見出し画像

イベリアのコガネグモ属の種のニッチ分離(Peña-Aguilera et al., 27 Apr 2019)

抄録:イベリア半島の3種のコガネグモ属の生態的ニッチはこれまで定量的に詳細に研究されておらず,近年開発されたニッチの重複を評価するアプローチも無脊椎動物に適用されることは稀である.本研究では,イベリア半島におけるナガコガネグモArgiope bruennichi (Scopoli, 1772),ヤツデコガネグモA. lobata (Pallas, 1772),スジコガネグモA. trifasciata (Forsskål, 1775)の気候的ニッチの違いを定量的に把握することを目的とした.文献,市民科学プロジェクト(Biodiversidad Virtual),ソーシャルネットワーク(Flickr)から,3種の広範な出現データベースを作成した.ニッチ比較と再帰的分割分析により,地域の気候情報を用いてこれらの種のニッチの比較と特徴付けを行った.3種のコガネグモ属はイベリア半島内で異なる分布パターンを示し,明らかに同所的であった.また,3種はニッチの重複はあるものの,気候的なニッチは大きく異なっていた.ナガコガネグモはより寒冷で湿度の高い環境に生息し,ヤツデコガネグモとスジコガネグモはより温暖で乾燥した環境を選択した.スジコガネグモはヤツデコガネグモよりも最低気温の高い地域を好み,他の2種が許容する大陸的な環境を避けた.これらの相違にもかかわらず,イベリア半島には複数の種が共存する適切な環境が広範囲に存在していた.特に,地球温暖化により生息域が北上する傾向にあることから,これらの種の関係を探るためにさらなる研究が必要である.本研究の結果とイベリア半島の乾燥化が進む環境の両方を考慮すると,ヤツデコガネグモとスジコガネグモはナガコガネグモの後退を犠牲にしてでも利益を得ることができるかもしれない.

Peña-Aguilera, P., Burguillo-Madrid, L., Barve, V., Aragón, P., Jiménez-Valverde, A. 2019. Niche segregation in Iberian Argiope species. The Journal of Arachnology, 47(1), 37–44.


いいなと思ったら応援しよう!

野口 大介(のぐち だいすけ)
サポートを頂けますと、うれしいです😂