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詐欺グラフから考える物事の切り分け方


皆さんは「詐欺グラフ」というものをご存じでしょうか? 検索すると以下のような記事が引っかかります。

要は受け取り手が誤解を生むよう歪曲されたグラフと言ったところでしょうか。そんな詐欺グラフが一部メディアでは散見され、ファンによってキャプチャ画像が収集されるほどの賑わいを見せています。

グラフと言えば、先日以下のようなツイートを見つけました。

「『表現力』~伝えたいメッセージをグラフで表現するには?~」そう題された画像には、目盛り次第でグラフの印象が変わることを利用して自分が伝えたい内容を表現しようといった旨のことが書かれています。

このグラフ、どこか既視感を覚えませんか? そう、前述した詐欺グラフっぽさが滲み出ていますね。しかも今回は「どのようなグラフにしたら相手にどのような印象を与えられるか」という指南までセットになっており、思わぬファンサービスにリプ欄や引用ツイート欄では突っ込みの嵐となっています。


・・・ところで、これって本当に詐欺グラフなんでしょうか?



グラフとしての適切さ


(詐欺グラフと思わせるような導入をしておいて何ですが)先の画像を見て、どちらが「詐欺グラフ」っぽいと感じましたか? おそらく大半の人が「右のグラフ」と答えると思います。もしくは印象操作をしようとしている時点で両方が詐欺グラフだと考える人もいるでしょう。

後者の考えは後述するとして、まずは右のグラフが何故詐欺グラフっぽいのかを考えてみようと思います。ぱっと挙げれられるのが縦軸を恣意的に引き延ばしているという点でしょう。こうすることでグラフの下がり方が顕著になってしまい、5%よりはるかに大きな右肩下がりに見えてしまいます。こういった「実態に即さない大げさなグラフ」が詐欺グラフっぽさの所以だと思いますが、果たしてこの縦軸は適切なのでしょうか?

この問題を考えるにあたって、右のグラフを折れ線グラフの用途に鑑みてみます。折れ線グラフとは本来「時系列に沿ったある量の推移(変化)を観察し、そこからその傾向を大まかに把握する」ために扱われるもので、画像内でも「時系列の変化を伝えるために『折れ線グラフ』を使って表しましょう。」と記載があります。つまり折れ線グラフ的には「そのグラフを一目見ただけで上り調子か下がり調子かわかれば万々歳!」というわけで、見た目の変化量の大きさはそんなに関係ないのです。

また、グラフとはそもそも数値的なデータを視覚的に表現するためのものなので、グラフそのものの在り方として視覚的にわかりやすくあるべきです。先の左右のグラフを例に挙げると、左のグラフより右のグラフの方が視覚的に右肩下がりであることがよりわかりますし、折れ線グラフで重要なのは傾向を掴むことなので、右のグラフの方がグラフとして適切ということが言えるのです。

(余談ですが、「縦軸の始まりは必ず0にしなければいけない」という明確な決まりはないようです(自分も最初はそう思ってた)。しかし上のツイートのリプ欄や引用ツイート欄ではその件に対して突っ込んでいる人が多く見られることを考えると、ある種「マナー化」してきているのかもしれない、と感じました。社会では不必要で面倒だと思うようなマナーが多いと思いますが、その大半の目的は「『相手』を不快にさせないため」というクソデカ抽象主語のもとにあります。縦軸0理論もおそらくこれに通じ、「相手が縦軸0始まりだと思っていると齟齬が生じる可能性があるからそれなら最初から縦軸0にした方が無難だ」という思想が独り歩きしてマナー化し、「縦軸の始まりは必ず0にしなければいけない」と思い込む人が増えてしまったのではと思ったりします(自分含め))



内容の不適切さ


グラフは正しい、それはわかった。でもこのツイートは気に食わん! という方も多いと思うので、次にこの画像のテーマでもある「メッセージをグラフで表現すること」について触れていきます。

「『表現力』~伝えたいメッセージをグラフで表現するには?~」・・・画像のタイトルですね。伝えたいメッセージをグラフで表現、それは適切でしょうか? 以下の例を見てみましょう。

画像1

ニコニコ大百科より

きのこの山とたけのこの里の内容量の比較です。一見きのこの山の方がたけのこの里よりとても多いように感じますが、実は縦軸が68始まりで、実際の内容量の差はたった4gということがわかります。いわゆる詐欺グラフというやつですが、きのこ派の浅ましい考えが透けて見えてしまいますね。「内容量が多いきのこの方がコスパが良い」とでも言いたげです。微々たる差なのに、それくらいしか誇るところが無いのでしょうか?

このように、グラフに無理やりメッセージを含めると一気に詐欺グラフ化します。何故なら、本来はそう捉えられないようなグラフを捻じ曲げることでメッセージを組み込もうとしてしまうからです。そして捻じ曲げられたグラフとそれに含まれるメッセージにほとんどの人は気付いていますが、そのメッセージを好意的に受け取ることはほぼ無いでしょう。

以上のことから、メッセージをグラフで表現することはお勧めできません。メールでよくね?



結局どういう事?


グラフは適切なのに内容は不適切、つまりそれってどういう事? と思う方がいるかもしれませんが、そのまんまです。グラフは適切で、内容は不適切だった。

物事の要約を見て「これは全部が悪いんだ!」と決めつけてしまう人がたまにいますが、これが結構危うい考え方で、その物事を細部に分けていくと一部正しい部分が見えてきたりします。そういった時は意固地にならず、正しい部分は正しいと素直に受け入れることが大切なんだな、という話でした(戒め)。

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