架空のラジオ
架空のお便り
こんばんは、赤月ゆにちゃん様。
人気番組『赤月ゆにの月曜日の月は赤い』、第2回の配信も楽しく聞かせていただきました。
今からするのはいくらか不躾な相談なのですが、お許しください。
……というのも、前回、第2回のラジオを聞きながら「あれ、この赤月ゆにちゃん、私の頭の中にある赤月ゆにちゃん像と違くない?」と感じてしまったのです。
それだけなら、「なんだ、新しいイメージに更新すればいいじゃないか」「もっと生の美少女吸血鬼に向き合いなさい」などと思われるかもしれませんが、問題は、最近私が『赤月ゆにの今日は何の日?』の模倣にハマっていることです。
言うまでもなく、これは赤月ゆにらしさを模倣し、再生産し、更なる他者に伝達する吸血鬼活動の一環なのですが、その際、自分は本家の『赤月ゆにらしさ』を歪めて発信してしまっているのではないか? だったら模倣自体をやめるべきなのか? うーん……。
話をまとめると、こうなります。
ずばり、赤月ゆにちゃん様は自身のミームの不完全な模倣についてどう思いますか? (別に構わない、不完全ならやめた方がいい、など)
架空の赤月ゆに
なるほど、君の懸念はこの美少女吸血鬼、赤月ゆに本人がしかと受け取った。私のミームを模倣、拡散しようとしてくれていることについては本当にありがたい限りだ。
視聴者諸君ももっと見習って、たくさん私の真似をするように。
ええ、それはともかく。
話は戻って不完全なミームの模倣についてだけど、結論から言うと、君は今のままでいい。今まで通り「あれ、違うかな?」と思っては修正したり、あるいは修正しないで模倣したりしてくれればいい。
そして本家……つまりこの私自身とのズレを恥じることはない。
これには大きく二つの理由がある。
一つ目の理由。
それは私自身、いつだって『赤月ゆに』らしいとは限らないこと。
考えてもみてほしい。誰にだって「らしくない」瞬間というものはある。その日その時の気分や状態なんかで、赤月ゆにが赤月ゆにらしくない言動をすることだって十分ありうるんだ。だから、あんまり厳密に『赤月ゆにらしさ』を追い求めることには意味がない。私の日々の言動を見ながら、「だいたいこんな感じかな?」で模倣するくらいがちょうどいいんだ。
二つ目の理由。
ヒントになるのは多様性だ。
私がミームの動画で話した内容をよく思い出してほしい。確かこんなことを言ってなかっただろうか? 「もともと首の長いキリンの中から、特に首の長かったキリンが生き残って……」とか、「発生、変異、選択……」とか。
思い出せなかった眷属のためにおさらいしておくと、吸血鬼はミーム(模造子、模倣子ともいう)を媒介に増える。そしてミームは、生の生物と同様、自身の情報を含んだ子孫を残すんだけど、その際にはたらくのが発生、変異、選択の三つのプロセスだ。
まずある情報が発生して拡散する。すると拡散先で変異、つまりマイナーチェンジ版が生まれる。そして数多く生まれたマイナーチェンジ版の中から、中でも特に生き残りやすかったミームだけが更なる子孫を残す……という話だな。
ピンとこなかった諸君はこの配信が終わった後で、私の動画を見てきちんと復習しておくように。
ええと、要するにだ。
君が赤月ゆにのマイナーチェンジ版を無意識のうちに作り上げていたとしても、そもそも何の問題もない。どころかそうでなくちゃ困る。
生身の動物がそうであるように、画一的な情報もまたちょっとした環境の変化によって絶滅してしまいやすいからね。あるいは飽きられて忘れ去られたりとか……。おお、怖い。
……というわけで、君が頭の中にオリジナルの赤月ゆに像を作り上げていることにはそもそも何ら問題がなかったわけだ。おわかりいただけたかな?
このラジオを聞いている君たちも、オリジナルの赤月ゆに像を作り上げて発表しよう。そしてゆくゆくは地球の人間全てを私の眷属にするのだ……!
以上、ミレニアム人生相談のコーナーでした。
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