ロングスカートのおばさんは夜空を見上げる
正直言って、動揺した。
矢作さんが結婚したときはしみじみ「兼ちゃんおめでとう」と思ったし日村さんが結婚したときは泣きながら拍手したし春日さんが結婚したときはひたすらニヤニヤしたしその他の芸人さんや芸能人が結婚したときは「結婚かぁ」くらいにしか思わない。
でも、若林さんがオールナイトニッポンで結婚発表したという噂を聞いたとき(リアルタイムでは聴いていなかった)わたしは脳天をシャーペンの先で突かれたときくらい衝撃を受けた。
ラジオの当日、わたしはこのように言った。
「ロングスカートのおばさん」とはオードリーがイメージするリトルトゥースの代表的な服装と年齢層を指している。リトルトゥースはラジオリスナーの総称。わたしはへビーリトルトゥースだ。
わたしは若林さんのことを考えるとき、確かにロングスカートを履いたおばさんになっている。ロングスカートは茶系で、暖色系の靴下とスニーカーを履いている。上はシャツの上に暖色系のカーディガンを着ている。髪は黒で少し伸びたショートカット。ほうれい線が気になるけれど、自分では童顔の類だと思っている。年齢は44〜46歳。家でひとりでジェンガをやって最後に蹴り飛ばすという奇行をする若林さんを後ろから抱きしめてあげたいし、部屋の壁にぶん投げられた靴下を回収するのは自分の役目だと思っているし、春日さんのことは少しだけ下に見ている。
実際のわたしは32歳の男性で、若林さんのことを尊敬していて、若林さんよりも遙かに人見知りで、いよいよガールズバーに行って性格を矯正しないと人生が詰みそうだと焦ったりしているわけなのだけど、若林さんが結婚すると聞いたとき、わたしは『取り残された・・・』という気持ちになった。
自分でもどういう感情なの?と思う。数日経った昨日もロングスカートを履いたおばさんは相変わらず夜空を見上げて少し涙を流すなどしていた。なんで泣いているのかわからない、でも泣くのだ。
これから若林さんは奥さんとふたりでジェンガをするし、もう壁に靴下をぶん投げることはないのかもしれない。
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結婚発表のラジオを聴いたのは日曜の夜だった。すぐにでも聴きたかったけれど、心の準備をするのに1日必要だった。若林さんはいつも通りだった。西加奈子さんの名言である「若林くん、童貞やんなぁ」のセオリーに当てはまらないほどの平常ぶりで、わたしは少し驚いた。今後の若林さんのフリートークが楽しみだし、なによりエッセイが楽しみだ。
オードリーが既婚者コンビになったのも不思議な感じがする。もうコンビニのイートインで食事をすることはなくなるのだろうか。煙草を吸いにくるギャルみたいな女の子とはもう話せないのだろうか。
今でもロングスカートのおばさんと実際の自分とが心の中でせめぎあっていて、おめでとう、と思ったり、ラジオで奥さんとの結婚の決め手のひとつが「笑いのツボが合うこと」だったと話していたけど「わたしだって若林さんと笑いのツボ合うわよ!」とか思ったりしている。
若林さんご結婚おめでとうございます。
これからも楽しいラジオを聴かせてください。