追加投資|airdoor
この度、オンライン賃貸サイトを提供する株式会社エアドア(以下、エアドア)に追加出資させていただきました。エアドアは、管理会社から賃貸物件が直接掲載され、物件の契約情報がリアルタイムに反映される仕組みを作り上げたことで、おとり物件や重複が一切ないプラットフォームを提供しています。本稿では、我々DNX Venturesがシードファンドから追加で出資をするに至った背景と理由について、触れてみたいと思います。
日本の不動産業界を変える存在に
日本と海外の産業別生産性を比較した調査(2017 年)によれば、米国の労働生産性水準を100(1 時間あたりの付加価値)とした場合に、日本の不動産業界は米国の27.1%しかなく、同じくドイツを基準にしても23.4%しかないという結果があります*。このような生産性格差の理由として、不動産業界における過去のIT投資水準がとても低かった点が挙げられます。DNXでは、こうした文脈のもと、不動産会社とユーザーをITでつないで業界を変革していくエアドアに注目しました。エアドアが提供するプラットフォームは、管理会社向けのサービスに留まらず、ユーザー向けのサービスでもあります。そこには、業界の部分最適だけを果たしてもユーザー体験は向上せず、ユーザー側にも働きかけていくことで業界の全体最適が図れるというエアドアの狙いがあります。巨大な市場ながら、なかなか変わることができなかった不動産業界を変革する挑戦として、とてもユニークな切り込み方であるとDNXは評価しました。
エアドアが提供する価値
不動産業界における情報の非対称性をなくすため、エアドアは、自社で運営する賃貸プラットフォーム「airdoor」を開発し、ユーザー向けに提供しています。このプラットフォームは、管理会社が直接に賃貸物件を掲載できるようになっており、管理会社が物件を登録するとほぼリアルタイムにairdoorに公開され、逆に物件が契約済となると非公開化されます。このような当たり前のに見える仕組みは、既存の不動産メディアでは難しく、今もオンライン上には成約済み物件(通称:おとり物件)が掲載されております。おとり物件と知らずに連絡をしたユーザーに、全く違う物件を営業することが日常的に行われています。
賃貸物件探しに苦労を強いられるユーザーの課題を解決するため、airdoorはリアルタイム性にこだわり、最新情報でおとり物件・重複物件がなく、また、店舗に行くことなく契約までオンライン中心のプロセスで手続き可能となっています。物件に現地集合して内見、現地解散というシンプルで新しい「お部屋探し」のユーザ体験を実現しています。airdoorのプラットフォームは、物件の内覧業務を代行して頂く不動産仲介会社とも組んでおり、パートナーである不動産仲介業の労働効率化にも貢献できます。
鬼頭CEOへの期待
ファウンダーマーケットフィット(Founder-market fit)という言葉がありますが、エアドアを起業した鬼頭さんはその言葉こそがふさわしい、とDNXは評価しています。鬼頭さんは、新卒から長く勤務されている不動産テックでの経験、外資系企業で初年度年間トップセールスを達成した強いリーダーシップと行動力をお持ちです。管理会社からの物件掲載においては、各社が導入しているコンバーター(物件管理システム)とのデータ連携が鍵を握りますが、起業後に次々と大手コンバーターとの連携を実現できたのは、鬼頭さんが不動産業界から信頼されている何よりの証です。また、鬼頭さん自身も今まで10回以上の引っ越しを経験しており、ユーザの観点を忘れないために今も毎年、引越しを続けているそうです(笑)。そうした鬼頭さんのもとに、不動産テックに精通したメンバーが数多く集結しています。業界の梁山泊とも言うべきエアドアが、今回調達した資金を活用し、日本の不動産業界において変革のトップランナーになることをDNXは期待しております。
鬼頭CEOからのコメント
(文:白石 由己・新田 修平)