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"細胞の辞書"をつくりAIで解析。誰もが納得できる医療への挑戦。|CYBO

起業当初からDMM.make AKIBAに入居し開発を行う東大発スタートアップの株式会社CYBO(サイボ)はAIとビッグデータを活用し細胞の診断や解析、加工などのソリューションを提供しています。

今回はCYBOの3名に事業や開発についてお話を伺いました。

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(左から)
新田 尚(にった・なお)さん
株式会社CYBO / 代表取締役

杉村 武昭(すぎむら・たけあき)さん
株式会社CYBO / 開発部長

兼松 美貴(かねまつ・みき)さん
株式会社CYBO


細胞は生物の基本単位であり、複雑。

[CYBO・新田さん]
「細胞というのは生物の基本単位ですが、細胞そのものは複雑で色々な種類があります。髪の毛を作る細胞もあれば病気をやっつける免疫細胞もあるし脳細胞もあります。

そのため複雑で多様な細胞を解析することは簡単ではありません。この課題に対して私たちはAIとの相性がよいと考え、AIとビッグデータで細胞を再分類し活用することを事業としています。

現在開発を進めているセルソーター(細胞を分取する装置)「ENMA(エンマ)」や細胞をビッグデータ化しAIで解析するプラットフォーム「SHIGI(シギ)」にもAIを活用しています。

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▲セルソーター「ENMA」



大学での研究から起業へ。

[CYBO・新田さん]
「東京大学大学院在学中は免疫細胞の活性化を計測する研究をしながらバイオ系の大学発スタートアップで働いていました。

大学卒業後もそのスタートアップで働いていて、大手製薬会社と共同研究も行っていましたが、その後もっと大きな規模の事業を経験したいと考え2008年にソニーに入社しました。

当時ブルーレイディスクとHD DVDの市場競争がひと段落して、ソニーでブルーレイディスクを開発していたチームが次の製品として細胞の分析装置を作ろうとしていて、そのチームにジョインしました。

この頃にソニーで開発した製品が、現在世界中で販売されているソニー製の細胞分析装置です。大きな企業で新たな事業を立ち上げ、事業を成長させることができた経験は現在のCYBOにも活かされています。

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2016年に東京大学の合田圭介氏が率いる内閣府の革新的研究開発推進プログラムImPACT(インパクト)『セレンディピティの計画的創出』に参画しました。

次世代の細胞解析技術の開発を目指したプログラムで、光学やAI、信号処理、医学など様々な分野の専門家が集結し、ピーク時は総勢200名ほどの研究者が在籍していました。

大学は事業化という観点で知見が乏しいということで声をかけられて参画しました。2018年には研究成果が権威ある学術雑誌『Cell』に掲載され、世界的にも認められました

公的なプロジェクトということで終了時期が決まっていたこともあり、終了の半年前の2018年7月​に『ImPACT』の意思を受け継ぐ形でCYBOを創業しました。ここにいる3人は全員『ImPACT』にいたメンバーです。

東京大学 本郷キャンパスが近く設備も充実していたので創業当時からDMM.make AKIBAに入居しています

Project Room(DMM.make AKIBAの貸しオフィスルーム)を使用していますが、恐らく医療機器製造業登録されている企業で1番小さなオフィスですね(笑)。」



細胞をビッグデータ化しAIで解析。

[CYBO・新田さん]
「前述の通り、細胞は多種多様で複雑です。そのためガン細胞などの異常を見つけ出すことは極めて大変な作業です。さらに、その異常を高感度で発見するには大量の細胞を観察しなければなりません

例えば人力で100個の細胞の状態を確認して、その100個の中に異常がなければ問題ないと判断しても、その100個以外の細胞に異常があるかもしれず、これが感度の限界となります。より多くの細胞を確認すれば、感度を向上することができます。

細胞を1つずつ確認する方法は精度が高いですが、人間が行うには時間や金銭的な限界があります。これをビッグデータとAI、画像解析を活用すれば比較的短時間で、高精度かつ高感度で解析することができます。


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▲「SHIGI」のプロトタイプ第1号

そのために開発したのがセルアナライザー・プラットフォーム『SHIGI(シギ)』です。

向かって左手に長く伸びている筒状の部分(スタッカー)の一方から、スライドガラスが順に右手の白い部分へ自動的に移動しスキャン。スキャンが終わったスライドガラスはもう一方のスタッカーで保管されます。

スキャンされたデータが一次処理された状態でクラウド上にアップロードされてAIで解析。データはコンピュータなどで確認することができます。

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▲スタッカーからスキャンする部分まで移動するステージ部分

『SHIGI』はこのハードウェアだけでなく細胞のビッグデータ、つまり"細胞の辞書"とリアルタイムで解析するAIシステムを活用したプラットフォームのことです。

このプロトタイプ第1号となったハードウェアの外装はDMM.make AKIBAのテックスタッフ(DMM.make AKIBAに常駐する技術スタッフ)の方にお願いして作ってもらいました

板金加工のためのデータの修正、取付部分の設計、外装パーツの組付けなどをお願いしました。外装と内部を仲立ちするようなパーツや一部外装パーツはDMM.make AKIBAのCNC加工機やDMM.make 3Dプリントも使用されています。

ここのエッジの出し方などプロダクトデザイナーの要望を汲み取ってもらえてかっこよく仕上がりました。

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現在、この『SHIGI』を使った高速自動3D細胞診システムの実用化に向けて、公益財団法人がん研究会と共同研究を行っています。

精度向上と省力化を両立したAI細胞診システムとしての実用化を進めることで、子宮頸がんの早期発見に寄与することを目指しています。

この技術は多くの病院に導入していただいて、ガンの早期発見に役立てて頂きたいと考えているため、正式に製品をローンチする際には医療機関が導入しやすいような価格と方法で提供していきたいと思っています。


また、医療機器は検査項目ごとに検査装置が存在し個別に最適化されていて、全て揃えるには莫大な費用が必要です。

より導入しやすく汎用性のある機器を開発するために、医療分野以外の技術も参考になると考えています。DMM.make AKIBAでは他の企業と交流する機会にも恵まれているので、様々な方と情報交換をしながら、よりよい医療機器を開発するアイデアを模索しています。

従来の医療機器開発から発想を変えていきたいですね


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CYBOのロゴ(青い部分)はシギという鳥の頭をモチーフにしています。シギは広い視野を持つことで知られている鳥です。

私たちも広い視野からたくさんのデータを集めて課題を解決していく、そんな存在になりたいと思っています。そして誰もが検査結果に安心して納得できる医療を届けていきたいです。



さいごに。

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