帝国航空が「筋トレがんがんやってデカくなったけど全然打てないプロ野球選手」に思えた理由<半沢直樹から学ぶ企業経営>

「帝国航空」とはTBSドラマ「半沢直樹」に出てくる日本を代表する航空会社です。8月16日放送の「半沢直樹#5」を観てこの「帝国航空」が「筋トレがんがんやってデカくなったけど全然打てないプロ野球選手」に思えてなりません。
その理由は「帝国航空」が能力も意識も高い社員を擁しながら、それを組織として上手く活かせていない姿が重なるからです。
ただ、これはドラマやスポーツの話にとどまらず昔から続く日本人や日本的組織が陥りやすい特性がその根底にあると感じたので「半沢直樹」の内容と併せて詳しくご紹介していきたいと思います。

今週の「半沢直樹」

あらずじ(公式サイトより)
IT企業・スパイラルの買収劇をめぐり、電脳雑伎集団の粉飾を突き止めた半沢直樹(堺雅人)は、東京中央銀行を救った立役者として本店への復帰を果たした。だが復帰早々、中野渡頭取(北大路欣也)から直々に破綻寸前の帝国航空の再建を任される。
帝国航空は日本の空輸を担い、まさに国を代表する大企業だが、近年の経営状態は決して芳しくない。しかし、労働組合やOBの力が強いため大胆な改革もままならず、もはや身動きが取れなくなっていた。
そんな矢先、新たに国土交通大臣に就任した白井亜希子(江口のりこ)が会見で帝国航空の大胆な改革を華々しく提案する。彼女によれば、弁護士の乃原正太(筒井道隆)をリーダーとした直属の再建チーム「帝国航空再生タスクフォース」を立ち上げ、帝国航空に債権を保有しているそれぞれの銀行に、一律7割の債権放棄を検討しているという。
もしこのプランが実現すれば、東京中央銀行はおよそ500億円もの債権を手放さなければならなくなってしまう。半沢は何としても帝国航空を自力再建させるため、帝国航空へと乗り込むが、そこには一筋縄ではいかない巨大な壁が待ち受けていた…。

「帝国航空」が国の管理下に入らず本当に自力で再建できるかを見極めるため半沢が会社の中を色々と観て回るのですがそこに描かれたいたのは「伝統の功罪」でした。
「伝統の功」としては日本を代表する航空会社というプライドを元に教育や挨拶がしっかりと行き渡っており社員1人1人の意識や能力がとても高いという面です。
「伝統の罪」としては過去の慣例に疑問を持たないため問題解決の意識や自分が関わる部門だけよければ良いという縄張り意識が横行していました。
半沢は「功」の部分を評価し、「罪」の部分をどうにかすれば「帝国航空」は自力再建が可能だと判断し独自の再建案を作成します。
しかしそれは国に対して反旗を翻すということでもありました。
その判断が今後どう影響していくのか?
次週の放送も楽しみです。

なぜ帝国航空が「筋トレがんがんやってデカくなったけど全然打てないプロ野球選手」に思えたのか

ではなぜ「帝国航空」が「筋トレがんがんやってデカくなったけど全然打てないプロ野球選手」に思えたのでしょうか。(※特定の選手を誹謗中傷しているわけではありません)
それはこの二者に「目的を見失いがち」と「部分最適全体最悪」という共通点があるからです。

1つ目の「目的を見失いがち」に関しては「帝国航空」の社員教育やプロ野球選手の筋トレが何の目的で行われたか見失うなわれているという点で共通します。
社員教育にしても筋トレにしても元来はパフォーマンスの向上するための「手段」でお客さんやファンを喜ばせることが「本来の目的」だったはずです。
しかしながらいつの間にか「本来の目的」を見失ってしまって手段と目的がごっちゃになってしまっている点が共通しています。

2つ目の「部分最適全体最悪」に関しては「帝国航空」の業績が回復しない理由とプロ野球選手が打てない理由で共通します。
その理由とは部分(社員や筋肉)の能力は磨かれていても、全体ではその良さを活かせていないので結果に繋がっていないからです。
言い換えると部分にばかり固執して全体のバランスをとって積極的に最適化することができていない点が共通しています。

この2つの共通点が「帝国航空」が「筋トレがんがんやってデカくなったけど全然打てないプロ野球選手」に思えた理由です。

日本企業の問題点①

「目的を見失いがち」と「部分最適全体最悪」という問題点は何も「帝国航空」の専売特許では無く、日本のほとんどの企業が大なり小なり抱えている問題だと思います。

ではなぜこのような問題点が多くの日本企業で起きてしまうのでしょうか?

一つ目の「目的を見失いがち」な原因は日本人の八百万神(ヤオヨロズノカミ)的な観念のためです。

「八百万神(ヤオヨロズノカミ)」とはありとあらゆるものに神様が存在するという日本古来の観念で、これは良く言えば時と場所によって臨機応変に信念や考えを変えられる柔軟さを表しますが、悪く言えば絶対的な信念が無いとも言えます。

絶対的な信念が無ければルールや法律よりも時に組織の「空気」「雰囲気」「伝統」「前例」が優先されてしまします。(例、赤信号みんなで渡れば怖く無い)

つまり日本人は良くも悪くも時と場合によって信念が移ろいやすく、時に「目的を見失いがち」になってしまします。

日本企業の問題点②

二つ目の日本企業の問題点として「部分最適全体最悪」という問題が起きてしまう原因は日本人の「芸や道」と「恥と穢れ」という特性のためです。

「芸や道」とは日本では昔から「芸事(ゲイゴト)」や柔道、剣道などの「道(ドウ)」が好まれてきましたが、この「芸や道」も良く言えば何かを究めるためにはどんな努力も惜しまないという日本人の特性を表しますが、悪く言えば盲信(短期的かつ狭い視野)に繋がります。
これは自分が所属する組織の利益を最優先に考え全体的な視野が欠乏してしまい、縦割りや縄張り意識が起きてしまう原因です。

また「恥や穢れ」は昔から日本人が忌み嫌ってきた観念で、良く言えば日本人の清廉性という特性につながりますが、悪く言えば臭い物には蓋をしてしまい真実を真正面から受け止めることを嫌います。
そうなると良い情報ばかりが行き交って悪い情報は隠蔽してしまうため正確な現状把握ができなくなります。
また、「恥や穢れ」を嫌うあまり誰も責任を取りたがらず結果的に組織の責任と権限が曖昧となってトップの覚悟と実行力が失われます。

以上のように日本企業の「目的を見失いがち」と「部分最適全体最悪」という二つの問題の原因は日本人が古来から持つ
「八百万神」
「芸や道」
「恥と穢れ」
という根源的な特性に由来してます。

(ご参照;以前に日本人と日本的組織の問題点について書いた記事ですので併せてご覧いただければ幸いです。↓↓↓)

日本企業の希望

ここまでドラマ半沢直樹の「帝国航空」を基に日本人と日本的組織の古来からの問題点を挙げてきましたが、はたして日本企業に希望は無いのでしょうか?

思うに日本人は『レーシングタイヤ』の様な国民性なのだと思います。(争いを好まずどれだけ穏便に解決するかという、如何に様々な摩擦を減らせるかに特化された特性を持つという意味です。)

『レーシングタイヤ』はグリップ力は無いのでカーブには向きませんが、ストレートでこそその強さを発揮できます。実際に高度経済成長や震災の復興などやるべきことが明確な時ほど日本人はその強さを発揮してきました。

現在はVUCA(変動性、不確実性、複雑性、曖昧性)の時代と言われますが、その中で日本企業の良さを発揮させる為には

・確固たる信念、ミッション(存在目的)を明確に提示できる
・部分に固執せず全体の最適化を考えることができる
・悪い情報も素直に受け止め責任と覚悟を持って改善を実行できる

これらを兼ね備えたリーダーが必要です。

そんなリーダー像を「半沢直樹」に求めているのかもしれません。

今後の展開で「日本企業の希望」の姿を見せてくれることを期待して次週以降のドラマを楽しみにしております。(了)

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