『失敗の本質』と『日本はなぜ敗れるのか』を瞬読してみた
太平洋戦争になぜ負けたのか?その理由を考察した2冊の名著を「瞬読」で読み比べてみました。
『失敗の本質』瞬読時間25分7秒(以前に4、5回読んだこともあるが固有名詞や専門用語が多く文章も硬いので少しイメージしにくいかな)
『日本はなぜ敗れるのか』瞬読時間39分39秒(初見。やはり固有名詞や専門用語は多いが体験記をもとにしている分イメージはしやすい。アウトプットをするためもありスピードは遅め)
※瞬読についてはコチラ↓↓↓
共通点
太平洋戦争に敗れた理由を外部要因ではなく内部要因に求めた点で二つの著書は共通しています。
内部要因とは日本軍はどんな組織だったのか?日本人はどのような性質を持つのか?が戦争の勝ち負けにどう影響したかという研究です。
代表的なものとして
・実力よりも派閥が優先される組織人事
・理論よりも感情を優先させる判断基準
・長期的な展望の欠如と短絡指向
・内向きな思考に陥り外部環境を正確に判断できない
・内向きな思考に陥り上司に都合の良い情報しか伝えない
・努力で戦力差をカバーできるという盲信
などが挙げられます。
相違点
この2つの著書の違う点は
『失敗の本質』が軍事の専門家達によって書かれておりより研究色が強いのに対し『日本がなぜ敗れるのか』が戦争経験者の体験記が基になっているのでより主観的に感じます。
そいういう意味では前者が「演繹法」、校舎が「帰納法」的なアプローチと言えると思います。
また、『失敗の本質』ではノモンハン、ミッドウエー、ガダルカナル、インパール、レイテと歴史の教科書にも出てくる主要な戦闘を事例として研究しているのに対し、『日本はなぜ敗れるのか』では「バシー海峡」を敗因として挙げている。
不勉強で「バシー海峡」は今回初めて知りました。
ここは台湾とフィリピン・レイテ島の間にある海峡で補給船が通る要所でしたが米国潜水艦が多数配備されたことで大多数の船が沈没させられたとのことです。
あまりの被害に著書の中で「バシー海峡」を「死のベルトコンベア」といった表現を使っていました。
『失敗の本質』は研究色が強く主要な戦闘を分析し日本軍の敗北の理由を探しているのに対し、『日本はなぜ敗れるのか』では「バシー海峡」が米軍下に堕ちた時点で将棋でいうところの「詰み」の状態で補給線を絶たれた=「お前はすでに死んでいる」という敗北理由が異なり非常に興味深いです。
所感
「和を以って貴しとなす」という日本人の性質を表す言葉ですが、時にこれが暴走したり機能不全となりことを忘れてはいけないということを両著から教わりました。
安定した時代にはこのような日本人の性質も機能しますが、時代の変革期や有事に求められるのは多様性や変革力、目標を達成する強いリーダーシップであり日本人の性質には相性が良くないのかもしれない。
また日本人は多神論で柔軟性に富む反面、相対的にその場の「空気」「雰囲気」「人間関係」「組織」「成功体験」「前例」などに左右されてしまいます。
そのため「ルール」「客観的なデータ」「都合の悪い情報」「自分の意見」を殺してしまうケースが非常に多いです。
今回の2つの著書は太平洋戦争の敗戦を「日本的組織」や「日本人の特性」といった内部要因に求めた内容のため現代にも活用できる点が数多くあると思います。
また、「成功」ではなく「失敗」に着目した点も非常に重要です。「成功」は個別の要因や運に左右される要素があるので実は再現性は低いのですが、「失敗」は運の要素が入ったとしても結果が失敗なのでより本質が構造的に抽出しやすいからです。
加えて日本人は「恥と穢れ」を嫌う文化があり「失敗」を直視することが苦手なので「失敗」を本質的に研究すること自体が貴重でもあります。
日本の歴史上最大級のしくじりを日本の組織や個人の関係性を基に解き明かした両著は現代にも通じる点が多く非常に再現性が高い著作です。
マクロな視点からであれば「失敗の本質」
ミクロな視点からであれば「日本はなぜ敗れるのか」
がそれぞれお勧めです。(了)
本日の書籍①
作品名 失敗の本質 日本軍の組織論的研究
著者 戸部良一/寺本義成/鎌田伸一/杉之尾考生/村井友秀/野中郁二郎
文庫本 413ページ
本日の書籍②
作品名 日本はなぜ敗れるのか 敗因21カ条
著者 山本七平
文庫本 313ページ