DNXの伴走者:金融•スタートアップで培ったグローバルな視点と現場の知恵。井無田ゆりかの伴走支援
みなさん、こんにちは。井無田ゆりかです。この秋、DNXが新たに立ち上げたB2Bソフトウェアの創業ベンチャースタジオ「DNX Studio」にて、私も起業家の方に伴走させていただくことになりました。早速今年5月に開催したエピソード0(トライアルで元Resily代表の堀江さんにご参加いただきました)では、私の外資金融時代の経験や知見が活かせるテーマだったこともあり、1週間のSprint Weekに参加し起業家の方と事業アイデアを徹底的に仮説検証するディープな1週間をご一緒させていただきました。
今回は、私のこれまでの経験と、起業家支援に対する思い、日頃起業家のみなさまに伴走させていただく上で大切にしていることについてお話しさせていただきます。
金融の厳しさとマーケティングの創造性、JPモルガンでの10年
私のキャリアは、JPモルガンでの経験から始まりました。内部監査部では、グローバルに展開する金融業務の管理体制を監査する日々を過ごしました。監査部というと、財務面での会計監査をするイメージが強いですが、私の場合は、ビジネス側(株式、債券、デリバティブ部門など幅広く)に対して、法令遵守の観点もあれば、部門横断でのオペレーショナルな設計や、システム間でのデータ連携、マネジメントのガバナンス体制など、業務執行にかかるあらゆるリスクの評価を行う業務監査を担当していました。また、日本だけでなく、アメリカやインド、韓国、オーストラリアなど、海外チームとプロジェクトを推進する経験を得たのも、自身のスキルを磨く貴重な経験だったと思っています。
その後、アセットマネジメント部門(資産運用部門)のマーケティング室に移り、個人投資家向けのファンド販売のマーケティングを担当しました。一気に「守り」から「攻め」の分野に自分の軸足を動かし、監査とは180度違うキャリアの転換でしたが、この二つの経験が後のスタートアップでの仕事に大きく活きることになります。
10人から200人へ、ビザスクでの急成長の6年半
2016年、社員数わずか10名のビザスクに参画し、6年半にわたり執行役員として様々な役割を担いました。当初は週3日のパートタイムの仕事を探していたのですが、起業家の大胆な判断と事業が目指す世界観にワクワクし、事業部長としてスタートアップの世界に飛び込むことを決意しました。
ビザスクでの日々は、まさに時間の進み方が3倍速になったような感覚でした。「スポットコンサル」という市場がない中で、新しい価値を認めてもらいながら、プラットフォーム事業を創りあげていく。上場に向けた管理体制の構築、海外展開を視野に入れたグローバル水準のコンプライアンスプログラムの構築。そして、IPO後は金融セクター担当の事業部長として、コロナ禍での苦戦を乗り越え、メガバンクとの初の事業提携を実現。最後は、海外企業買収のPMIを担当し、これまでの経験の集大成とも言えるミッションに取り組みました。
ビザスクでは、組織マネジメントにも携わりました。スタートアップでのマネジメント経験は初めてだったので手探りでした。起業家である代表が、事業の「攻め」に時間を使えるように、私が組織やメンバーのケアをするような「守り」の役割を担ったり、代表が任せたいところを引き継ぐことをしていました。そのスタンスは今もかわりません。起業家がやりたいこと・必要なことは何で、私が何をすれば起業家のパフォーマンスを高められるのかを想像し、実行するようにしています。ビザスク時代にマネジメント含めて経験したことが、今投資先の起業家に伴走するうえでとても活きている気がします。
心がけているのは、経営者の孤独に寄り添う伴走支援
濃密な6年半を経て、次なるステージを考えていた時、DNXの倉林との出会いがありました。「スタートアップでのオペレーターとしての経営経験を持った人材がVCにいることで、日本のスタートアップをさらに発展させたい」という思いに強く共感し、DNXへの参画を決意しました。
私が特に支援したいのは、起業家のベクトルの方向が、事業を通して「自分が勝つこと」に向くのではなく、「誰かを助けること」が「自分のやりがい」につながり、世の中の「負=マイナス」をプラスに変えるような事業に情熱を注げる方。そこにやりがいとコミットメントをできる起業家と一緒に歩んでいきたいと考えています。そういう起業家は、お客様にも、採用においても、愛される人になると思うんです。
私の投資先経営者の支援スタイルは、良くも悪くも、諦めが悪いタイプです(笑)。「自分がこの人だ!」と思ったら、とことん支援したいと思っちゃうんです。どうやったら支援できるか、そのことばかりいつも考えているタイプです。起業家って本当に孤独だし、お客様、社員、株主、銀行さんなど、多くのプレッシャーを受け、不安にもなると思うんです。自分の意思決定がみんなの人生を左右する緊張感もある。事業も伸ばさなくちゃいけないし、全員が幸せになる人事ができない中で、厳しい判断もしなくちゃいけない。経営者としての成長を求められるが、経営者って何が正確なのか、とにかく考えることがたくさんあります。そんな中で、自分の迷いを言語化したり、思考を広げる問いかけをしたり、経営者にとって拠り所のような存在になればいいなと思っています。
例えば、ある起業家とは、株主定例ミーティングとは別に、定期的にコーヒーを飲みながら、「5年後10年後、さらには30年後どうなっていたいのか」という先の話をしながら、目線を上げつつ、今は大事な、でも小さな通過点で、数字を積み上げる意識を引き上げたり。ある時は、やるべきことが溢れすぎて、どうやらあまり夜眠れていないと察して、過去学んだコーチングの手法を活用して、状況の整理と権限委譲までの道筋をサポートしたり。カジュアルな機会でないと、いきなり株主に「眠れないんです」なんて言えないじゃないですか(笑)。順調に前に進んでいる時はいいんですけど、アーリーフェーズは暗中模索で悩みが多いはずなので、一緒に紐解くところをお手伝いするようにしています。
経営者の道のりは長い、だから一生やりたい領域を
DNX Studioを通じて、起業家のみなさんが時間を短縮して前に進めるよう支援していきたいと考えています。起業家のみなさんは、程度は違えど、同じようなところで壁にぶつかるんですよね。HAIのノウハウを使いながら、私自身の経験も活かし、起業家がぶつかる壁に対して、考える材料を提供しながら、解決策を導きだす支援をしていきたいと思います。
最後に、起業を考えている方々へ。経営者としての道のりは長いです。ご自身の経験を活かして起業したとしても、初めのプロダクトはペインの解像度が高く成功したとしても、セカンドプロダクト、サードプロダクトと広げる際に、ご自身の経験や知見に発想が縛られることもあります。そういう意味では、起業するドメインが、過去の業務経験に紐づいていないといけないとは必ずしも思っていません。それよりも、自分がやり続けたいと思える領域で、世の中の困っている多くの人を助けたいという思いが重なる事業領域を見つけることが重要だと思います。簡単ではないです。でも、そういうブレない思いの強さがあることが、社会に大きなインパクトを与えられる経営者なのではと思っています。
そういう思いのある方々に対しては、私自身が全力でコミットし、伴走します!十中八九一緒に事業を考えますし、私自身が答えを持っていないことに対しても、すべての人脈を使って必要な人を紹介したり、全力でサポートしていきます。DNX Studioを通じて、みなさんの思いを形にし、成功する事業を増やしていけることを楽しみにしています。一緒に未来を創っていきましょう。
(文・井無田 ゆりか、編集/写真・上野 なつみ)