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クモの感覚器-ナガコガネグモArgiope bruennichi(クモ目,クモ綱)の両性における異なるタイプの感覚器の形態学的調査(Ganske & Uhl, 19 Jan 2018)

概要:クモの行動観察から明らかなように,クモは様々な感覚能力を有している.そのため,クモは機械感覚子,湿度感覚子,温度感覚子,化学受容器など,多様な感覚構造を持っている.化学受容構造については,これまで味覚でテストされた毛状先端孔の感覚器しか見つかっていない.また,クモが空中からの信号を受け取ることができることは,多くの行動実験によって裏付けられているが,その原因となる構造はまだ決定されていない.本論文では,その生態と交接系についてよく調べられているナガコガネグモArgiope bruennichiの雌雄の触肢と歩脚の感覚器分布図を提供する.走査型電子顕微鏡を用いて,毛状孔の感覚子が実際に1種類しか存在しないのか,存在するとすれば,先端孔の感覚子の外形構造は体上の位置によって偏差があるのかどうかを精査した.また,スリット感覚器,触毛,足根器などの外形構造と分布についても述べる.我々の研究から,4種類の感覚器すべてが雌雄の歩脚に存在することがわかった.化学感覚器については,先端孔感覚器のみが見つかり,このタイプの感覚器が味覚と嗅覚の両方に用いられていることが示唆された.先端孔の感覚器は,2つの第1歩脚の蹠節と足根に最も多く見られた.機械受容性スリット感覚器は,すべてのポドマー(脚の区分)に沿った列の単一スリット感覚器として,あるいは関節の横の竪琴(lyre)の形をした器官として生じる.機械受容性触毛は脛節と蹠節の基部に発生する.足根器官はすべての足根の背面および雄の杯葉に発生する.この分布図をもとに,体内各部位の感覚器の内部的,形態的な差異をさらに検討する.また,解剖学的な差異が機能的な差異につながる可能性があり,電気生理学的な解析と合わせて検討することができる.その結果,このマップはクモの感覚の世界を解明するのに役立つだろう.

Ganske, A.-S., Uhl, G. 2018. The sensory equipment of a spider – A morphological survey of different types of sensillum in both sexes of Argiope bruennichi (Araneae, Araneidae), Arthropod Structure & Development, 47(2), 144-161.


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野口 大介(のぐち だいすけ)
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