マーケティングで使えるフレームワーク(後編)【連載:リサーチ会社によるマーケティング入門書Vol.4】
皆さん、こんにちは。電通マクロミルインサイト(DMI)です。現在、連載にて「マーケティングへの理解を深める」ためのヒントになる情報を複数回にわたってお伝えしています。
マーケティングで使える4つのフレームワークについて、前編ではPEST分析、3Cを、中編ではSWOT分析、5forcesについて、リサーチ会社が使っているポイントを落とし込んで紹介しました。
今回は、STP、4P、消費者行動モデル(AIDMA・AISAS・SIPS)、について解説します。
前編・中編で解説した4つのフレームワーク(PEST分析、3C、SWOT分析、5forces)で分析し事業が決まったら、今回ご紹介するSTPでマーケティングの方針を決め、続いて4Pを考えていき、商品・価格・流通・販促の4領域ごとの具体的な施策にまで落とし込んでいきましょう。
STP
◇STPとは
・セグメンテーション(Segmentation)
・ターゲティング(Targeting)
・ポジショニング(Positioning)の略語です。
セグメンテーション Segmentation
同じニーズや特性を持つセグメントに、市場を細分化すること。
ターゲティング Targeting
細分化したセグメントの中から、自社が狙うべき戦略市場(ターゲット顧客)を選定すること。
ポジショニング Positioning
選定したターゲットに、戦略市場で自社が得ればれるポイントを明確にする。
◇STPの特徴
誰に(どの市場に)対し、何を(どのような価値を)「売り」にするかを設定し、効率よく売上を上げられるのか、を見極めるために使用するフレームです。 商品を売るためのターゲット選定や、市場でのポジショニングを行う時に使用します。
▼セグメンテーション / ターゲティング / ポジショニング
市場を切り分けて、最もふさわしいセグメントを選ぶのがセグメンテーションとターゲティングです。BtoCや消費財の場合、セグメンテーションの際に市場を切り分ける変数は、次のようなものがとてもよく用いられます。
● デモグラフィック(人口統計学的属性)
年齢、性別、職業、年収
● 地理的変数
エリア、季節、気候、天候
● 心理的変数
志向性、ライフスタイル、 情報感度
● 行動変数(ファネル)
ロイヤル、ヘビー、ミドル、ライト、中止、認知未利用
◇STP事例
世の中を見渡すと、デモグラフィック(人口統計学的属性)でセグメンテーションされた商品は、とても多いです。
例えば、若い女性向けのアプリ、子供やシニア向けのスマホ、ビジネスマン向けのスーツなどが挙げられます。
ただし、心理的変数を加味しない、単純なデモグラフィックだけのセグメンテーションは現在少ないです。それは「20代男性」とひとくくりにしても、志向性や関心度、情報感度などは多様になっているからです。
さらに市場規模、成長性、競合状況を考えた上で、ターゲットを決めます。
「競合との差別化ポイントや顧客に選ばれる特性」を考えるのがポジショニングで、アウトプットの形としては、2軸のポジショニングマップが代表的。ポジショニングは競合との差異を作ることですから、競合を決めて、差異をつくれる領域を考えます。その際、既存の軸にとらわれず、新しい軸を考えることも大切です。
例えば、これまでのアウトドアブランドといえば、高級で高機能というイメージが一般的でしたが、「ワークマン」は従来のイメージを一新しました。機能性を生かして、安価で品質の良いアウトドアという新しい軸を作り、アウトドアに馴染みにない女性をターゲットに、街中でも身に付けられる普段使いのデザインを提案しヒットにつながりました。
4P
◇4Pとは
4Pは、
・Product(製品)
・Price(価格)
・Place(流通)
・Promotion(販促)の略語。
◇4Pの特徴
4Pは、市場を分析することで、自社の強みを生かすマーケティング施策を考えることを目的としています。4Pはマーケティングミックス(マーケティングツールを組み合わせ、市場から望ましい反応を引き出す戦略)の代表的フレームワークと言われます。
▼4Pの設計
◇4Pの要素分解
4Pは次の要素に分解されます。
Product 製品(顧客ニーズを充たす製品設計)
● 製品特徴、機能、性能、容量、品質、サイズ、ラインナップ、ブランドイメージ
● 商品デザイン、パッケージデザイン
● アフターサービス
Price 価格(顧客が納得できる価格設計)
● 定価、販売希望価格
● 割引方法
● 支払い方法
Place 流通(顧客が接触しやすいチャネル設計)
● 調達、流通(デリバリー)方法
● 販売チャネル
● 在庫、輸送
Promotion 販促(顧客の行動を促す販促設計)
● 広告、宣伝
● 広報、PR
● 営業活動、販売促進策
● 店頭販促
代表的な4つの要因を競合と比較し商品サービス販売の施策を立て、各要因でターゲットのニーズを満たせているか考えることが重要です。また、Promotion(販促)は、最近は単に広告宣伝というより「顧客とのコミュニケーション」に重点が置かれるようになりました。そのため、顧客満足を高める顧客理解・管理もPromotion(販促)に含まれます。
消費者行動モデル (AIDMA、AISAS、SIPS)
消費者行動モデルとは、消費者行動の関係をモデル化したものです。具体的には、広告等で商品を認知してから購買までの一般的な過程の枠組みのこと。 AIDMA、AISAS、SIPSが代表的ですが、このモデルはカスタマージャーニーを描くときに知っていると便利です。
AIDMA
AIDMAとは消費者の購買モデルのひな形で、次の要素で構成されています。
A 認知・注意(Attention)
I 興味・関心(Interest)
D 欲求(Desire)
M 記憶(Memory)
A 行動(Action)
▼AIDMA(従来型の消費者行動モデル)
消費者は広告を見て、ある商品の存在を知り(Attention)、興味・関心を持ち(Interest)、実際にほしいという欲求(Desire)が起こります。それが記憶に残り(Memory)、実際に商品を買うという行動(Action)につながります。
AISAS
AISASは、AIDMAをインターネットの時代に適応したモデルで、次の要素で構成されています。
A 認知・注意(Attention)
I 興味・関心(Interest)
S 検索(Search)
A 行動(Action)
S 共有(Share)
▼AISAS(インターネット時代の消費者行動モデル)
消費者がある商品の存在を知り(Attention)、興味・関心を持つ(Interest)ところまではAIDMAと同じですが、その後はインターネットで商品を検索(Search)し、購入(Action)。その後SNSなどで共有(Share)するまでセットとなっています。
SIPS
SIPSとは、ソーシャルメディアの影響を考慮し、SNSを頻繁に利用する層の購買行動を説明した消費者購買モデル。AIDMAやAISASと併用することが前提です。
S 共感する(Sympathize)
I 確認する(Identify)
P 参加する(Participate)
S 共有 & 拡散する(Share & Spread)
▼SIPS
出発点が広告による認知ではなく、SNSなどからの共感(Sympathize)ではじまっていることがポイント。確認する(Identify)、参加する(Participate)を経て、共有・拡散(Share & Spread)された情報は、新たな消費者の共感(Sympathize)を呼び、広がりを見せます。
このように、前回お伝えした3Cなどで分析して事業が決まったら、
STPでマーケティングの方針を決め、4Pを考えて商品・価格・流通・販促の4領域ごとの具体的な施策を設計していきます。
ご紹介したフレームを、自社のマーケティング戦略を組み立てるツールとして使いこなす、ということを意識していきましょう。
ご一読いただき、ありがとうございました。
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