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「自由」という名の天使と悪魔&悪魔の暴走を阻むクリティカル・シンキング(銀英伝#19から学んだこと)

「自由」という言葉ほど人によって解釈やイメージが違う言葉も珍しい。だからこそ「自由」という言葉は天使にも悪魔にもなり得る。今回の『銀河英雄伝説#19』は「自由」という言葉が悪魔にもなることを考えさせられるエピソードでした。また、悪魔の暴走を阻む「クリティカル・シンキング」についてご紹介します。

銀河英雄伝説とは

どーも、中小企業診断士の「どばしんだんし」です。
個人的なスキと企業経営を掛け合わせた情報提供を日々発信しております。
ところで『銀河英雄伝説』をというアニメをご存知でしょうか?
累計1500万部を誇る田中芳樹原作のSF小説を長編アニメ化したもので本伝110話、外伝52話、長編3作という大作です。
私が大学生の頃に加入していたケーブルテレビのアニメ専門チャンネルで放送していたのを観たのがきっかけですっかりハマってしまいました。
そしてこの4月からNHK Eテレで新たに製作し直された『銀河英雄伝説 Die Neue These』が放送されています。(公式サイトは↓↓↓)

『銀河英雄伝説』のストーリーは以下のとおりです。

数千年後の未来、宇宙空間に進出した人類は、銀河帝国と、自由惑星同盟という“専制政治”と“民主主義”という2つの異なる政治体制を持つ二国に分かれた。この二国家の抗争は実に150年に及び、際限なく広がる銀河を舞台に、絶えることなく戦闘を繰り返されてきた。長らく戦争を続ける両国家。銀河帝国は門閥貴族社会による腐敗が、自由惑星同盟では民主主義の弊害とも言える衆愚政治が両国家を蝕んでいた。そして、宇宙暦8世紀末、ふたりの天才の登場によって歴史は動く。「常勝の天才」ラインハルト・フォン・ローエングラムと、「不敗の魔術師」と呼ばれるヤン・ウェンリーである。ふたりは帝国軍と同盟軍を率い、何度となく激突する。(公式サイトより抜粋)
 私なりにまとめると

銀河帝国 対 自由惑星同盟
専制政治 対 民主政治
ラインハルト 対 ヤン

という敵対する組織に所属する2人の主人公を通してそれぞれの正義や信念が描かれており、そのどちらにも共感できるというとっても悩ましいアニメになります。
そしてこのアニメはリーダーシップや組織運営、競争戦略などビジネスや企業経営にも役立つ情報が満載です。

今回の放送内容(2020年8月10日放送)

#19ドーリア星域の会戦
救国軍事会議に制圧されたハイネセンを解放するべくイゼルローン要塞を出発したヤン艦隊は、兵站(へいたん)の拠点確保のため、まずは武力叛乱の起きた辺境惑星シャンプールへ向かった。駐留艦隊を持たないシャンプール叛乱軍との戦いは、シェーンコップが率いる陸戦隊の独壇場となり、わずか3日で叛乱軍を鎮圧。市民からも熱烈な歓迎を受けた。そんな中、ハイネセンから脱出してきたという情報部のバグダッシュ中佐がヤンとの面会を求めてくる。
(公式サイトより)


※以下ネタバレ注意

今回は自由惑星同盟側のクーデターの話で#17の続きでした。(ご参照;#17を書いた記事は↓↓↓)


今回は銀英伝の中でもトップクラスに凄惨なエピソードです。
救国軍事会議によるクーデターを批判した平和集会が開かれ、軍がそれを最終的には武力で抑え込んだため集会に参加した市民に大量の犠牲者が出てしまいます。
その中で平和集会を開いた首謀者としてジェシカ・エドワーズが殴殺されてしまうのですが、このジェシカは主人公のヤンと深い関係があります。

ジェシカはヤンの士官学校時代からの親友ラップと幼なじみで学生時代からよく3人で連んでいました。
ジェシカはヤンのことが好きでしたが、ヤンは親友のジャンがジェシカを愛していたことを知っていたのでジャンがジェシカに求婚することを応援します。
そんなヤンの姿を見て気持ちを決めジェシカはジャンと結婚するのでした。
しかしその後ジャンは戦死、ジェシカは反戦運動に傾注し後に議員に当選するまでになります。

そんなジェシカが軍人に殴り殺されるわけです。

戦争を描く作品ですからこれまでも誰かが亡くなる描写はありましたし数字上では何百万人の将兵が一度の戦いで殉職したりもしますが、ジェシカの死は顔も名も知らない無数の死よりも親しい1人の死が心の響く矛盾を教えてくれます。


消極的自由と積極的自由

今回の話から「自由」という言葉について調べてみたところ、「消極的自由」、「積極的自由」というユダヤ人のアイザイア・バーリン(Isaiah Berlin)によって、『自由論』(Two Concepts of Liberty/1969年)で提唱された概念があることを知りました。

「消極的自由」=個人の行動・選択の自由が他人によって干渉されないこと
「積極的自由」=より高い価値の実現のために自律的に行動すること

自分なりに解釈すると

「消極的自由」=奪われない自由

「積極的自由」=求める自由

でしょうか。

同じ自由惑星同盟にありながら、反戦を訴えた(自由惑星同盟は銀河帝国の圧政に苦しむ人民を解放し自由にすることが戦争の目的)ジェシカが「消極的自由」の象徴であり、自らの掲げる「自由」を実現するためクーデターを起こした救国軍事会議が「積極的自由」の象徴のように思えます。

エーリッヒ・フロム(Erich Seligmann Fromm)が『自由からの闘争』(1941年)で他人に干渉されないことを望んだ結果孤独な人が増え強力な支配者やナショナリズムに引き寄せられ戦争の温床になったと「消極的自由」を批判しました。

しかしながらバーリンは「積極的自由」の行使は、他人の自由を阻害する可能性がある面で問題があるため、守るべきは「消極的自由」であると主張しました。


自由という名の天使と悪魔

「自由」と聞くと多くの人が良い面を思い浮かべるでしょう。

しかし「積極的自由」は時に他人の自由を侵害します。

今回のジェシカと反戦運動に参加した市民に対する救国軍事同盟の武力制圧はまさに「積極的自由」が暴走し他人の自由を侵害することを象徴するエピソードでした。

「自由」という言葉にも天使の顔と悪魔の顔の両面があって、自分の自由が他人の自由を侵害するという悪魔の顔を忘れてはいけないという戒めです。

悪魔の暴走を止めるには

このような悪魔の暴走を止めるにはどうしたら良いのでしょうか?

悪魔が顔を覗かせるのは「自由」という言葉に対して自分の思う「自由」だけを「盲信(=思考停止)」した時だと思います。

そのような盲信を増えぐ手立てとして「クリティカル・シンキング」があります。

クリティカル・シンキングを直訳すると「批判的思考」となりますが、ただ物事を批判的に捉える思考という意味ではありません。
クリティカル・シンキングとは、目の前にある事象や情報を鵜呑みにせず、まず「それは本当に正しいのか」と疑問を持ち、じっくり考察した上で結論を出す思考法を指します。

「ロジカル・シンキング」(論理的思考)は物事の前提に疑問を持ちませんが、「クリティカル・シンキング」ではそもそもの物事の前提に疑問を持つことが出発点です。

また「クリティカル・シンキング」には3つの基本姿勢があります。

①目的は何かを常に意識する
まずは、思考を始める前にその「目的」を考える事です。目の前の事象にばかりとらわれず、「そもそもその目的で合っているのか?」と疑問を持つ事で、その検討や議論は、より意味のあるものに変わります。
この目的が定まっていなければ、論点が定まらず意味のない議論に時間を費やしてしまう事になりかねません。目的は思考を進める上で軸となる重要な要素であると言えます。

②自他に思考の癖がある事を前提に考える
人間は誰しも「思考の癖」を持っているという事を認識しておく必要があります。その人が育ってきた環境や、学んできた知識によって思考は構築されています。つまり、人によって常識や前提だと思っている事は違うという事です。
まずは自分自身の出した考え自体に疑問を持ち、客観的な視点を持つ事によってその癖を把握する事ができます。

③問い続ける
最後に、安易に結論に辿り着くのではなく、疑問が出なくなるまで「問い続ける」という点です。「だから何?」「なぜ?」「本当に?」この3つの疑問を常に持ち続け、その事象の本質を見極めます。
そうする事で、まずは思考の習慣が身に付く事、そして物事を深堀りする事で、見えなかった新しい発見に出会える事もあります。
出所;グロービス経営大学院 著「改訂3版 グロービスMBAクリティカル・シンキング」ダイヤモンド社

今回の救国軍事会議の暴走も反戦運動の対応に当たった現場責任者がこの「クリティカル・シンキング」を実践し

①目的を常に意識する=何のためのクーデターか常に意識する
②自他に思考の癖がある事を前提に考える=相手の自由(の概念)を受容する
③問い続ける=疑問を解消できるまで考え抜く

という3つの基本姿勢が徹底できていれば悪魔の暴走は防げたかもしれません。


まとめ

今回の「銀英伝」のエピソードより「自由」には「消極的自由」と「積極的自由」があり、「積極的自由」は時に暴走し他人の自由を侵害することを学びました。

「自由」という悪魔の暴走を止める手立てのひとつとして「クリティカル・シンキング」(批判的思考)があり

①目的を常に意識する
②自他に思考の癖がある事を前提に考える
③問い続ける

という3つの基本姿勢を守ることで「盲信(=思考停止)」を防ぐことが出来得る。

本日は以上になります。

最後までお読み頂きありがとうございました。



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