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カエル食者としてのクモ:グローバルな視点から(Nyffeler & Altig, 17 June 2020)

抄録:本論文では,世界的な文献とソーシャルメディアの包括的な調査に基づいて,クモによるカエル捕食の374件の事例を報告する〔ナガコガネグモArgiope bruennichiを含む〕.カエルを捕食するクモは南極大陸を除くすべての大陸で記録されている(事象の80%以上は北緯30度から南緯30度の間の温暖な地域で発生している).クモによるカエルの捕食は新熱帯区で最も頻繁に記録されており,特に中央アメリカやアマゾンの熱帯雨林,ブラジルの大西洋岸森林に集中している.捕獲されたカエルは,平均体長2.76±0.13 cm(通常,体重≒0.2〜3.8 g)の小型のものが主体となっている.カエルのライフサイクルのすべての段階(卵・胚,付加したての状態,オタマジャクシ,出現変態,未熟後変態,成体)がクモの捕食に対して脆弱である.報告された374件のカエル捕食のうち大部分(85%)は網を持たない狩猟性クモ(特にシボグモ上科とコモリグモ上科)に起因し,強力な神経毒を注入することでカエルを殺傷している.カエルを捕らえるクモは主に夜行性で,平均体長は2.24 ± 0.12 cm(通常,体重は約0.1~2.7 g)である.32科200種以上のカエル(苦い味のするヤドクガエルの数種を含む)が,22科100種以上のクモに狩られることが記録されている.このように多様なクモ類が,多様なカエル類を餌として利用していることは,新しい知見である.カエルを副食として利用することで,クモの餌の供給量が増え(=餌の幅が大きくなり),生存の可能性が高まると推定される.オーストラリアや南米での研究から,一部のトタテグモ下目のクモ(Atracidae科,カワリトタテグモ科,オオツチグモ科)の食性にカエルが大きく関与している可能性が示唆されている.クモの餌としてのカエルの重要性について信頼できる結論を出すには,熱帯のクモの自然食に関するより多くの定量的調査が必要である.

Nyffeler, M., Altig, R. 2020. Spiders as frog-eaters: a global perspective, The Journal of Arachnology, 48(1), 26–42.


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野口 大介(のぐち だいすけ)
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