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予定不調和が生む最高のハーモニー 第6回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦 ファイナリストLIVE雑感
第6回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦 ファイナリストLIVEに行ってきた。
知らない方のためにファイナリストLIVEについて若干の説明をすると48グループで歌唱力を競うAKB48グループ歌唱力No.1決定戦というものがあり、それのファイナリストに選ばれた上位8人に審査員特別賞1人を加えた9人で行う特別ライブである。通常の48グループのコンサートと異なり生バントでメンバーは基本踊らずに歌を聴かせることが主眼になっている。
歌唱力No.1決定戦の審査はガチで行われる。
経歴や日頃の人気などは関係がない。歌のプロたちが歌という芸事だけで参加メンバーを評価して順位を付ける。
ガチ審査なので予定調和がないのである。
第6回大会の決勝戦は2024年7月23日に開催された。
今大会、予選1位通過はAKB48の倉野尾成美と村山彩希であった。
第6回 #AKB48歌唱力No1決定戦
— AKB48グループ歌唱力No.1決定戦<公式> (@AKB48G_singer) May 30, 2024
予選の結果はこのようになりました!
決勝進出メンバーの歌唱グループ分け抽選会は6月27日(木)午後8時〜TBSチャンネル1で生放送。
決勝大会は7月23日(火)開催!
チケット等の詳細は決まり次第お知らせします。
ぜひフォローしてお見逃しなく!https://t.co/kztPIAzPio pic.twitter.com/Y3C08B3cFR
倉野尾は2024年3月にAKB48グループ4代目総監督に就任したばかりである。
3代目総監督向井地美音の頃はまだ48グループ全体からシングル表題曲の選抜メンバーが選ばれておりグループ間の交流は活発であった。しかし、現在は各グループの運営会社は別となり国内の48グループ横断での企画はほとんどない。
グループ横断の貴重な機会である歌唱力No. 1決定戦で総監督に就任したばかりの倉野尾がファイナリストに残りライブに参加をすれば話題になるであろう。
もう1人の1位通過村山彩希はAKB48グループの中でも屈指の人気メンバーであり、決勝開催時点で加入13年のベテランメンバーである。当時はまだ卒業を発表はしていなかったがそう遠くない時期に卒業するかもしれないということは皆が薄々感じてはいた。(実際に村山は2024年12月27日に翌年6月に卒業することを発表した。)
卒業前にAKB48グループ歌唱力No.1決定戦で有終の美を飾り、ファイナリストライブに優勝者として参加する。そっちの方がストーリーとしては綺麗であり話題になるに決まっている。
しかし、そうはならないのがこのイベントの面白いところである。
倉野尾は残念ながら決勝1ラウンドで敗退しファイナリストLIVEの出場権は獲得できなかった。
そして優勝を期待されていた村山は岡村梨央(STU48)の後塵を拝し2位と終わった。2位となった後、舞台裏で悔し涙を流している村山の姿からしてどれだけ村山が真剣にこの大会に臨んでいたかはお分かりいただけるはずだ。
しかし、1位にはなれない。予定調和がないガチ審査のイベントでは思い出作りに奇跡は起きないのである。
尊…👶🏻 pic.twitter.com/zaBPGRYSGE
— 向井地 美音 (@mionnn_48) July 24, 2024
2025年2月17日ファイナリストライブが開催された。
予選参加者100人の中から優勝した岡村梨央(STU48)、以下成績順に村山彩希(AKB48)、三村妃乃(NGT48)、田口愛佳(AKB48)、清司麗菜(NGT48)、大塚七海(NGT48)、坂本愛玲菜(HKT48)、ルル・サルサビラ(JKT48)、そして審査員特別賞の豊永阿紀(HKT48)の9人が参加した。
ファイナリストLIVEはそれぞれがソロで歌唱する機会があり、またユニット曲も2〜3人と少人数で歌う。一人一人がしっかりと目立つことができる構成になっている。
おそらく、参加しているメンバー誰もが「私がメインを喰ってやろう」という意気込みで参加しパフォーマンスしていたに違いない。
皆が皆、審査対象で緊張していた決勝戦よりも素晴らしいパフォーマンスを魅せ、全員が優れた歌唱力を有していることを観客に知らしめていた。
アンコールでは卒業を発表している坂本と村山のインタビュー動画が流れ、それぞれがソロでのパフォーマンスを披露する。
そして、全体歌唱に戻り『GIVE ME FIVE』が披露される。
友よ 思い出より 輝いている明日を信じよう
そう 卒業とは 出口じゃなく 入り口だろう
会場は曲に盛り上がりながらも卒業の感動ムードに包まれる。
そして、屈指のバラード『またあなたのこと好きになっていた』を皆で歌いライブが終了した。
ライブが終了しメンバーは最後の挨拶をしたが名残惜しいのかステージから捌ける完全にタイミングを失ってしまう。
メンバーの1人の生声で挨拶をしようとの提案により、メンバー全員でマイクを通さず生声で改めて最後の挨拶をして今度こそ公演は終了した。
かと思えた。
しかし、照明が消えるや否や興奮冷めやらぬ観客から絶え間ない手拍子が続く。
いわゆるアンコール発動ではなく自然発生的な手拍子である。
絶え間ない手拍子に促され再度メンバーがステージに現れる。
曰く、ダブルアンコールは予定にないので何の用意もしていないけどステージに出てしまったとのことである。
少し時間が経ったところでバンマスから「ペダル」の一言。
『ペダルと車輪と来た道と』は、この日、本編で披露されていたが、撮影タイムと設定されていたため、確かに観客も撮影のために曲自体を楽しみ切れていなかった。
最高の選曲でありダブルアンコールに観客たちはこの日1番の大きなコールをし盛り上がっていた。
予定調和のない戦いを勝ち抜いたメンバーたちの予定にないダブルアンコールが終わったあと、メンバーの1人がこの9人でユニットデビューしたいと言っていた。
今日この日のメンバーたちは日頃別々のグループで活動しており特に交流はしていない。
しかし、そうは思えないほど一体感があった。
しかも、それは馴れ合い的な一体感でもなく、誰かがエース・センターとして引っ張るという一体感でもない。
誰もが自分が1番目立ってやろうと意気込んでいる中で生まれる絶妙な一体感だったと感じた。
田口愛佳は、ライブ終了後のインタビューで以下のとおり述べていたが、そう感じさせるエネルギーを確かに観客は感じていたと思う。
私たちが最強だなって!いや本当に思いましたよ。本当になんかグループの垣根を超えてるのもそうですが、海外のメンバーもいるんで私たちが最強メンバーです。
私はファイナリストLIVEのステージを見て、頭の中に、『出逢いの日、別れの日』の一節が頭に浮かんだ。
競うこととは認め合うこと
ひとつの舟に乗っている絆は強いよ
彼女らは歌唱力に真剣に向き合い、真剣に競い合ったからこそ互いをライバルとして認め合い、そして真剣に競い合ったからこそ負けたことが悔しくファイナリストライブでは主役になってやろうと意気込んでいたのではないか。
真剣に競い合ったメンバー同士の熱量がぶつかり、それが観客に伝播したから予定調和的なアンコール発動ではなく手拍子でのダブルアンコールになり、最後のステージ客席一体となった盛り上がりに繋がったのではないかと思う。
予定不調和なイベントだからこそ生まれる絶妙なハーモニーが楽しめる素晴らしいイベントだった。
ただ人気やファンの課金力を競うだけの総選挙のような企画ではなく、歌唱力という芸事で競いグループ間で切磋琢磨するという素晴らしいこの企画は今後も是非続いてもらいたいと思う。
そのためにはまずはこのライブのテレビ放送を1人でも多く見てもらうしかないので、是非TBSチャンネルの契約をして、ライブの盛り上がりを見てもらい第7回大会の後押しをしてもらいたいと思う。
最後になるが、個人的には村山彩希のパフォーマンスが圧巻であったと感じた。
村山彩希は卒業発表しており2025年6月に卒業を控えている。村山は所属事務所もエイベックス・アスナロ・カンパニーに移り、卒業後も歌い続けると公言している。
アイドルではなくアーティストとして活動することを決めているからこそ出るオーラがあるのだろうか1人だけ別格であった。
ステージに登場してきた時はアイドルが登場したというよりも、「降臨」という表現が似合うと感じた。
村山の卒業後の活躍を予感させる圧巻のパフォーマンスを是非見てもらいたいと思う。
※第6回AKB48グループ歌唱力No.1決定戦 ファイナリストLIVEは、3/26(水) 午後9:00〜午後11:30 TBSチャンネルで放映されます。
せっかくの最強な9人なので、これで終わりにせずに最近勢いがあるJKT48のインドネシアでのコンサートにルル・サルサビラ&歌唱力No1決定戦ファイナリストたちとしてユニットで参加してもらって、TBSチャンネルで密着ドキュメンタリーを作ってもらえないですかね。
海外に姉妹グループがいるアイドルって48グループ以外に聞いたことないので、面白そうだし話題になるのではないかと思いました。
※自己紹介記事を貼っておきます。
俄かファンなものでして誤りなどがありましたらお教えいただければ幸いです。