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ITという虚構産業

はじめに:ITは「実体」なのか?

IT業界は、世界経済の中心となり、GAFAをはじめとする巨大テック企業が市場を支配している。
しかし、一歩引いて考えてみると、ITという産業は他の伝統的な産業と異なり、物理的な「実体」が極めて薄い。

例えば、製造業であれば工場や製品があり、農業ならば作物が収穫される。
だが、IT業界は「データ」「コード」「プラットフォーム」など、形のないものを扱っている。

では、ITは「虚構」なのか?
それとも、これこそが現代の「リアル」なのか?

本稿では、IT産業の虚構性を解き明かしながら、その本質に迫る。


1. ITが生み出すものは「現実」ではない

IT産業の大半は、仮想空間の中で価値を生み出している。
その最たる例が「SNS」や「メタバース」だ。

  • X(旧Twitter)やInstagram → デジタル空間の情報を操作することで、広告収益を生み出す

  • GoogleやAmazon → データを売るビジネスであり、実体のない情報流通が主な価値

  • NFTや仮想通貨 → 物理的価値がないのに、価格が変動し、経済を動かす

こうしたサービスは、物理的な実体を持たず、データの組み合わせによって「価値があるように見せている」にすぎない。

つまり、IT産業は”何かを生産している”のではなく、虚構のシステムを構築し、人々に「価値がある」と思わせる産業なのだ。


2. 「所有」から「アクセス」への転換

ITによって、私たちの経済は「モノを所有する」から「アクセスする」へと変わった。

  • 音楽(CD → サブスク)

  • 映画(DVD → ストリーミング)

  • 本(紙 → Kindle、電子書籍)

  • 車(購入 → カーシェア)

この変化によって、「モノを所有する」ことの意味が薄れ、デジタルデータにアクセスするだけで満足できる社会になった。

つまり、IT産業の本質は、「何も持たずに、持っているような感覚を与える」ことにある。

この点において、ITは究極の「虚構」を生み出していると言えるだろう。


3. ITバブルと「期待」という幻想

IT産業の価値は、常に「未来の可能性」によって支えられている。
これは、過去のITバブル(2000年代のドットコムバブル)でも明らかだった。

  • 「この会社は将来すごいことをやる!」 → だから株価が上がる

  • 「このサービスは世界を変える!」 → だから投資する

しかし、その期待が崩れると、一気に価値が消えてしまう。
まるで「砂上の楼閣」のように。

実際に、

  • WeWork(不動産をITと偽ってバブル崩壊)

  • 仮想通貨バブル(ビットコインが急騰・暴落)

  • AIブーム(過度な期待と投機)

これらは「ITの未来」を期待した幻想が作り上げた虚構だ。
つまり、IT産業の本質は、「未来への期待」を売ることで成り立っているのだ。


4. それでもITが不可欠な理由

ここまでIT産業の「虚構性」を語ってきたが、それでもITは現代社会にとって必要不可欠な存在だ。

なぜなら、人間は「虚構」を信じる生き物だからだ。

  • 貨幣も「幻想」 → ただの紙なのに、みんなが価値を信じるから成立する

  • 国家も「幻想」 → 国境という物理的な壁はないのに、人々が国の存在を信じている

  • 宗教も「幻想」 → 目に見えないものを信じることで、社会が成り立っている

IT産業もまた、この「幻想を共有する仕組み」を拡張したにすぎない。
そして、私たちはこの虚構なしには生きられないのだ。


5. ITの未来:虚構を超えていくために

では、ITはこのまま「虚構のまま」で終わるのか?
答えは、NOだ。

ITは今、「リアル」に近づこうとしている。

  • AIとロボティクスの融合(デジタルが現実世界を動かす)

  • デジタルツイン(現実と仮想のリンクが強化される)

  • エッジコンピューティング(物理世界でのリアルタイム処理)

これらの技術が進化することで、ITは単なる「虚構」ではなく、実際の物理世界と結びつく「リアル」になっていく。


結論:「虚構」を操れる者が未来をつくる

IT産業は「虚構」だ。
しかし、それは単なる偽りではなく、人間が生きるために必要な虚構である。

そして、この「虚構」を操ることができる者こそが、未来を創っていく。

AI、メタバース、デジタルツイン——
これらの技術が進化する中で、私たちは「虚構と現実の境界」をどう定義するのか?

もしかすると、未来では「IT=虚構」という考え自体が、過去のものになるのかもしれない。

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廣石雄大/京都在住の経営者
興味を持っていただいてとても嬉しいです!現代社会やビジネスの現場で日々奮闘されている皆さまの思考が整理され心が少しでも前向きになれるような発信をしていきたいと思っています。応援よろしくお願いします!