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メガバンク銀行員が教えるベンチャー企業のための資金調達の仕方(超基礎)

はじめに

近年、インターネット、クラウド、IT等の技術革新や各種規制緩和により個人の起業のハードルが低くなったように思える。また起業に必要な資金についても、クラウドファンディングのような新しい資金調達方法だけでなく、政府系金融機関の創業支援融資やメガバンクにおいても、スタートアップ支援を強化するなど、起業を試みる者やベンチャー企業家への資金調達環境も少しずつ改善してきたものと思われる。

一方、借り手に対する金融リテラシーの育成や向上等の機会・情報提供についてはまだまだ不十分と感じる。

本記事では、メガバンクで多くの借入案件の相談を受けてきた立場から、借入を行いたい企業が銀行からの借入を行う際に、どのような情報を整理し、銀行に相談を持ち込めば良いかという点にフォーカスして、説明したいと思う。

本コラムが、スタートアップ企業やベンチャー企業の経営者、その財務担当者、あるいは創業間もない起業家の方々の資金調達の一助となり、一人でも多くの人の夢実現に貢献できればと思う。

1. 企業概要を整理する(What is your company?)


法人(ほうじん、独: juristische Person、仏: personne morale、英: juridical person)とは、自然人以外で、法律によって「人」とされているものをいう。ここでいう「人」とは、権利義務の主体となることができる資格(権利能力)を認められたものをいう。引用Wikipedia

初対面で人に会うとき、当たり前であるが自己紹介を行うと思う。法人も同様、初対面で銀行等の貸出人候補先に接点を持つ際は、自己紹介を行う必要がある。
これが意外と難しいと思う。読者も経験したことがあると思うが、自分を知ることは非常に難しい。また自分を簡単に説明することも難しい。したがって、普段より、自身の企業概要を整理することをお薦めしたい。

銀行等の貸出人候補先が求める主な情報とは下記のようなもの。まずは最低限これらを整理することが望ましいと思う。
 ①会社名
 ②住所
 ③設立年月日
 ④事業概要
 ⑤主な仕入先・販売先
 ⑥従業員数
 ⑦主なターゲット市場
 ⑧競合他社
 ⑨ビジネスモデル及び強み・弱み等

2.なぜ資金が必要なのか整理する(For what its founds is?)

「お金に色はない」というが、貸出人にとっては、何に使われるか非常に気になる点。ここが一番大事なように思える。 

銀行に入行したばかりの時に、先輩から「もし、お前が人からお金を貸して欲しいと言われたら、その使途については非常に気になるだろう。その借りたいという人間がお前の大事な金をギャンブルに使うために必要と言われたら、そいつに金を貸したいか?普通は貸したくないだろう。なぜなら、それは戻ってこないと思うから。だから使途の確認が非常に重要なんだ」と常々教育された。

このように、借入を行う際は、お金に色をつけることが非常に重要。

たとえば、IT設備投資を行うのであれば「設備資金」、製品の仕入れから販売後の資金回収までのタイムラグの間に必要な資金であれば「運転資金」。

まずはなぜ資金が必要か、その必要金額はToo muchではないかなど、まずは自身の会社で考えることをお薦めしたい。

なかなか自身の会社で整理がつかない場合は、親身になってくれる貸出人候補先に相談をすることをお薦めしたい。

3.返済方法、返済可能計画を整理する(How to repay?)

当たり前の話であるが、借入は、貸出人に対して期限通りに返済をしなければいけない資金調達方法である。

まず、資金調達方法について改めて整理する。伝統的な資金調達方法には、主にエクイティファイナンスとデットファイナンスの2つに分類される。

エクイティファイナンスとは、株式を発行することで資金を調達する方法。
デットファイナンスは、銀行などの金融機関や投資家からお金を借り入れることで資金を調達する方法のことを言う。

それぞれメリット、デメリットがあるが、大きな違いは、エクイティファイナンスの場合、原則、株主に出資金を返す義務がないのに対して、デット・ファイナンスは貸出人に対して返済義務を負うことになる。

上記のみを見た場合、エクイティファイナンスの方が返済義務がないので、デットファイナンスより良い調達手段ではないかと思われるかもしれないが、同ファイナンスを行う場合は、出資者に対して、一般的に議決権付き株式を発行するので、彼らに対して会社経営上の発言権を与えることになる。つまり、会社経営運営上、株主も一程度「モノを言う権利」をもつことになり、これら株主に対してもケアをより一層行う必要がある。

なお、本記事は、デットファイナンス(主に借入)にフォーカスしているので、エクイティファイナンスに関する詳細については割愛したい。

要するに、借入とは借入する前に貸出人と、主に下記の事項を前もって取り決め、その取り決め通りに返済を行わないといけない資金であるため、これら事柄を自身の企業の懐事情(現状及び将来の財務状況)を加味して検討する必要がある調達である。

①借入希望額
②借入実行希望日
③返済予定日
④借入金利
⑤返済方法(分割返済、返済期限日に一括して返済する方法等)
⑥その他(担保要否、連帯保証人要否、その他借入条件等)

4.何かあった際の保険はあるかを整理する(How can lender protect loan provided by them?)

既述3にも記載したが、デットファイナンスは返済義務が生じるファイナンス形態。つまり、貸出人にとっては、貸したお金は、必ず回収しなければいけない。

銀行の借入を例にとって改めてデットファイナンスの仕組みについて考えてい。

銀行が企業へ資金を貸出するお金はどこから調達してくるのかというと、個人等が銀行に預けている預金である(もちろん他手段もあるがここでは割愛)。つまり、銀行は我々が預けている預金を原資に企業へ貸出を行っている。

要するに、皆さんの大事に預けているお金を原資に、企業への貸出を行っている。したがって、借入人には、必ず返済を行って貰わないと都合が悪い。

もしある日突然、読者が、預金を引き出そうと思い、銀行ATMに行ったら、あるはずの残高がゼロとなっていたら、預金者である読者はどんな気持ちになるだろうか。怒りの気持ちだけでなく、生活にも困窮するだろう。そうあってはならないため、貸出人である銀行は必ず借入人から返済を要請しなければならない。

一方、借入人サイドとしては、企業は生き物。事業が計画通りいけばよいが、そのようにならないこともある。そして当初取り決めた返済ができない最悪な状況となる可能性もある。

このような当初想定できないような事象が発生した場合(例えば企業が生む利益で返済ができなくなった場合)、どのような手段で返済を行うかを、借入前に整理しておくことが必要である。

例えば、借入を希望する企業に資産価値のある不動産などがあれば、それを担保とし借入を行うこともできると思うし、その企業の代表者が多くの資産を持っているのであれば連帯保証人として保証を銀行に差し入れることもできるかもしれない。

もちろん借入人にとっては、なるべく自分あるいは企業の大事な資産を銀行に担保として預けることは望んでいないと思うが、銀行にとっての保険(担保や保証等の保全)がある貸出であれば、保全が確保されていない貸出よりも貸出金利を低くして貸出を行うことができるかもしれないので、借入人にとっても優良な資産を担保として低金利で調達できる機会を創出できるので、それぞれのプロコンを整理して検討する必要があるだろう。


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