格闘技はインテリジェンスだ!!『IRE produced by 高橋サブミッション』感想

こんばんは、まごっとです。
『IRE produced by 高橋サブミッション』観ました!非常に面白かったです。

具体的に気になった試合・ポイントを語っていきたいと思います。
私が以前書いた試合前ガイドと見比べてみると楽しいかもしれません!
(対戦カード画像は高橋サブミッション雄己選手のTwitterより拝借しております)

倉本一真VS寒河江寿泰

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この試合は本当に驚きました。コンバット柔術の歴史においてnotableな試合であると思います。そして、私は倉本選手が今大会のMVPだと思いました。

まず、ポイントは壁レス。IREは本家コンバット柔術と違い、ケージ(壁)があります。壁に押し付けながら、何かしらの駆け引きが発生します。

倉本選手は名実ともに世界トップレベルのレスラー。壁レスももちろん得意です。寒河江選手をあっという間に壁に押し込みました。ここまでは想像がつきます。

その次に倉本選手が行ったアクション。自らの膝をついて、掌底を放つ。これが革命的だと思いました。「反則じゃないか」というコメントが解説からもありましたが、私がルールを把握している限り、反則ではありません。おそらく、解説の方が膝をついているのを見落としていたのでしょう。倉本選手は完璧にルールに則った試合をしていました。
実際に、公式としても「問題なかった」という声明が出されました。

本家コンバット柔術でも「自ら膝をついて掌底を出す」という攻撃はありました。が、壁がない状態でやるとどうでしょうか。相手の距離も取りづらいし、体勢も不安定だし、あまり有効な攻撃となりません。

しかし、壁があると押し込みながら安定した体勢で掌底を出すことができる。距離を見誤ることもない。純粋なアッパーとなります。

この思いつきそうで思いつかない、今回のルールを完璧に有効利用した攻撃で倉本選手は先手を取りました。おそらく、これで寒河江選手は「かつてない打撃の恐怖」を味わったと思います。ダメージもおそらくあって、出鼻をくじかれたと思います。目を腫らした攻撃がどのタイミングかわかりませんが、もしかしたらここだったかもしれません。

その流れで相手をテイクダウンして、寒河江選手が「いらっしゃいませ」状態かと思いましたが、倉本選手の相手を潰して掌底を打つ技術が本当に上手で、コンバット柔術として新しい完成形を提示したと思います。これほど掌底攻撃を完璧に使いこなした選手は見たことありません。その攻撃に寒河江選手はさらに面を食らったと思います。実際にKO寸前まで行ったと思います。寒河江選手はグラップリングの専門家でコンバット柔術の試合をそこそこやっていますが、「グラップリングの延長線上ではない、独立したコンバット柔術」の試合を初めて今回体感したのではないか、と感じました。逆に言えば、これまでのコンバット柔術の試合は「グラップリングの延長線上」だったと私は考えています。

おそらく、倉本選手がIREコンバット柔術ルールで最強ではないかと思います。壁なしだとどうなるかわかりませんが、このルールにはベストフィットしているでしょう。倉本選手自身も「壁があるのは大きい」と話していたようです。

たらればの議論にはなりますが、解説の金原選手も言っていたように「もしも寒河江選手が最初から座っていれば」どうなったかはわかりません。もしかしたら、寒河江選手は足関節が得意なので、オーバータイムや強制50/50かサドル移行を狙っていたのかも知れません。それもまたIREコンバット柔術ルールの特徴でもあります。その両選手が採用した戦略をいざ試合でドンとぶつけた結果、このようになったのだと思います

倉本選手がルールを熟知し、ルールに則って完璧に自分の強みを出した試合でした。

今成正和VS石黒翔也

私は「この試合は純粋なグラップリング対決になる」と予想していましたが、半分正しく、半分間違っていました。
石黒選手が殴る、いや、叩く叩く!この展開はあまり予想していませんでした。

そして、正しかったのは今成選手がスタンドを選んでいたこと。あまり座ろうとせず、むしろ石黒選手が座る展開もありました。おそらく、今成選手は50/50もしくはサドルへの移行を狙っていたのかと思います。しかし、それは石黒選手がたまに膝をつくことでうまく実現はしませんでした。

そして、決め手がないままオーバータイム。ここで石黒選手の戦略が光りました。オーバータイムは極められなければ、エスケープするまでの時間で勝負となります。エスケープとは、完全に相手から足が抜けること。そのため、場合によっては極めずに相手をがっちり掴む、それも有効な戦略となります。

今成選手から極めるのは容易ではありません。が、掴んで離さないのであればまだ容易にできます。石黒選手は先攻で、途中から膝が抜けてほぼ極められないような体勢になりました。しかし、絶対に離さない!そこで時間を稼いで1分半を使い果たしました。

逆に、後攻の今成選手は1分30秒の時間内に極めなければ勝てません。これは後攻に良くも悪くも焦りを生みます。そういう状況を作り出し、石黒選手は時間内にエスケープし、勝ちました。これもまた、ルールを熟知した戦略でした。解説の大沢ケンジさんも「勝負のキモがわかっている」とおっしゃっていました。そして、何よりも、ヒールなしのギありでやってきた石黒選手がグラップリングでも非常に高い足関節防御力がある、ということの証左でしょう。

格闘技はインテリジェンスだ!!!

私が今大会を通じて思ったことは、「格闘技はインテリジェンスだ!」ということです。

「インテリジェンス」とは何か?私が辞書などで調べた限り、インテリジェンスとは「情報」と「知性」2つ合わさったものです。「情報」を持っているだけでも足りず、「考える知性」を持っているだけでも足りない。「十分な情報」に基づいて「自ら考える」これが揃ってこその「インテリジェンス」なのです。

倉本選手は、ルールを熟知し、自らの強みと合わせて完璧な戦略を編み出しました。石黒選手は、勝敗の基準に基づいてオーバータイムを戦略的に行いました。

このようなインテリジェンスこそ格闘技には大事である、と教えてくれるような大会でした。

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