【名盤】レディオヘッド『The Bends』
今回はレディオヘッドの『The Bends』を特集します。こちらのアルバムを初めて聴いたのは、3泊4日の旅行の最終日、眠い中で電車に揺られながらのことでした。若干記憶が飛んでいますが、とにかく重厚なギターロックが楽しめる名盤だと感じたことは覚えています。
今回はレディオヘッドとの出会いや、こちらのアルバムの感想を綴ろうと思います。後半はレディオヘッドのファンに怒られそうなことを書いていますが、先に謝っておきます。特に『OK Computer』や『Kid A』が好きな皆さん、申し訳ありません。
それでは、本文どうぞー。
レディオヘッドとの出会い
レディオヘッドで最初に聴いた曲は「Creep」だったと思います。あまり面白みのない出会いかも知れませんが、そう記憶している以上、仕様がありません。
この「Creep」といえば、’90年代を代表する名曲で、ニルヴァーナの「スメルズ・ライク・ティーン・スピリット」やベックの「ルーザー」と並んでオルタナティブ・ロックを代表する名曲でもあります。
2023年3月のこと。レディオヘッドの曲を聴く前に、とりあえず「みのミュージック」の入門動画を見てみました。
なるほどな~。毎度のことながら、みのミュージックは解説が上手いです。この動画で、3rdの『OK Computer』(1997)や4thの『Kid A』(2000)が高評価だと知ります。次点で2ndの『The Bends』(1995)も評価が高いようです。
その後、Apple Musicのレディオヘッドページに行き、トップソング(再生数が多い曲)を見ると、「Creep」がトップにあります。これがレディオヘッドの曲との出会いです。これを聴いてみると、なるほど、良い曲です。ひずんだギターが悲しみを代弁しているかのようです。
そして次にある2位の曲が「High and Dry」。今回紹介したい『The Bends』の中でも特に人気の高い名曲です。これも聴いてみると、たしかに良い曲だなと思います。コーラスの「ドント・リーブ・ミー・ハ~~~イ」が印象的です。
続いて3位の曲が「Fake Plastic Trees」。『The Bends』の中で「High and Dry」と並んで人気の高い曲のようです。これも聴いてみると、…こちらはなんだかよく分かりません。とりあえず聞き終え、次の曲に移ります。
続いて次作『OK Computer』から「Paranoid Android」が4位です。聴いてみると、これも良い曲だなと思います。少しプログレッシブ・ロックらしさを感じるような曲です。
さて、このように曲を聴く中で、どんどん「レディオヘッドの曲を聴きたい欲」が出てきました。
そこでアルバムを聴いてみようと思い、手を出したアルバムが2ndの『The Bends』(1995)。
「Creep」が入った1stの『Pablo Honey』(1992)はあまり評価が高くない様子だったため取っておくことに。3rdの『OK Computer』や4thの『Kid A』は色々な所で「難解」「取っつきにくい」といった感想を散見したため、これも後回しに。
そこで早速、Apple Musicの必聴アルバムに入っていた『The Bends』を聴いてみることにしました。試しに聴いた「High and Dry」が良かったという理由もあります。
聴いたのは、3泊4日の旅行の最終日のことでした。しかも帰りの電車の中。なんちゅう所で聴いているんだとお思いになるかもしれませんが、そうである以上仕方がないのです。少し眠い中で聴いたのを覚えています。
『The Bends』との邂逅
さて、3泊4日の旅行の帰り道。やや疲れで眠い中で電車に揺られながら、アルバムを再生します…。
* * *
1曲目は「Planet Telex」。最初は無音、しかしすぐにギターが轟いてアルバムが幕を開けます。ピアノがエコーを効かせて、分厚いギターの音色と絡みます。ギターを前面に押し出したサウンドは気持ちよく、耳馴染みが良いです。どこか理性的で制御されたギターに感じます。少し粘っこいトム・ヨークの歌唱は、時に激しく、時に伸びやかで美しいです。癖になります。
2曲目は表題曲「The Bends」。最初は誰かの声がしますが、すぐに分厚いギターサウンドが耳を覆い、曲に入ります。ギターロックです。しかし普通のギターロックとは異なり、ギターが何層にも重なっているような「厚み」を感じます。その点で、サウンドプロダクションにこだわりを感じます。
3曲目は「High and Dry」。先ほどの激しいエレキギターとは異なり、アコースティックギターが優しい雰囲気を演出します。そしてコーラスの「ドント・リーブ・ミー・ハ~~~イ」がキラーフレーズとなり、聴き手を魅了します。前に聴いた時も思いましたが、やはり良い曲です。
4曲目は「Fake Plastic Trees」。以前聴いた時は微妙でしたが、今回は少し違った印象を受けました。アルバムの流れに沿って聴いたからでしょうか、「High and Dry」の次というのもあって、美しいメロディーが心に染みわたります。
そして、7曲目の「Just」では、これまでの優しい雰囲気とは打って変わって激しいギターロックが展開されます。トム・ヨークのか細いボーカルとは対照的に、ギターは激しく唸りを上げています。後半になるにつれてギターもボーカルも熱を増し、狂気の波が耳を支配するのを感じます。ギターロック全開で、分厚いサウンドが楽しめる良い曲です。
9曲目の「Bullet Proof … I Wish I Was」では一転、再びアコースティックギターが穏やかに響き、退廃的で不安定なボーカルを支えています。コーラスではエレキギターが花を添えるように登場して、終始暗い雰囲気が漂っています。
全12曲、最後は「Street Spirit (Fade Out)」でタイトルの通りアルバムはフェードアウトするように幕を閉じます…。
* * *
これが『The Bends』との最初の出会いです。若干眠い中で聴いたため、所々記憶が抜け落ちていますが、とにかく良いアルバムだと感じたのは記憶しています。
『The Bends』と『OK Computer』
■『The Bends』の特徴
アルバムを通して聴くと感じるのは、分厚いギターの主張です。「Planet Telex」や表題曲「The Bends」、「Just」などでは、ひずんだギターが何層にも重なったような「音の壁」を感じられます。
しかしその一方で、「High and Dry」や「Fake Plastic Trees」、「Bullet Proof … I Wish I Was」などでは、今にも崩れ落ちそうな美しさを湛える名曲と出会えます。そういった激しさと穏やかさの二面性、静と動がこのアルバムの一つの特徴と言えるのではないでしょうか。
また、ひずんだギターは聴いていて気持ちよく、メロディーは割かしキャッチ―ですので、洋楽にあまり親しみがない人でも楽しめるのではないかと思います。ある程度洋楽のロックに慣れ親しんだ頃にこれを聴けば、こういった世界もあるのか、という新たな発見につながりそうです。そう言った意味で、是非初心者の方にも手を出してほしい名盤です。
■『OK Computer』は…?
さて、この初体験以降、『The Bends』の魅力にとりつかれた私は、一時期このアルバムを何度も繰り返し聴いていました。
やがてレディオヘッドの他のアルバムを聴こうと思い立ちます。そこで手を出したのが、3rdの『OK Computer』(1997)です。これは「Paranoid Android」が気に入ったためです。
しかしこちらのアルバム、聴いてみるとたしかに良いアルバムだなとは思いましたが、『The Bends』の時ほど心に刺さりませんでした。ハイライトの「Paranoid Android」や「No Surprises」は素晴らしい曲でしたが、それ以外の曲にはあまりピンとこず。その後も何度も『OK Computer』を通して聴きましたが、最初の時よりは評価は上がったものの、自分の中で『The Bends』を超えることはありませんでした。
しかし、一般的な評価としては『OK Computer』は’90年代を代表する名盤との評価を確立しています。この自分の中での評価と一般的な評価のずれは、どこから来ているのか。その答えに辿り着けないまま、現在に至ります。
もう少し聴けば、『OK Computer』の真の良さが分かるのでしょうか。とにかく分からないものは仕方がないので、気長に待って時々聴き直してみることにします。そうすれば、いつか良さが分かるかもしれませんし、分からなくても仕方がないかなと思うようにしています。
なお正直に申します、『Kid A』には至っては一度も聴いておりません! レディオヘッドのファンの皆さん、誠に申し訳ありません。いつか聴きたいとは思っていますが、聴きたいアルバムの優先順位の問題もあってまだ聴けておりません。
さて、『OK Computer』の良さが分からず、『Kid A』に至っては聴いてもいない私がレディオヘッドについて語るべきではないのかも知れませんが、とにかく伝えさせてください! 『The Bends』が好きです!
おわりに ~ごめんなさい、ファンの皆さん~
以上、レディオヘッドの『The Bends』になります。
レディオヘッド好きには怒られそうな内容ですが、とにかく『The Bends』は名盤です。今のところ『OK Computer』の良さが私にはあまり分かりませんが、少なくとも『The Bends』の魅力が伝われば良いかなと思います。
聴いたことがない方は是非この機会に勇気を出して聴いてみてください。きっと私の言わんとするところが分かるでしょう。
それでは、ここまで読んでいただきありがとうございました。またどこかでお会いしましょう。
あなたに良き音楽との出会いがあらんことを…。そして、ごめんなさい、レディオヘッドのファンの皆さん…。