勉強会@事業再生(NHK「逆転人生」より)
どーも、中小企業診断士の「どばしんだんし」です。
昨日は事業再生のzoom勉強会でした。
経営者や士業の方が参加をして、NHK「逆転人生」で先日放送された「陣屋」という温泉旅館が行った事業再生のエピソードを事前に視聴し、参加者で感想や自社やクライアントさんの状況と照らし合わせ活用はできるものはないかなど意見交換をする勉強会でした。
そこで得られた気づきなどを書き記したいと思います。
陣屋さんのご紹介
まず初めに今回事業再生の例として取り上げさせて頂いた陣屋さんについてご紹介いたします。
1万坪の広さを誇る庭園に、一歩足を踏み入れれば、そこはもう別天地。
ここは失われつつある日本の自然が息づいています。
桜が咲き、沢蟹がたわむれ、
蛍が舞い、鳥がさえずる。
一万坪の庭園に息づく自然に護られるように、いくつもの物語が、陣屋には集います。
草花や生きものたちを眺めてみたり、歴史を刻んだいくつもの物語に想像を巡らせてみたり。
陣屋での一日を、どうぞごゆるりとお過ごしください。
<陣屋公式HPより引用>
今回の勉強会参加者に1人実際に陣屋さんに泊まったことがある方がいて、その方曰く、
敷地内は自然が溢れライトアップなどもされているのでただそこを歩くだけでも幻想的な非日常空間を感じることができるそうです。
ただ、近くに目立った観光資源がなく交通アクセスも決して良いとは言えないので
陣屋さんに宿泊する人のほとんどは
「陣屋に宿泊すること自体が目的」
だとも話していました。
陣屋さんの業績不振の理由
では何故陣屋さんが事業再生が必要になったか、
そしてどう再生したのかをNHK「逆転人生」から引用させて頂きます。
<NHK「逆転人生」公式サイトより引用>
「コロナ新時代の先駆け旅館 逆転のヒントは“働き方改革”!?」
倒産寸前に追い込まれた老舗旅館。新米女将が平日を休みにする大胆な改革を行うと、まさかの利益アップで劇的再建!ブラマヨ吉田の働き方改革に、山ちゃんもビックリ!?
夫の実家の旅館に10億円の借金があることが分かった宮﨑知子さん。女将となり、経営再建に挑む。その目玉が客が少ない平日の3日間を休みにする驚きの改革。光熱費や食材費が抑えられ、利益は逆にアップ。休みが増えたスタッフたちは次々と新サービスを考案。旅館は見事再建を果たす。今、新型コロナの影響を受けながら、さらなる改革に挑む宮﨑さん。数々の旅館を再建してきた星野佳路さんと新時代を生き抜くヒントを探る。
放送内容から陣屋さんが業績不振に陥った理由をまとめますと
・伝統という名の思考停止に陥って顧客の求めるものを提供できていなかった
・仕事量に対して従業員が多すぎた
・従業員間で派閥ができたり、役割分担が明確化し過ぎて他の部署に意見したり他の業務を手伝うという意識が無かった
・自社の価値を上げる投資を怠った
などが挙げられます。
結局は顧客から目を離して自社や自分に目が向いてしまうとどんな事業でもおかしくなってしまうのだと思います。
その結果、現在の女将宮﨑知子さんが知った時には借金は10億円に膨れ上がり旅館を手放そうにも売りたくても値段がほぼつかない様な状況だったためしょうがなく旦那さんの実家の陣屋さんを継ぐことになったそうです。
陣屋さんが事業再生できた理由
陣屋さんが業績不振から脱却し事業再生できた理由もNHK「逆転人生」からまとめさせて頂くと
・従業員の派閥や垣根を無くし協力し合う風土を作る
・ITを導入し業務効率化
・老朽化した旅館設備への投資
・従業員からのアイデア募集
・週休3日制の導入
ただこれはあくまでノウハウであって、業績改善の本質は
「お客さんに愛されるにはどうするか?」
を徹底したことにあると思います。
これらの改革を行い見事業績を回復させ、10億の借金も返済できたそうです。
何よりこれまで旅館というと365日、24時間が当たり前で女将も休みが無かったそうですが、週休3日になったことで子供達と過ごせる時間も増え人間らしい生活が得られたと話していました。
勉強会参加者の紹介
陣屋さんのケースを参考にzoom参加した方々をご紹介します。
Aさん
・飲食店経営
・コロナで売上激減
・テイクアウトを始めたことで8月は過去最高の売上
Bさん
・飲食店経営
・コロナで売上激減&1店舗撤退
・GOTOキャンペーンへの対応で仕事量が激増し、売上は戻ってきたが利益が戻らない
・キャンペーンのポイントが付与されてからが本当勝負、それまでにまた来てもらえる店づくりを心掛ける
C さん
・食品製造販売経営
・コロナで給食やアンテナショプの売上が無くなる
・新商品の開発中
Dさん
・小売店経営
・コロナによる影響は無い、むしろ若干プラス
・以前から取り組んでいた効率化が功をそうし今期は過去最高益予想
・社長自ら改革を断行することで変化に対応でき、やる気のある社員が残った(この点は陣屋さんと共通する部分)
・事業再生したノウハウを同業他社にコンサルティングし新たな収益を確保(この点も陣屋さんと似ている)
Eさん
・不動産会社経営
・コロナの前からリモートワークに対応しておりコロナの影響はなし
勉強会での気づき①大事なのはやり方よりも目的
今回の勉強会で得られたく気づきは
やり方を真似しただけで成功はしない
という事です。
陣屋さんのようにシステム化や週休3日を導入したからといってどこの旅館も成功するかといえばそうではありません。
やり方は目的を達成するための手段ですから、
目的が違えばそのやり方も変わって当然です。
陣屋さんはお客さんが求めるもの、喜ぶことという目的を追求していった結果、システム化や週休3日というやり方がフィットしただけです。
結局重要なことは「やり方」よりも「目的」なのだということに改めて気づけました。
勉強会での気づき②数字で表せない部分こそが魅力
もう一つ勉強会で得られた気づきは
数字は便利だが完璧ではない
ということです。
陣屋さんも10億円の借金がある時には旅館を売却しようと思っても値段がつきませんでした。
あの星野リゾートも買取の相談が来たそうですが匙を投げたほどです。(その星野リゾートの社長も今回の逆転裁判に出ていたのが面白いですが笑)
決算書などの数字ではその当時の陣屋は
金融機関や士業の先生方、コンサルなどの専門家からすれば
もはや死に体で復活の望みなどないと諦められたいました。
しかし陣屋が復活できたのはもちろん女将たちの奮闘もあったと思いますが、
数字にならない強みや魅力があったからです。
協力体制が不十分なだけで従業員さん一人一人の能力が決して低いわけではないという強みもありましたし
自然豊かな1万坪の庭園や歴史と趣のある旅館などの魅力も隠れていたわけです。
数字は確かに客観的で誰が見ても理解ができる非常に便利な代物ですが、決して数字は完璧ではありません。
数字が表せない「強み」や「魅力」を見つけられる力こそが経営者やコンサルタントに求められる目利きの力なのだと気付かされました。
勉強会での気づき③経営者はペースメーカー
事業再生をする上で一番の矛盾が起きやすい点は
リストラをする際に
優秀な人材ほど先に居なくなり、
能力がない人ほど組織にしがみ付くということです。
これを解消するには
経営者自身がペースメーカーになるしかありません。
ペースメーカーとは陸上の長距離走において良い記録を出すためゴール出来なくても早いペースで序盤に先頭集団を引っ張る役目の人です。
別名ラビットとも言います。(関根勤のことではありません笑)
陣屋の女将やD社長の様にどんどん新しいことを導入していくと、
古くてそれについていけない(生産性の低い)人はどんどん辞めていき
チャレンジすることや変化に前向きな人が自然と残っていく様になります。
経営者が自ら変革を続けると結果的に変化に対応できてチャレンジ精神旺盛な社員が多くなり企業は活性化するということです。
まとめ
今回NHK「逆転人生」で陣屋さんを題材にした事業再生の勉強会を開催しまして
・大事なのはやり方よりも目的
・数字で表せない部分こそが魅力
・経営者はペースメーカー
という3つの気づきを得ることができました。
経営基盤が盤石な大手企業は別として、
中小企業は良くも悪くも経営者の資質や能力が業績に直結します。
今回のような気づきはさまざまな業種や経験を経た経営者や専門家がいらっしゃたからこそのものです。
今後とも様々な業種の経営者や士業の先生方、専門的なコンサルタントの方々の意見を取り入れつつ事業再生に関わる情報発信をしていきたいと思います。(了)