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自社をさらけ出したら"受け身の営業"から脱却した話。|Taica

素材メーカーや部品メーカーにとって、自社製品を利用する相手を見つけることは生命線ともいえる重要な活動。

従来通り、企業との商談を前提とした営業や展示会を実施するだけでなく、社外の人とオープンに会話し、学ぶことで新しいニーズを開拓する企業もいます。

今回は、DMM.make AKIBAで活動しメイカソンの実施でご一緒したことのある株式会社タイカ(以下、タイカ)の内田英之さんに、どのような活動を行ってきたか伺いました。

タイカは衝撃吸収・振動防止用素材「αGEL(アルファゲル)」や介護・福祉用品「αPLA(アルファプラ)」の製造・販売などを行うメーカーです。αGELはボールペンのグリップ部分やスニーカーのクッション材など幅広い用途で使用されています。


受け身の姿勢で変化は起こらない。

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内田 英之さん
株式会社タイカ 多機能素材事業本部 αゲル営業部 課長代理

「私の所属するαゲル営業部は法人向けの案件がほとんどで引き合いも多いことから、どうしても受け身になりがちでした。そこで、外部への発信力を上げること、新しいビジネス領域にも展開することを考えるようになりました。

研究開発本部長がDMM.make AKIBAの会員の方と知り合いだったこともあり、営業の私と研究開発室の2名を中心にDMM.make AKIBAで”受け身”からの脱却を目指した活動を開始しました。」


まずは雑談から始めること。

「DMM.make AKIBAで定期的に開催されている交流会に参加するようになりました。

今まで受け身で営業していたのでαGELの新しいニーズを開拓するのが難しかったんです。そこでまずはサンプルや製品・開発中の試作品を並べて、交流会の参加者とオープンに話すことから始めました。

必ずしも案件ベースで考えているわけではなく、雑談から始めて相手とフラットな関係を作ることが大事だとそこで気づきました

筋電義手を開発しているMission Arm Japanさんにお声がけいただたのは印象的でした。

義手の指の腹のパーツをシリコンゴムなどで作っていたが、重いものがどうしても滑ってしまうという悩みを伺い弊社で試作品をつくったところ、780mlの水が入ったペットボトルをつかんで持ち上げることができました。

それまで注力していたαGELの特性とは異なる新しいニーズの発見でした。

義手のユーザーさんが笑顔で掴んで振っている映像を見せてもらったときは報われたと感じましたね。

しっぽコール」を手掛けるtechikaの矢島佳澄さんには、柔らかいハードウェアを作る素材として関心を持っていただきました。

自分のアイディアをIoTで実現していく彼女の姿勢は私たちにはないものだと感じたので、プロダクト開発とは別に契約を結び、タイカ社内でIoTセミナーを開催してもらうことになりました。

アイディア出しのプロセスや電子回路を用いたモノづくりを社内に広めていただいており、大きな成果だと言えます。」


社外を巻き込んだメイカソンが社員の自信につながる。

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▲写真左はDMM.make AKIBAの渡邉仁史。メイカソンの企画・運営をサポートした。

「日本ロレアルさんがDMM.make AKIBAで開催していたハッカソンを拝見し、アイディアソンやメイカソンの実態を知りました。そのときαGELの認知度をもっと高めたい、何か新しいものを打ち出したいと思いました。

そこで、知見のあったDMM.make AKIBAの渡邉さんに相談してタイカ主催のメイカソンを開催しました。

当初はアイディアソンだけのつもりだったんですが、物性値だけでは測れない情緒的な感触や感覚など、触らないと分からない部分がαGELには多い。

また、アイディアだけ頂いても実現が難しいかもしれないということもあり、渡邉さんからアドバイスをいただいて、プロトタイピングまでを含むメイカソンを実施することになりました。

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参加者は合計で35人。20代を中心に高校生から50代まで幅広い年齢層の人が集まりました。

審査員はタイカの開発チームやCAMPFIREのコミュニティマネージャー、東急ハンズ渋谷店のユニットリーダーに加え、『わくわくさん』としておなじみの久保田雅人さんに担当していただきました。」


専門的な技術者じゃない人の思考が社員を活性化する。

「当日は予想外のことが起きたりと、楽ではなかったですが、とても充実していました。

審査員それぞれのコメントにも学ぶことがありました。

久保田さん(わくわくさん)は楽しくなるようなアイディア、東急ハンズさんは店に置きたいかどうか、当社は「ゲルをちゃんと活かせているか」という素材的な観点。CAMPFIREさんは”クラウドファンディング受け”しやすいか・成功のイメージが持てるかを重視していました。

大賞を取ったチームの作品はクラウドファンディングでの製品化を目指しました。DMM.make AKIBAとタイカが制作のサポート、CAMPFIREさんがクラウドファンディング支援という体制でサポートしました。

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社内でも大きな関心が集まり、当日は他の事業部の人がわざわざ静岡から来てくれました。若い社員もたくさん集まったのですが、自分たちと年齢の変わらないような参加者の頑張りに刺激を受けていたようです。

普段は専門知識を持つエンジニアとのやりとりが多く、技術や物性についてのやりとりがメインになってしまうので、専門家でない人たちとアイディエーションの段階から交流できたのは貴重な経験でした。とくに営業1~2年目の子たちは、自分の知識を基にアドバイスできたので自信にも繋がったのではないでしょうか。

社外の方が考えるからこそ自分たちにとって発見も多くありました。」


メイカソンを通じて社員が自発的に。

「メイカソンが終わってから、”自分だったらどういうものを作るのだろう?”というような議論が社内で起こり、自分発信の意思が芽生え始めたということを聞きました。

受け身の体制からの脱却が果たされつつあるのは大きな変化ですね。お客様に対する提案にも更に良い影響が出てくるだろうと思っています。

また、IoT(Internet of Things)についても真剣に考えるようになりました。それまではトレンドとしてなんとなく知っているというレベルだったんですけれど、techikaの矢島さんにもワークショップの講師として研究開発室に来ていただいて、IoTと自分たちの商材をどう組み合わせることができるのか、真剣に考えるメンバーが増えています

タイカ製品を利用した新製品はまだ実現していませんが、試作の度にもらう具体的なフィードバックは、商品改善や新規用途開拓などを考える源になっています。そういう意味では、開発だけでなく営業の視点でも良い影響がありました。」


外部の方から学ぶのはアイディアではなくストーリー。

受け身からの脱却のために社外の方と自社の課題やプロダクトについてオープンに話したりメイカソンを開催したことで、新しいニーズに気づいたり社内の活性化に繋がりました。

いま私たちが外部の方から学んでいるのはアイディアそのものよりも、どういう経験で、何を思ったからそのアイディアに至ったのか、というストーリーです。

積極的な交流を通じて同じような思考プロセスを身に着けることで、最終的には自分たち発信の製品を作りたいと思っています。

もちろん、全てを自社で完成させることはできないでしょうから、その時には社外の方も巻き込んで共創していきたいですね。」

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さいごに。

DMM.make AKIBAではスタートアップ150社を含む600社・4,000名以上の会員、モノづくりを支えるスポンサー企業、地方自治体、教育機関、海外機関など国内外に広がるコミュニティ・ネットワークを築いています。

法人向けには新規事業開発やオープンイノベーションなどに向けたマッチング支援、メイカソン、ハッカソンやビジネスイベント、IoT人材育成研修の企画・運営も行なっております。

ご興味のある方はお気軽にお問い合わせください。

※現在は新型コロナウイルス感染拡大防止のためイベントはオンラインにて行っております。
※本記事はDMM.make AKIBA「FACT」(閉鎖中)を再編集したものです。