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ほら、こっち見て、ほら、ほらほら
安全地帯の「悲しみにさよなら」という曲を知っていますか?
わたしが音楽の専門学校に入学して最初に覚えた曲で、素敵だとは思うのだけど、この歌詞の主人公は恋愛においていくぶんパワー系すぎる気がする。
“泣かないで ひとりで ほほえんで みつめて あなたのそばに いるから”
19歳ではじめて聴いてから今でもまったく同じ感想なのだけど、これは無茶な要望ではないだろうか。泣いている人を目の前にして「泣かないで、そばにいるから、ほら、こっち見て、ほら、ほらほら」と言っている感じがどうしてもしてしまう。
わたしが泣いている人の立場だったら「涙腺も自分でコントロールさせてもらえないの?」とさらにわんわん泣くと思う。
どうして泣いてはいけないのか。もちろん泣いているより笑っているほうがハッピーなのだけど、生きていれば泣きたくなるときだってたくさんある。泣いてストレスを発散させる人もたくさんいる。
涙の原因(悲しみ)が主人公にあるとしたら、めちゃくちゃ怖い。泣かせておいて「悲しみにさよならしろ」は恐怖でしかない。
ただ、涙の原因が主人公にない場合は話が変わってくる。パワー系であることには違いないのだけど、いい男に見えてくる。歌詞をすべて読んでもこの女性(女性とも書いてはないのだけど女性ですよね?もちろん男と男でもいいのだけど、いちおう女性とします)の泣いた理由は描かれていない。
たとえば、この女性が仕事をクビになって泣いているとして「泣かないで そばにいるから」と話しかけているとしたらちょっといい男に見えてきませんか?
あるいは、(歌詞を読む限り頻繁に会っているような関係なので考えにくいけど)この女性は実は別の男性を付き合っていて、恋愛相談を主人公にしているとしたらこのパワー系にもある程度納得がいく。チャンスだもの。
5時間くらいずっと「悲しみにさよなら」を聴きながらこの文章を書いていたらそういう歌詞にも思えてきた。
うーん。どうなのでしょうね。
“愛をかなえられたら”
と言っているのでまだ付き合ってはいないという説もあります(今思った)でも、ただ付き合っただけでは「愛をかなえた」ことにはならなくて、もっと深い心の繋がりがほしい、という意味にも捉えられる。
そもそも「愛をかなえる」とは何なのか。深いではないか。
なんだかすごく良い歌詞に思えてきた。
この歌詞を書いたのは玉置浩二さんではなくて、松井五郎さんという作詞家の方です。Wikipediaを見てみると「6人目の安全地帯メンバーとも言われ…」と書いてある。
オークラさんじゃないか。(3人目のバナナマンと言われている)
玉置さんに似合うようにパワー系の主人公にしたのか、あるいは松井さん本人がパワー系なのか、はたまたパワー系という解釈そのものが違っているのか…と歌詞を読み解くのはとても楽しい。
でもわたしはこの歌詞を、付き合っている女性を泣かせたくせに「ほほえんで みつめて」と無茶な要望をして、ひとりだけロマンチックな気分になっているパワー系の主人公の話だと思いたいです。
男って馬鹿よね、って思いたい。
#エッセイ #歌詞 #安全地帯 #悲しみにさよなら