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タイランド・ロックダウン(15)4月5日(日):手作りマスクでひとまず安心

これを書き出して、早2週間が過ぎた。いつまで続くかわからないが、ロックダウンが終わるまで書き続けることができればと思う。

1.最悪のケースは

先日、読んだコラムに、人生は、最高と最悪の間にしかならないとあった。

では、新型コロナウィルスのケースで最悪の場合は、例えば、今、自分が罹患したような状態になった場合には、どうなるのだろうか。妄想してみる。

■防備
  毎回、外に出る時には、マスクをしているし、アルコールジェルも持っている。店に立ち寄るときには、アルコール消毒して、車に乗るときにもアルコールで手を洗う。家に着けば、靴を脱ぎ、上着は外で脱いで、すぐにシャワーに向かう。髪の毛を洗い、体を洗い、手を洗い、うがいもする。外に来ていった服は、ベランダに置くようにするほど、気をつけている。
  仕事の話は、電話かオンライン会議。メールとネットで仕事を進めていく。クライアントの中には、稼働を休止するところもあるが、ほとんどが動いている。動かなければ稼げない。そんな感じだ。
■体調の変化
  なんとなくだるい。乾いた咳をするようになった。まだ、熱は出ていないが、気をつけないといけない。家族にうつしたら大変なことだから、今日から寝室は別々にしよう。家にいても手洗いやのどについたウィルスを胃酸で退治する「水ゴク」はしっかりやろう。それでも体調がすぐれない時にはどうすればいいのだろうか。心配になってきた。
■問合せ
  体調不良が続くので、電話で診断してもらうようにした。熱も出てきた。それが続いていることを伝えたら、指定された政府系病院に来るように言われた。もちろん、一人で行く。タイ語ができるとはいえ、一抹の不安を感じる。万が一のことを考え、数日分の着替えと携帯電話の充電器、パソコン一式も持っていくことにした。
■病院にて
  PCR検査を受けることになった。症状から、陽性の確率が高そうだということで、隔離施設である軍の施設に移動する。電話で連絡はできるが、なにせ、タイの施設なので、タイ語しか通じないのが困る。自分のタイ語力でも何とか意思の疎通ができるのがありがたいが、体がしんどい。ここ2週間の行動と接触した人を思い出して、書き出していく。妻、子供、義母の家族はもちろん、市場に行った時のお店の人の顔が目に浮かぶ。近所のセブンイレブン、コインランドリー、テークアウトのカフェやタイ料理屋、そういえば、日本料理屋にも立ち寄っていた。J-PARKでスーパーマーケットでも買い物したことを思い出す。
  心配させてもいけないので、家には定期連絡をするようにした。また、仕事や趣味の活動についても、知人や友人に連絡をするようにして、自分の手から離していく準備をすることにした。
■PCRの結果:陽性
  結果は陽性だった。事細かにヒヤリングを受ける。濃厚接触者は、家族の3人のみ。ご近所や立ち寄った場所の人は、接触者としてリストアップされるかもしれない。いよいよ、高熱がきつい。体が言うことを聞かない。肺炎の苦しみにおびえながら、自分の体を信頼しよう。気持ちだけは明るく持って。糖尿病でも、高血圧でもなかったじゃないか、コレステロールは少し高かったけど。と自分を励ましてみる。ここ数日が山場だなと思う。
■息苦しさがやってきた
  たばこも吸わないので、肺はいたって健康と思っていたが、この新型コロナウィルスは、容赦しない。肺の奥で増殖しているのか、たまに出る咳が止まらない。そして、息苦しさって、こういうことかと身をもって知ることになった。酸素が届かず、脳にダメージが起きたような、変な想像が頭をよぎる。そんなことはない。必ず良くなる。回復して生きる。
■だめだ、人工呼吸器を
  苦しい。お願いだ、人工呼吸器をつけてくれ!と日本語で叫んだところで、ここはタイの病院。わかってくれない。医師と看護師が話をしている。タイ語がわかるので、なんとなく、相当悪いこともわかってしまう。人工呼吸器をつけるために、いろいろと周りがあわただしい。家への定期連絡は昨日からできていない。さぞかし、心配していることだと思う。
■人工呼吸器で、なんとか安定した
  人工呼吸器でなんとか安定したようだ。頑張れ、ここで死ぬわけにはいかない。ここから回復した人だって、たくさんいるはずだ。もう、意識がもうろうとしている。そして、意識が遠のく……。
■「夫は死にました。」と妻が泣いている。
  昔、見た夢で、自分がそらに飛べるようになった夢があった。今、そんな感じで、空を飛んでいる。空の上から、家族が見える。
  幸い、家族にはうつっていなかったようだ。みんな陰性だった。でも、妻は、泣いている。私は死んだようだ。葬式の前に遺骨になって、近くのタイ寺に戻ってきた。お坊さんがお経をあげてくれている。幸いにも、家の近くのお寺は、新型コロナウィルスで亡くなった人も、葬儀をしてくれるということだ。仲のよかった友達には、妻が連絡してくれたようだ。でも、この状況、バンコクから来ることもできず、葬式はひっそりと身内だけで行った。
■残された家族が大変だ
  私は日本人だから、在タイ日本大使館に届け出をしなくてはいけない。死亡証明書をもって、銀行口座の解約、会社登記の変更や会社の閉鎖、取引先との残務処理など、悲しんでいられないほどの残務が残る。落ち着いたら、静岡のお墓にお骨をもっていってもらおう。でも、いつ、日本に渡航することができるのだろう。それすら、わからない。
■うつした人はいなかった
  私から、うつった人はいなかったようだ。よかった。人にうつしていたら、残された家族は、今以上に大変なことになっていたかもしれない。そして、その人が亡くなったなら、悲しむ人も増えることになる。よかった。

新型のウィルス性疾病は、これからもどんどん発生して、人類に戦いをしかけてくるだろう。それに立ち向かうよう、人類は叡智を集め進化していくだろうし、これは、僕らが生きていく限り、人類が生きていく限り、繰り広げられるに違いない。では、今、何をすべきなのか。

僕は、今を幸せに生きること、今を豊かに生きること、自分だけでなく人のことも考えること、自分ができることはやっていくこと……。

それと共に、理不尽に自分の人生と大切な人の人生が終わらないように、最新の注意をもって、この新型コロナウィルスに対峙しなくてはいけない。

そして、最後に、直観が働いたら、行動すること。後悔をしないために。

例えば、昔お世話になった人のことが頭に浮かんだら、メールをする、電話をする。素敵な投稿を見たらいいねをする、コメントをする。何かをしてもらったら、ありがとうを伝える。喧嘩はしない、悪い言葉は使わない。自分でできることがあれば、提供する。

取り返しのつかないことになることがあるってことに気が付く時なんだと思う。

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