どーも、中小企業診断士の「どばしんだんし」です。
個人的なスキと企業経営を掛け合わせた情報提供を日々発信しております。
ところで『銀河英雄伝説』をというアニメをご存知でしょうか?
累計1500万部を誇る田中芳樹原作のSF小説を長編アニメ化したもので本伝110話、外伝52話、長編3作という大作です。
私が大学生の頃に加入していたケーブルテレビのアニメ専門チャンネルで放送していたのを観たのがきっかけですっかりハマってしまいました。
そしてこの4月からNHK Eテレで新たに製作し直された『銀河英雄伝説 Die Neue These』が放送されています。(公式サイトは↓↓↓)
数千年後の未来、宇宙空間に進出した人類は、銀河帝国と、自由惑星同盟という“専制政治”と“民主主義”という2つの異なる政治体制を持つ二国に分かれた。この二国家の抗争は実に150年に及び、際限なく広がる銀河を舞台に、絶えることなく戦闘を繰り返されてきた。長らく戦争を続ける両国家。銀河帝国は門閥貴族社会による腐敗が、自由惑星同盟では民主主義の弊害とも言える衆愚政治が両国家を蝕んでいた。そして、宇宙暦8世紀末、ふたりの天才の登場によって歴史は動く。「常勝の天才」ラインハルト・フォン・ローエングラムと、「不敗の魔術師」と呼ばれるヤン・ウェンリーである。ふたりは帝国軍と同盟軍を率い、何度となく激突する。(公式サイトより抜粋)
私なりにまとめると
銀河帝国 対 自由惑星同盟
専制政治 対 民主政治
ラインハルト 対 ヤン
という敵対する組織に所属する2人の主人公を通してそれぞれの正義や信念が描かれており、そのどちらにも共感できるというとっても悩ましいアニメになります。
そしてこのアニメはリーダーシップや組織運営、競争戦略などビジネスや企業経営にも役立つ情報が満載です。
今回の放送内容(2020年8月24日放送)
#21 誰がための勝利
ルグランジュをドーリア星域で破ったヤン艦隊は救国軍事会議に支配された首都星ハイネセンへと迫る。救国軍事会議議長グリーンヒルは厳しい状況を理解しながらも、ヤン艦隊はハイネセンの重力圏内へ突入することはできないと考えていた。ハイネセン軌道上には12個の首都星防衛システム[アルテミスの首飾り]が存在するからだ。しかし、ヤンには、[アルテミスの首飾り]を無効化する作戦があった…。
(公式サイトより)
今回は自由惑星同盟側のクーデターの話で#19の続きでした。(ご参照;#19を書いた記事は↓↓↓)
※以下ネタバレ注意
ヤン艦隊の活躍によりハイネセンの防衛システムは無力化され軍事的優位を失った救国軍事会議のクーデターは失敗に終わります。
そもそもこのクーデターは前年に行われた帝国領への大規模侵攻が失敗に終わり軍部内での不満が溜まっていたことと、現政権下の政治腐敗への不満が暴走した形となります。
しかし
・軍主要幹部の賛同を得られなかった
・メンバーの意思統一がなされておらず民間人に危害を加え支持を失った
・既存組織の抵抗力(ヤン艦隊)の行動が迅速かつ強力だった
などの理由から失敗に終わりました。
実際の歴史からもクーデターの発生事由や成否の要因、失敗の法則を知ることで痛みを伴うほどの急激な組織改革において成否を分けるポイントが何かを検証してみたいと思います。
日本におけるクーデターの例
発生事由や成否の要因を深掘りするため痛みを伴うことも辞さない短期的な組織改革として日本のクーデターの例を5つ以下に挙げます。
・源平合戦(治承・寿永の乱)
年数 1180〜1185年
首謀者 源頼朝
成否 成功し長期政権樹立
政権 平家政権→ 鎌倉幕府(源氏政権)
発生事由 既存政権(平家)への不満
成功要因 頼朝の求心力、敵討ちの大義名分、武士の不満を解消、既存勢力と距離を置いた
・本能寺の変
年数 1582年
首謀者 明智光秀
成否 失敗?信長打倒だけが目的であれば成功
発生事由 既存政権(信長)への不満?(光秀の動機には諸説あり)
失敗要因 目的が不明確、賛同者が現れず、敵対勢力(秀吉)の迅速な対応
・2・26事件
年数1936年
首謀者 皇道派の陸軍青年将校
成否 失敗
発生事由 既存の政権への不満(元老重臣を倒すことで政治家による国家運営から天皇による直接政治を求める)
失敗要因 天皇の賛同得られず、軍内部の賛同者も増えず
・羽田派の造反
年数 1993年
首謀者 小沢一郎
成否 成功したが短命
政権 自民党 → 野党連合
発生事由 既存の政権への不満
成功要因 各所のメリットが一致(数の上で既存政権を倒すことはできたが結局は利害関係で空中分解し短命に終わる)
・日産ゴーンショック
年数2018年
首謀者 西川廣人社長
成否 成功したが短命
経営実権 ゴーン会長 → 西川廣人社長
発生事由 既存勢力への不満
成功要因 国家権力を巻き込む、世論への正統性アピール
この5つの例からクーデターの発生事由や成否の要因が抽出できるか考察してみます。
歴史に学ぶクーデターの発生事由と成否の要因
銀英伝での帝国軍事会議や上記の5つの例から抽出しますと
発生事由=既存組織への不信・不満+反勢力の台頭
となります。
既存組織の失策や腐敗により不平不満が溜まっている中に反勢力が台頭しだすとクーデターが起きやすい土壌が出来上がります。
また、成否例から抽出すると大きく3つの点が要因として考察されます。
成否の要因
①トップの求心力
②賛同者、支援者の数
③既存組織の抵抗力
①トップの求心力
→人間的魅力や大義名分、ドラマ性、明確なビジョンなどポジティブな要素を持ったトップ、リーダーの下では成功しやすい。(例;源頼朝の親の敵討ちという大義名分)
逆に既存組織への不信・不満というネガティブな要素だけで結束するのは瞬発力はあるが持続性がなく成功しても短命で終わるケースが多い。(例;羽田派の造反や日産ゴーンショック)
②賛同者、支援者の数
→クーデターは得手して強い思い込みや都合の良い解釈が先行してしまい周囲との意識のズレが生じることが多い。
変化を望んでいるのが自分たちだけではないか、周囲は本当に望んでいることなのかを見誤ってしまい賛同者、支援者が増えずに失敗するケースが多い。(例;本能寺の変、2・26事件)
逆に周囲の意見を上手に集約し実行することで長期政権の足場固めになることも(例;源平合戦→中央政権から軽んじられ所領安堵に不安を抱えていた武士の権利を守ることで政権を安定化)
③既存組織の抵抗力
→当然ながらクーデターを起こす側の方が既存組織より力で劣っている場合が多い。
そのため実行するにあたりタイミングとスピードが非常に重要になるが既存組織の抵抗力がこれを凌駕した場合成功しない。(例;本能寺の変)
失敗の法則
成否の要因はあくまで相対的であり3つの要因が全て揃ったからといって確率は上がりはしても必ずしも短期的な組織改革が成功するとは限離ません。
ただ、「本能寺の変」、「2・26事件」の失敗例や「羽田派の造反」、「日産ゴーンショック」のように改革は成功したのに短命で終わる例に共通する部分は「失敗の法則」と言っても過言ではありません。
それは以下の通りです。
組織改革・失敗の法則=
不満だけを取り除いても組織改革は結局うまくいかない
つまり既存組織の不平不満の部分ばかりにフォーカスして排除しても長期的には組織改革は失敗するということです。
なぜなら、悪い部分だけ取り除いたからといってより良くなるとは限らずまた別の悪い点が出てくる可能性があるからです。(がんを外科的に取り除いてもまた再発してしまう人間の体と似ています)
また、より良くなるというイメージがなければ求心力も生まれませんし、賛同者や支援者も集まりません。結果的に既存組織の勢力をこちら側に取り込まなければ相対的に既存組織の抵抗力も高いままになり成功の確率が低下してしまいます。
さらに不満の解消を目的としてしまうと結局は短絡的な目標に止まってしまい長期的な視点や結束力が損なわれます。
以上のことから組織改革において「不満だけを取り除くこと」は長期的にはうまくいかず「失敗の法則」といえると考察します。
まとめ
「勝ちに不思議の勝ちあり。負けに不思議の負けなし」、野球の名伯楽・野村克也氏が座右の銘とした言葉です。
成功に関しては運に左右される部分があるのに対し、失敗に関しては理論立てて法則化ができるものだと自分なりに解釈していますが、もしそうであれば不確定要素の大きい成功の共通要因を探すよりは、失敗の共通要因を探す方が簡単ですし再現性があるのではないでしょうか。
今回は銀英伝#21のクーデター失敗事例より組織における痛みを伴うほどの急激な組織改革の際の成否の要因と失敗の法則を自分なりに抽出させて頂きました。
企業経営においても既存組織の改革を進めるにあたり過去の例は参考になる点が多いかと思いますの参考になれば幸いです。(了)