桃にもし字が書いてあったとして、桃の実在は半ばありきたりと言えますか?

私が大好きなオモコロチャンネル
そこで新たな原宿さんの深い言葉が誕生した。

桃にもし字が書いてあったとして、桃の実在は半ばありきたりと言えますか?

滲み出るバードケージャー


https://youtu.be/lBBR19757Wc?si=qgxNftX32I10hKpK&t=1209  より

この言葉を、西洋哲学で学士を取り、西洋哲学をそこそこ勉強した私が考察を行いたい。

「桃に字が書いてある」とはどういうことか

何かを考えるときに、言葉の一つ一つを正確に考え、着実に明らかにしてくのは非常に大事である。
最初に出てくる「桃に字が書いてある」とはどういうことかを考えてみよう。
考えられるパターンは2つである

①人間が手を加えることなく桃に字が書いてあるパターン

桃が木に成り、その時点ですでに字が書いてあるパターンである。
その字とは何かは明らかではない。その字が意味しているところは重要ではないと考えられる。
字が書いてあること、それ自体が重要なのであろう。
たとえば、書かれているのは「おいしい」でも良いだろう。
桃に「おいしい」と字が書いた状態で成る、ということである。
しかしながら、このパターンは想定されたものではないだろう。
なぜなら、そもそも桃に字が書かれた状態で成る、なんてことは現実にはありえないからである。
ただし、文脈として「もし」と書かれているので、ifのストーリーと話しているのであり、この流れで考えるのはありえることである。
だが、この仮定は現実から飛躍しすぎており、状況を精査した結果考慮すべき第一候補にあげるのは難しだろう。
よって、このパターンは外したい。

②人間が桃に字を書いたパターン

桃があり、そこに人間が文字を書いたパターンである。
①同様、そこに「何の字が」書かれているかは重要ではないだろう。
何でも良い、「おいしい」でも良い。
「おいしい」とマジックで桃に書いた状態、と例として考えられる。
この桃に面したとき、問いは続く

「実在は半ばありきたり」とはどういうことか

「実在」とは哲学で頻出ワードだが、その意味するところは難しい。
桃を例にすごく簡単に説明すると、桃そのものが存在するか、ということである。
たとえば、桃を全く見たことない宇宙人が地球に来て、桃を見たとする。
しかし、宇宙人は「なんだこれ?」となる。食べれるものかさえわからない。丸っこいなにか、遊ぶ道具に見えるかもしれない。自分の惑星にある別の食べ物に見えるかもしれない。
つまり、桃とは認識する者との認識とは不可分なのだ。
それでもなお、認識する者の認識と全く関係なく「桃」という存在そのものが成立する、というのが実在するということである。
前述の、人間によって字か書かれた桃、それに直面した状態で認識する者とは別に桃の実在がどういうことか、ということだ。

ここで私が考えたのは、その桃に面したとき
人間→字→桃
という認識の層になることだ。
人間はまず字に注目する。桃は字を表現するための基礎としての要素、他で言う紙やキャンバスに相当する。
本を読むとき、我々はミディアムとしての「紙」には注目しない。注目するのは文字であり、それが意味するところなのだ。
こうなると、普段食べるものとして主役の「桃」が、字を支えるミディアムとしての基礎になる。

普段強烈な存在感を持つ「桃」が、「紙」のような存在になったとき、我々はその実在性をどう捉えるのか?
この転換は我々をドキっとさせて、一種の思考実験を提示する。

そして、普段の桃と、ミディアムになった桃の間で、我々は悩む。
普段我々は紙の実在性に問いを投げかけない。問われるのは、やはり字が意味するところなのだ。

仏教において実在とは否定されている。
仏教の根本的な教えは諸行無常、諸法無我。
あらゆるものは「それ自体」が実在しているのではなく、いろいろな関係の上で「あると思われているだけ」なのだ。
しかし、釈尊は人間が「それ自体」が実在している、と勘違いするからあらゆる苦しみと勘違いが生まれる、と指摘した。
西洋哲学においてもカントなどさまざまな人が単純な実在性というものを否定している。

しかしながら、我々は日々の生活であらゆるものを実在していると無意識のうちに勘違いしてしまっている。
我々多くの人が当然と考える、ということは「ありきたり」とも言えるだろう。
つまり、ミディアムの実在性は、問われずに当然のものとして、「半ばありきたり」。
しかし、紙という一般的なミディアムから桃というものに変わったところで同様のことが言えるのか?

紙→桃という突飛でもない置き換えを通じて、字の先の少し進んだ層にあるミディアムから実在性を疑う。
これがこの問いの意味するところではないだろうか。

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