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全然大丈夫だよ~

昨日は雨が情緒なくどざどざと降って、雷がゴロゴロと鳴った。
小学生の頃に飼っていた犬のことを思い出す。ビーグルと何かのミックスだった。彼は雷が鳴ると怯えてわおんわおんと鳴いた。室外で飼われていたが、雨が降ったときは玄関に入れていた。わたしは玄関に犬がいるのが嬉しくて宮地すみれさんよろしく「全然大丈夫だよ~」と言って頭を撫でて慰めた。
彼の頭は小さく、いつも温かかった。頭を撫でるとお返しに手をぺロペロとなめてくれる。「こわいね」わたしは彼に言う。こわいこわいと言いながら彼はわたしの手をなめる。

かわいいかわいい犬が死んでしまってから、我が家で次の犬をお迎えすることはなかった。当時わたしは東京に住んでいたので、父親と母親でどんな会話がなされたかは知るところではないが、多分父親も母親も彼以外の犬を家に迎え入れる気持ちにはならなかったのだと思う。わたしももし相談されていたら「う~ん」とお茶を濁していただろう。
彼はたった一人の存在で、他の誰かで埋めることに気が進まなかった。もちろん、新たな犬をお迎えしていたら同じようにかわいがっただろう。犬を飼っている人が羨ましい。

雷が鳴ると犬のことを思い出す。どこかの家から遠吠えが聴こえると、あの頃のように「全然大丈夫だよ~」と小さな声で、虚空に向かって言う。


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