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「私の家政夫ナギサさん」に学ぶ「傾聴」とその落とし穴
今回の「わたナギ」ではチームのメンバーのエンゲージメント(貢献意欲)を高めるため「傾聴」という手法が取られました。私もコーチングやカウンセリングの中で「傾聴」を学び実践してみて思うことは、「傾聴」素晴らしい技能ですが決して万能ではなく、落とし穴もあります。「わたナギ#6」のあらすじと共に「傾聴」とその落とし穴をご紹介します。
「私の家政夫ナギサさん#6」あらすじ(2020年8月11日放送)
ナギサさん(大森南朋)が実は自分と同じMRだったことを知ったメイ(多部未華子)は、ナギサさんの過去にますます興味を抱く。
しかしナギサさんは私生活については一貫して秘密主義を貫き、謎のまま…あの手この手でナギサさんの私生活を暴こうと、ついには尾行を決行!すると、いつもとは違うナギサさんの表情に出くわす。一方、メイのことが気になる田所(瀬戸康史)は、ナギサさんが本当にメイの父親なのかと疑心暗鬼になっていた...。
公式サイトより
※以下ネタバレ注意
先週の最後でナギサさんが業界最大手のMR(メイと同業)だったことが判明しましたが、ナギサさんがそこを辞めた理由やメイに対する過度な心配性?お節介の理由も少しずつ明らかになってきました。
また、仕事面では支店長の提案でリーダーのメイとメンバーが1on1でミーティングを行うことになるのでうすが、そのミーティングは1人30分でメイは「傾聴」に徹するというものでした。
同時に新規プロジェクトにメイのチームも参加することとなりこれまで以上に多忙になる中メンバーの天馬あかりが病院での新薬発表会の機会を得てますますてんてこ舞いに。
あまりの業務量に一度は諦めかけた仕事をやっぱりチャレンジしたいという声をあげたのが天馬でした。天馬はメイとのミーティングで自分の話を聞いてくれたことでメイやチームのために貢献したいとやる気に満ち溢れていたのです。
ナギサさんの過去やメイとチームの仕事振りが気になりますが続きは次週ということでまた来週が楽しみです。
「傾聴」の万能感と落とし穴
作中では「傾聴」が早速効果を発揮しました。(すごい万能感)
「傾聴」とはコーチングやカウンセリングで活用されるコミュニケーション技法です。
傾聴=相手の話を深く聴いたり、話し方や表情、しぐさといった非言語の部分に注意を払うことで相手を深く理解します。
そして「傾聴」の万能感はその前提にあると個人的には思います。
その前提とは「受容」と「共感」です。
「受容」=否定も肯定もせず、評価も加えずにありのまま相手を受け入れる
「共感」=価値観が違う相手でも相手の立場に立ち理解しようとする態度
「受容」と「共感」という前提は素晴らしいものですし「傾聴」という技法も効果的なコミュニケーション技法ですが、本来であれば豊富な知識や経験と技術が必要なものです。
ただ、「傾聴」にしても「受容」、「共感」にしても(実際にできているかどうかは別として)自分にもやってやれないことはない、何となく出来そうと思える手軽さが万能感の正体なのかもしれません。
しかし「傾聴」には明らかな落とし穴があるのです。
それは
①相手とのこれまでの関係性で効果が違う
②相手のタイプによって効果が違う
という点です。
「傾聴」の落とし穴①
「相手とのこれまでの関係性で効果が違う」というのは仮に初めて会うような関係やコーチング・カウンセリングの専門家として相手と会う場合は別として、上司や部下、教師と生徒、親子など既に知った仲の場合突然「傾聴」を行っても効果は低い場合が多いです。
例えば自分の親が急に「そうなんだ」「それで?」「そうなんだね」みたいな言葉遣いで傾聴されたとしたらこちらとしては「どうしたん?」と逆に心配になってしまいます。
つまりこれまでの関係性がある場合、その関係性が邪魔をして「傾聴」が難しいケースが往々にしてあるということです。
「わたナギ」を観て「傾聴」を部下や子供に試そうと思っている方はその点をご注意ください。
「傾聴」の落とし穴②
「相手のタイプによって効果が違う」とは相手のモチベーションタイプによって「傾聴」の効果は異なります。
分泌しやすい神経伝達物質とモチベーションを組み合わせて3つのタイプに分けられます。
・セロトニンタイプ=安全安心優先
・オキシトシンタイプ=人間関係重視
・ドーパミンタイプ=目標達成追求
「セロトニンタイプ」は安心安全を大事にするため、それが担保されるのであれば「傾聴」は効果があると言えます。また、セロトニンタイプは自己対話も得意なので「傾聴」が一番適するタイプと思われます。
「オキシトシンタイプ」は人との繋がりを重視するため「傾聴」によって人とのつながりを感じることがモチベーションにつながります。
今回の天馬あかりはおそらくこのタイプなのでメイに話を聞いてもらいやる気が出ました。ただし、このタイプは好き嫌いで判断するので「傾聴」する相手のことを嫌っていた場合効果はないどころか逆効果になるので注意が必要です。
「ドーパミンタイプ」は目標を達成することに燃えるタイプです。故に目標達成に関係のないことや無駄なことは嫌うので「傾聴」の効果がないどころかネガティブな感情が生じかねません。3つのタイプの中では「傾聴」を行うには一番難しいタイプですのでしっかりと「傾聴」の意味や効果を事前に伝えておかないといけません。
これらの分析はあくまで自分がこれまで「傾聴」を行った経験と相手のモチベーションのタイプ別に分類しただけで、科学的なエビデンスはございませんが、当たらずとも遠からずといったところかと思います。(ご参考;メイ、田所、薫のモチベーションタイプについて書いた以前の記事は↓↓↓)
まとめ
「傾聴」は導入のハードルが低い(と思いがちな)分、落とし穴があることに気付かず失敗するケースが多いです。
「傾聴」の落とし穴とは
①相手とのこれまでの関係性で効果が違う
→これまでの関係性が「傾聴」を邪魔することも
②相手のタイプによって効果が違う
→「傾聴」の効果が出やすいモチベーションのタイプと出にくいタイプがある
の2つにな離ます。
「傾聴」も医薬品同様、用量・用方を守って正しくお使いください。
本日は以上になります。
最後までお読みいただきましてありがとうございました。