宿泊施設の利益最大化!自社サイト予約をUP!基本のマーケティング術を手順と一緒に公開。
こんにちは。
株式会社Hospitality Bridgeの常井大輝(トコイヒロキ)です。
記事を見返すと、なんとなく宿泊税やオーバーツーリズムなどの行政向けのコンテンツが中心となっておりましたので、今回は宿泊施設の利益、売上アップに向けた施策に関してお伝えしていきます。
自社サイトの予約を上げる?なぜ?と考える人いませんよね?利益インパクトを計算してみましょう。
”自社サイト予約の比率を上げる”。この件は昨今の日本のホテル業界で取り組むべき事案にいよいよなってきました。ハイアットやマリオット、ヒルトンなどの外資系ホテル会社は何十年も前にスタートしております。
なんで自社サイトの割合を上げる?大変だしOTA(Online Travel Agency)でいいでしょう?なんて言ってる人いませんよね?
答えは簡単です。”利益を上げるため”です。
手数料を人件費として考える場合はこれに限りませんが、可能であれば人を雇って、もしくは外注することで手数料を減らすことができ、利益が上がる場合があります。
簡単に計算してみましょう。
手数料は10%~15%ほど発生します。
例えば、100室、年間稼働率80%、ADR10,000円、自社サイト10%、OTAや旅行会社90%の割合で経営している施設があるととします。
販売室数は100室×365日×80%=29,200室
ADRが10,000円なので、292,000,000円の年間売上となります。
ここに、手数料として払うコストはこのうち90%に発生しますので、262,800,000円(2億6千万円)の10%~15%が手数料となり、年間2.6千万円〜3.9千万円がコストとして支払われます。
これが、自社サイト20%、OTAや旅行会社80%の割合になったとします。
すると手数料は2.3千万円〜3.5千万円程度となり、約300万円〜400万円の利益アップになります。
10%上げるだけでは、新規に雇用して自社サイト割合を上げるのは得策ではないかもしれません。
外注でこれ以下でできるのであれば○といったところですね。
このように計算を続けてみましょう。
本来は各施設ごとに、色々な販売チャネルがあると思います。
MICE系、団体、契約外の旅行会社などなど。。。
ですが、ここでは簡単にするため、自社サイトとOTAとして括っております。
30%になると、600万円程度の利益が生まれます。
50%になると、1,200万円程度の利益が生まれます。
これくらいを目指そうとすると人を雇っても、外注しても利益出そうですね。
自社サイトを100%にするには、販売経路を完全に絞ってください。しかし絞ってしまうと予約が減ってしまう可能性は非常に高いので注意してください。リピーターが獲得できた頃の最終段階の手段といえます。
この様に利益インパクトを計算し、現状を把握し、自分たちの宿はどのくらい目指せばいいのか計算してみてください。
そこから細かい戦術を決定するのをお勧めします。
何をして自社予約をあげていこうか戦術を複数決めましょう。
自社予約UPに注力することを決めて、どれくらいあげればいいか決定したら、次はお待ちかね。”何をすればいいのか”を決めていきます。
この戦術は複数考えておいてください。何かうまくいかなくても、二の矢三の矢を準備しておき、織田信長の長篠の戦いにおける三段撃ちの様に準備しておけば、伸び悩んだ時に次の戦術に移行するのが早くなります。
どんなことをしたらいいのか、お勧めの順番をお伝えします。
1. 料金差を決定する
自社サイトの予約を伸ばすことを決めたら、まず最初に料金差を考えてください。
OTAと自社サイト、料金が一緒。という施設はたくさんありますよね。
大手のホテルブランドや外資系ホテルは絶対にあり得ません。
ハイアットやマリオット、ヒルトンの場合、Best Rate Guaranteeという厳しい制度をブランド内で確立しており、自社予約が一番お得!ということで自社予約を高めています。
これに違反したホテルに対し、罰則が設けられたり、一定期間内に告発したゲストに対しプラスの特典が与えられます。
なぜこれをやっているかは、日本ホテルと外資ホテルのビジネススキームの違いによるものです。こちらは長くなるので、別の機会があれば記載いたします。
OTAと自社サイトで料金差がない施設は、何を始めるよりまずは料金差を作ってください。
料金差の考え方はいくつか気をつけてください。
1. ポイント
2. 割引 or 割増
3. そのほかの特典
4. セールやクーポンなど
これらを考えた上で、それよりもお得になる料金差を考えてください。
例えば、10,000円の宿の場合、多くのOTAでは1%はポイントが付与されます。一休さんに限っては5%や系列のYahooトラベルでは10%など期間限定、決済方法限定で集客する場合がございます。
OTA側の販促だから良いではないか。と思うかもしれませんが、
あくまでこれは宿泊施設が払っている手数料から払われている分なので、
OTA側はシステム開発費の回収と、人件費さえ賄えれば、全力で経済圏獲得のために販促費用としてを使えます。ホテル側は一方、サービス提供のための原価や、より多くの人件費、しかも1人当たりの費用は安くなり、そのほか高額の固定資産税なども発生し、利益率が低い中頑張っているのですが、ビジネスの違いで搾取される側に回ってしまっています。
また、ポイントではなく、期間限定のセールやクーポンなどの発行により自社サイトの料金が高くなってしまう場合があります。
こちらも注意しましょう。
そのほか、高頻度会員制度などOTAでは設定や管理がしやすくわかりやすいため、競合に勝つために設定する施設様が多いですが、自社サイトを伸ばしたい場合は障壁になりますので、こちらもご留意ください。
もちろん、OTAのおかげで運営や経営が回るということもありますが、ぜひ自社予約比率を伸ばし、宿の設備整備や人件費アップによる優秀な人材の獲得に注力していただきたいです。それが未来の観光業界への変革の第一歩となるはずです。
さらにOTAは厄介なことに”ポイント”や"会員制度”を使って顧客の囲い込みを行っております。独自の”経済圏”を作り、顧客を逃さない戦略です。
すでに確立してさらに拡大が続いているため、ここから脱却するのは至難の技ですし、対立する場合顧客を失う可能性があるということはご認識ください。
2. 自社サイトの改善
10年〜15年前からWeb主流となる兆しが出てきた頃から、各業界でEコマースが発達してきました。観光業界もホテルを中心に予約はWebが主流になり、ほとんどの皆様が自社サイトを作成していると思います。
しかしその自社サイトはもしかすると、何かが不十分な可能性があります。
こちらの改修は自社で作成している場合、スタッフの労力で改善できますが、外注している場合は別途費用がかかることがあるでしょう。各施設どの程度費用がかかるか把握してお考えください。
チェックポイントをいくつか記載します。
1. 予約への導線足りていますか?わかりやすいですか?
2. 情報は整理されていて、ユーザーが知りたい情報がわかりやすく、最新ですか?
3. 更新はしていますか?
4. アクセス解析できていますか?
5. ユーザー目線でUI,UXの構築はできていますか?
SEO対策は?やGoogle マイビジネスは?とか、googleホテル広告は?とか色々あると思いますが、構成する上での基本となりますので上記を考えてみてください。
SEOに詳しいわけではないのですが、定期的な数値チェックやコードの書き換えなど手間をかけると色々と大変の様です。SEO対策もピンからキリまである様なので、注意してください。Noteに色々な方が書いていそうですね。
ちなみにChat GPTにSEO対策って何するの?と聞いたところ下記の内容が帰ってきました。
これだけでは何のこっちゃということで、具体例をさらに聞いてみました。
何と、わかりやすく説明してくれました。
どこまでSEO対策をやるのかで各専門家に対する費用が上がります。
宿泊施設で詳細な対策を1施設で行うのはあまり費用対効果は高そうではないですね。そんなことはない私なら安くやってますという方がいらっしゃいましたらご連絡ください。
3. 自社サイトのロイヤリティプログラムや専用プラン、定期的なセールを行う
料金差を決定し、販売し次に(もしくは同時に)自社サイトの改善を行なった場合、今度は魅力あるサイトになるよう継続して商品開発を行なってみてはいかがでしょうか。
ロイヤリティプログラムは自分たちの宿にお客さんがリピートしてくれるように仕向ける制度です。
これにはもちろん注意点があります。
1. 利用顧客層と内容
2. 期間制限と利用頻度、ステータスの設定
3. 特典内容とコスト
4. 管理方法
内容や制度によっては全く効果がないものになってしまいます。
また、コストが大きすぎて継続できなかったり、逆に魅力のない特典で会員数が伸び悩んだりします。また、アプリの開発をするにしても、あまり使わないアプリを入れっぱなしにしてくれるのか容量との戦いになったり、
色々と考える点はありますが、プログラムの例を箇条書きで記載します。今までのステータス制度を参考に書いております。
・管理方法はアプリとハードタイプのカード。アプリで予約もできるとベスト。その場合は予約エンジンも開発が必要。外部委託では連携が難しい。
・ポイントが貯まる。
・宿泊回数に応じてランクアップ。もしくは年間累計獲得ポイントが〇〇以上に足した場合ランクアップ。
・ランクアップは申告制。アプリ内で申告後ランクアップし、ハードカードも送付される。もしくは次回宿泊時にお渡し。
・2年間継続、2年後の年間累計獲得ポイントや宿泊回数が規定に満たない場合、該当するランクまでダウン。
特典は、会員限定価格の提示、朝食無料や、部屋アップグレード、駐車場無料、ホテルクレジット、レイトアウト、アーリーチェックインなどの対応がステータスごとに増えていく。
などになります。
これもChat GPTに例を考えてもらいました。それが下記の内容です。
このように制度や商品などの開発は自社サイトの魅力を挙げてくれます。
4. 情報発信を行い、認知度を上げる。
いよいよ、みなさんがお待ちかねの情報発信になります。
こちらはすでに多くのビジネスオーナー様が頑張っているSNS。みなさんも個人もしくは法人として運用を行っているのではないでしょうか。
私も9月から欧米向けにアカウントを新規作成を行い、観光地の情報発信を始めました。自然、地方などのフォーカスされていない地域にフォーカスして発信します。
そんなSNSですが、最近はTikTok、Instagram、Facebook、Youtube、X、
LINE、など多くのプラットフォームがあるので何をすればいいか迷いませんか?全てできれば問題ないのですが、リソースに限りがある中でどこに注力するか決めなければならない時があります。このNoteもSNSの一つではないでしょうか。
何をどのように使っていくかはビジネススタイルとターゲット顧客層によって変わってきます。Instagram運用が人気なのは、ビジュアルでの情報発信がメインで予約につながりやすい点と、観光を行う際に日本人はSNSを利用して地域を調べるという若者の傾向があるので効果的と思われます。
海外向けに発信する場合、例えば中国では情報規制により多くのSNSは使われなかったりします。
情報発信に関しては、SNS以外にも雑誌、テレビ、ラジオ、メールマガジン、新聞、イベントへの参加、口コミなど様々な手段があります。
今何をどうしたいかによって選択する手段を変えて適宜適切な方法で情報発信をすることをお勧めします。
また、最初から情報発信をする、情報発信をしますという代行者もたくさんおります。
PV数や認知度は上がりますが、前述した3点ができていないと、肝心のキャッシュポイントまで辿り着かないため、情報発信をする前に整備しておくことをお勧めします。
1~3は農業でいう種まき、4の情報発信は栄養を与え、最後に美味しく実って刈り取る作業と思っていただくとわかりやすいのではないでしょうか。
旅あとに大切なことがあります。
口コミの増加です。
唱導(Advocacy)という部分ですが、現代のネット社会では、企業が宣伝する内容より、実体験した人の言葉を信じる人が多いですよね。
口コミはその役割を果たしており、口コミが少ないと利用者も少ない、評価が高くても信じられないという心境にユーザーは陥ります。
そのため、チェックアウトなどの時に口コミ投稿促進に向けた活動をすることをお勧めします。
SNSはとても大切で無料で発信できるので、労力や手間はとてもかかりますが長期的には効果的です。しかし情報発信手段は他にもたくさんあり、それぞれがそれぞれの役割を担います。SNS代行業者が増えたのは、SNSが認知度を上げるのに効果的、PV数を増やせる、会社的にもマンパワーと定額の動画編集ソフトやスキルさえあれば少額投資でビジネス化できるため参入しやすいことにあります。
また、売上UPだけを考えるのであれば、優先されるのは認知度の向上のため、ビジネスのファーストステップを担ってもらえます。
皆様の現状において、何がいいのか、みなさんに適した情報発信手段をお考えください。
なんてことはない。実はマーケティングの基本に沿った話をしているだけです。
長文になりましたが、1〜4はマーケティングの原則4Psに沿って詳しく書いたにすぎません。
マーケティングは突き詰めるとおくが深いですし、調査やそのほか色々と大変な地道な作業が多いです。
ですが、この基本ができて土台を作成してから色々と取り組むことをお勧めします。
観光業にとっては、そのほか4Isという商品特性や、製品製造販売業(マーチャンダイス業)とは違う特性もあります。
自社売上を伸ばす!という人がかなりいるのですが、みなさんはいかがでしょうか。ではその後にOTAと自社サイトの販売比率(シェア)をどうしますか?と聞くと、”比率は関係ない、自社売上を伸ばせばいい”という答えが返ってきたことがあります。
みなさんは違和感感じませんか?
宿泊業の場合、自社売上を伸ばす=シェアを伸ばす=OTAの売上を下げる=OTAのシェアを下げるということになるのですが、お分かりでしょうか。
なぜなら、販売できる部屋数に限りがあるからです。
もちろん、稼働率が40%や50%の施設様はシェアの変化は気にしなくていいのですが、稼働率が適正でこれ以上増やしすぎるとよくない(利益率が悪くなる)ポイントというのが宿泊経営では存在します。
小売業や製造業では、在庫は不足すれば追加で作って売ればいいのですが、宿泊施設はそうはいきません。
また、在庫の持ち越しが翌日にできないため、宿泊当日の在庫は予約開始から当日までに適正数販売しなければなりません。
それができなかった場合、どうすることもできません。
小売業の場合、ある程度在庫の保管が効きますが、それができないということです。
その問題を解決するためにレベニューマネジメントが確立されました。
要は、限りのある在庫で売上は最大化できているという施設が次に取るのは当期利益の最大化。これは米国ファイナンス授業において最初に定義される企業の存在目的です。
もうお分かりかと思いますが、今回の自社予約UP!というタイトルには2つの目的があり、”売上”をUPと”利益”UPの目的があり、今回は利益UPのための自社予約サイトUPの手順の公開でした。
売上UPを目的とする場合、1〜3は考えなくても、大丈夫ですが、最初から取り組んでおくと最終的には行うべき手法なのでお勧めはしています。
また売上UPの段階であるならば、予約経路は絞らない方が賢明です。
とりあえず宿泊していただき、気に入っていただき、リピーターが増えてきたら自社予約の促す施策をとり利益の最大化を狙いましょう。
マーケティングの話はさらに深く掘り下げ、3Cやカスタマージャーニー、顧客購入心理、購入フローなども突き詰めれば深く深くなっていきます。
どこまでやるかは皆様次第ですが、少なくとも今回記載した基本はカバーすることをお勧めします。
まとめ
ビジネスの現状において少し手法が変わってきます。
宿泊施設の場合、顕著に影響が出ますので、今何をすべきかお考えください。
自社予約UPをしたい場合(利益を最大化する時)
・自社サイトが必ずお得になるよう徹底し、ブランディングの一つとなります。(Pricing)
・Webサイトを改善します(Place)
・制度や独自商品を販売し囲いこみましょう (Product)
・情報発信を適切なターゲットに行いましょう(Promotion)
売上だけをとりあえず伸ばしたい場合
自社サイトだけでなく、OTAでの販売も整えましょう。
この場合、1~3も重要ですが、認知度を上げるために”情報発信”が重要になります。
自社予約にこだわりすぎるとそもそもの売上が落ちる可能性もあります。
しかし最終的に自社予約は増やすべきなので、最初から整理しておくことをお勧めします。後から整理しようとすると煩雑になりますし、通常業務に押されてなかなか進まない可能性が非常に高いです。
以上。宿泊施設の利益を上げるために自社サイト予約率のUPとその基本手段でした。
お話しやご相談などございましたらお気軽にご連絡ください。
観光を通して日本を元気に
株式会社Hospitality Bridge
代表取締役社長
常井 大輝(トコイヒロキ)