【名盤】ビリー・ジョエル『52nd Street』
去る2022年1月のこと。ヨルシカの『盗作』を聴いてアルバムという形式の魅力に気付いた私は、色々な洋楽のアルバムを聴いてみることにしました。
そのうちの一つが今回紹介するビリー・ジョエルの『52nd Street』です。このアルバムはジャズのエッセンスも感じられる「ピアノアルバム」で、名バラード「Honesty」や「My Life」など名曲が詰まっています。
今回は、このアルバムの魅力を振り返っていこうと思います。
1. はじめに
今回は、ビリー・ジョエル『52nd Street』を特集します。
ビリー・ジョエルといえば、彼の代表曲「Piano Man」は特に有名ですが、それもあってピアノのイメージが強いと思います。
さて、これから紹介するアルバム『52nd Street』は、彼のピアノが存分に楽しめる、まさに「ピアノアルバム」とも言うべき傑作で、グラミー賞最優秀アルバムに輝く彼の代表作の一つです。
それでは、このアルバムとの出会いに始まり、アルバムの魅力を改めて見ていこうと思います。
2. アルバムとの出会い
ビリー・ジョエル『52nd Street』を聴いたのは、昨年2022年の1月のことだったと記憶しています。
その頃、私は京都にある下宿先におり、大学には行かず自堕落な生活を送っていました。というのも、大学生だった私は(今も大学生ですが)不登校の学生として、うだつの上がらない日常を送っていたのです。
ほぼ家から出ずに引きこもりと化し、精神状態は不安定を極め、昼夜逆転は当然のこと、ただYouTubeでゲーム実況動画を見る日々(ちなみにTOP4というグループはその頃から今の今までずっと好きです)。
そんな生活の中で、私はあるアルバムに出会いました。
それこそが『52nd Street』、…ではなく、なぜかヨルシカの『盗作』でした。
ヨルシカの特徴は、そのコンセプチュアルな音楽性にあります。一つのアルバムを通して物語を描き、そのストーリーをもとに音楽を奏でる。そういったコンセプトアルバムの一つがこの『盗作』です。
『盗作』の物語の主人公は、音楽を盗む、まさに「盗作」する男です。彼を軸としてアルバムが進行していき、物語は進んでいきます。
元々ヨルシカの曲が好きだった私は、『盗作』をアルバム通しで聴いてみることにしました。なお、アルバム内の「レプリカント」や表題曲「盗作」を聴いたことがあったから、という理由もあります。どちらの曲も何回聴いても良い曲です。
そしてこの『盗作』を聴き、私はアルバムという音楽の形式に興味が出てきます。そこで、色々なアルバムを聴いてみることにしたのです。その際に参考にしたのが、みのミュージックの動画や、グラミー賞最優秀アルバム、そしてローリング・ストーン誌が選ぶ史上最高のアルバムです。
さて、ビリー・ジョエルの『52nd Street』は1980年のグラミー賞最優秀アルバムに輝いています。それを知った私は、このアルバムを聴いてみることにしました。
これこそが、私とこのアルバムの出会いです。元々ビリー・ジョエルの曲は「Piano Man」や「Just the Way You Are」などを聴いたことがあり、お気に入りのアーティストだったという理由もあります。
それでは続いて、アルバムのそれぞれの曲を見ていくことにします。
3. 各曲について ~⑦が大好き~
1曲目「Big Shot」は静かなバラード、…と見せかけてギターが花を添えるロックな曲です。ロックとは言っても、特にリズムが強調されたロックです。途中で何度か曲調が変わり、ブラスセクションが主張してきます。この曲からもピアノが静謐に曲を演出し、ビリー・ジョエルの声が力強く響きます。
2曲目「Honesty」。「誠実さ」と銘打った悲し気なバラードです。彼の曲の中でも特に有名な1曲。ピアノと歌詞が胸に迫ります。メロディと相まって、悲哀に満ちた、まさに「誠実さ」を感じさせる名曲です。「Piano Man」やこの曲のように、悲しい曲と彼の声は合わさると誰にも敵わないようにすら思われます。何度聞いてもつくづく良い曲だなと思います。
3曲目「My Life」。前奏のピアノが軽やかに曲を演出します。「テテテテテーン、テテーテン♪」というピアノのメロディが印象に残ります。こちらの動画でビリー・ジョエルと「My Life」について、4:46~に言及がありますが、どうやらコード進行がお洒落とのことです。
私は音楽理論について全く分かりませんが、とにかく名曲であることには変わりはありません。
4曲目「Zanzibar」。ピアノも相まって、今度は何やら怪し気な雰囲気です。途中で曲調が変わって、ギターが主張してきます。「アイ・ゴタ・ジャースト・ギター」というフレーズが耳に残り、ギターもそれを盛り上げます。この曲、アルバムの中で聴くとピアノの世界に引き込まれるようで、私は結構好きですね。終盤にはトランペットが即興のような演奏で曲を盛り上げます。
5曲目「Stiletto」。ピアノがリズミカルに鳴る中、ビリー・ジョエルのボーカルが映える曲です。途中からのギターが力強く雰囲気を盛り上げます。そしてピアノとドラムだけになるパートを挟み、トランペットが情熱的に鳴り響きます。これも良い曲です。
6曲目「Rosalinda’s Eyes」。今度はピアノではなくシンセサイザーです。パーカッションがノリのいいリズムを刻む中で、優しい歌唱を迎え入れます。途中ではリコーダー(?)が素朴なメロディを奏でつつ、最後はドラムだけが寂しくビートを刻みながらフェードアウトして曲は終わります。
7曲目「Half a Mile Away」。
来ました、私の大のお気に入りの曲です!
トランペットが勇ましく前奏を盛り上げ、ボーカルは情熱的です。聴くといつも元気になる大好きな曲です。つい一緒に歌いたくなります。そして聴きどころは、曲調が変わって「ウーーーウウウーー、イッツ・ジャスト・ハーフ・ア・マイル・アウェーイ」と歌われるところ。間奏ではトランペットが曲を盛り上げ、アルバムは最高潮の中フェードアウトします。いやあ、何度聞いても良い曲!
8曲目「Until the Night」はそれまでとは一転、しっとりとしたバラードです。ビリーの渋いエエ声が楽しめます。コーラスの前やコーラス部分のハモリは聴いていて気持ちいいです。そしてタイトルの「Until the Night」という連呼するコーラスは壮大で、心が豊かな気持ちで満たされます。始まりのバラードは「Honesty」でしたが、終わりのバラードは「Until the Night」で、こちらも良い曲です。いよいよアルバムが終わりに近づいてきました。
9曲目「52nd Street」。まさかアルバム最後の曲が表題曲とは。このイレギュラーな感じも好きです。アルバムを締めくくるこの曲では、ピアノがリズミカルに跳ねる中、タイトルの「52nd Street」と歌われるコーラス。トランペットの間奏も印象的です。「これがニューヨークの夜さ」とニヒルに笑うビリーを想像します。短い曲でアルバムはフェードアウト。
4. 『52nd Street』の魅力
個人的には、このアルバムは私の洋楽との出会いを構成するアルバムであるため、かなりお気に入りのアルバムです。私のXアカウントで最初にポストした内容もこのアルバムについてのことでした。こちらのポストです。
さて、この記事を書くにあたってアルバムを聴き直しましたが、やはり何度聴いても良いアルバムです。思い出補正もあるかも知れませんが、心にグッとくるものがあります。
このアルバムは言わば「ピアノアルバム」です。「Honesty」のような悲しみ溢れるピアノも、「My Life」のような明るいピアノも、様々な表情のピアノが聴けるアルバムだと思います。
私がこのアルバムを聴くのは、ピアノが無性に聴きたくなる時です。特に、日が沈んで夜が訪れると聴きたくなります。
きっとニューヨークのバーでお酒を飲みながら聴けば、もう最高でしょうね。「マスター、今日はこのアルバムを頼むよ。ビリー・ジョエルの『52nd Street』。俺のお気に入りなのさ」と私。そしてマスターが「ええ、喜んで」。 そんなバーでの情景を思い浮かべます。…まあ、私はお酒が飲めないのですが。
とにかく、ビリー・ジョエルのピアノと、ピアノを軸にした上質なピアノロックが存分に楽しめる名盤です。さすがにグラミー賞最優秀アルバム賞を受賞しているだけあります。それを抜きにしても、各曲に聴きどころがあり聴き手を飽きさせない、そんな彼の最高傑作の一つです。
私個人的にはビリー・ジョエルのアルバムの中で一番好きなアルバムがこの『52nd Street』です。ビリー・ジョエルのアルバムでどれを聴こうか迷っている方はこちらのアルバムから入っても良いかと思います。
5. おわりに
以上がビリー・ジョエルの『52nd Street』でした。いかがでしたか? 私のお気に入りのアルバムですので、少しでもその魅力が伝われば幸いです。
ビリー・ジョエルは他にも色々な名盤があります。代表曲「Piano Man」が収められた『Piano Man』や、落ち着いた雰囲気の『The Stranger』、ポップな楽曲が目白押しの「An Innocent Man」などが挙げられます。
『The Stranger』は一般的には彼の最高傑作とも呼ばれるアルバムですので、こちらのアルバムも入門に向いているかと思います。
いずれも名盤ですので『52nd Street』と合わせて是非聴いてみてください。きっと上質なピアノロックが楽しめることでしょう。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。
良き音楽との出会いがあらんことを。